せーいしゅん


笠黄♀


中学時代、キセキの世代って呼ばれたけれど、卒業する頃には誰に話しかけても、ウザいとか、邪魔とか、要らないとか、ばっかり言われてて、だから高校ではバスケはしないって決めた。

だから、女子バスの無い海常って高校を選んだ。

女子バスは無いし、何よりあの楽しかった日々を、辛く悲しかった日々を過ごした東京から離れたくて、この高校を選んだ。


モデル業をしてるため、授業にも出れない事はあったから、先生方に無理言って、放課後補修を受けさせてもらっていた。

その帰り、ふと目に留まったのは明かりの付いた体育館。

ドアが暑さ対策のためか開けられていたそこから響く、ダンダン、と言うボールの跳ねる音。

(あぁ、そう言えばココって男バスの全国常連校だったけ?)

何気なしに、その開け放たれた体育館を覗く。


「そこっ!!ちんたらしてんじゃねーぞ!!もっと声出せっ!!」


一瞬で、目を惹き付けられた。

男バスにたいして興味も無かったけど、こんな人がいるのかって、心が躍った。


「あれー?キミ、キセリョちゃんじゃないか!ここであったのは運命だ!ねぇ、どう?俺と付き合わない?」

「えっ、と、あのー、お断りするっす」

「えっ?ほんとだ!キセリョちゃんじゃん!」

「なに?この学校に進学ってマジだったの?」

「うっそ、俺友達に自慢してぇ」


(えっと、この雰囲気なんすかねぇ)

どっから集まってきているのか、人が押し寄せてくる。


「何やってんだお前ら―!!!!!」

「ゲッ、キャプテン」


わらわらと集まりだした人だかりに困惑していると、後ろから先ほど惹きつけられた人の怒声が耳を貫く。


「そう怒鳴るなって、身体に悪いぞー笠松」

「テメェが原因か森山ぁああああああああああ!!!」

「うげっ」


目の前にいた、残念なイケメンが横から来たとび蹴りで、目の前から消えた。


「ここに集まってる奴ら、外周10周行って来い!!」

「「「「「えぇー!?」」」」」

「うっせぇーな!!早くいかねぇと20に増やすぞ!!」

「「「「「いっ、いってきまーす!!」」」」」


バタバタと人だかりは焦る様に外へ駆け出していく。

ふう、と言うため息が聞こえた後、脳天に思いっきりこぶしが降ってきた。


「イタぁ―――――!!!!」

「てめぇもてめぇだ!!女がこんな時間に、こんな場所で一人で何やってやがる!!さっさと帰れ、しばくぞ!!」

「もう、しばいてるっスよー!」

「うるせぇ!!帰れ!!」

「いやっす!!それよりセンパイ、1on1しましょ?」

「はぁ?何でだよ、嫌だよ、帰れ!」

「嫌っす!センパイと1on1するまで帰らないっス!」

「か え れ !!」

「い や っ ス !!」


暫く続けた押し問答の後、小堀の一言によって、1on1をするはめになった笠松。

中々いい勝負をして、負けた黄瀬。負けを知らなかった彼女に負けを教え、「リベンジしてみろ」と言って、懐かれる(何でだ?by笠松)。

仕事の無い日は必ずと言っていいほど、笠松と1on1をしに現れる黄瀬は名物になり、その内、いっそのこと入部させてしまえと、気が付いたらマネージャーになっていた。

初めの頃は、バスケ意外「あぁ」とか「違う」しか話さなかった笠松も黄瀬に馴れたのか、それなりの会話もする様に成っていた。


「へ?練習試合っスか?」

「そうだ、お前その日空いてるか?」

「はい、大丈夫っすけど・・・」

「そうか、ならマネとしてしっかり働けよ」

「はいっス!それより、1on1まだっすかぁ?」

「うっせぇな!もう少ししたら、部誌も終るから待っとけ!」


その数日後、遣って来た練習試合の相手。

相手の、誠凜のマネージャーを見て、黄瀬は目を見開いた。


「くろこ、っち?」

「はい、黄瀬さん」


その顔は、少し傷ついたように歪んでから、いつもの笑顔を張りつけた顔になった。


「何でいるんスか?」

「今日、練習試合で」

「へっ?この学校、女子バス無いっすよ?」

「私の学校にもありませんよ、今日は男バスの試合に来たんです」


その言葉を聞いて、泣きそうな瞳で、けれど驚いたような顔になる黄瀬。

その様子を見ていた笠松は、容赦なくとび蹴りをかましてきた。手加減はされているが、痛い。


「黄瀬ェええええええ!!!お前何サボってんだコラ、しばくぞ!!」

「もうしばいてるっスよー!!!」


しかし、その笠松に寄って行く黄瀬。

その光景を、ただただ黒子は見つめていた。


「ほら、行くぞ」

「はいっス!」


手を引かれて歩き出す二人。

自分の高校のベンチに黄瀬を連れ帰ってくると、その手を離さずに、レギュラーに告げる。


「お前らアップ始めとけ。俺、ちょっと黄瀬と話しあっから」

「りょーかい、急げよ」


にっと笑って送りだされ、体育館の外に連れ出される。


「センパイ?」

「無理して笑うんじゃねーよ、バカ」


軽く、スパンと頭を叩かれる黄瀬。

その顔には、驚きの色しかない。


「あの、誠凜のマネージャーと何が有ったかなんてしらねーけどな、泣きたいなら泣け!泣きたいときに笑うな。お前の作り笑いなんざ、雑誌の中で十分だ」

「せんぱい・・・」


つぅ、と黄瀬の頬を伝う涙を笠松がぬぐうとそのまま黄瀬を抱き寄せる。


「お前は、今は海常の黄瀬涼香なんだから、辛いなら俺達を頼れば良い」

「はい、っす、っ、」


ひっく、と泣きだした黄瀬を、泣きやむまでなだめた笠松は、連れてきた同様、手を引いて体育館へ戻った。



END


女性が苦手な笠松先輩×男性不信の黄瀬

と言う裏設定。

海常のレギュラー陣は平気。もっと言えば、笠松先輩は信用してるし信頼してる。

だから、黒子は笠松先輩に寄って行く黄瀬に驚いたって言う話し。

全く活かせられない。



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