闘志、削がれました
それは海常との練習試合が終わり、帰り際の出来事だった。
日向が笠松と握手を交わし、お互いにインターハイへの意欲を確かめあった後、「日向くん、日向くん、」と日向のTシャツを引っ張るリコの姿。
あー、と頭を掻き、少し困ったような顔で再び日向は海常の面々へ向き直った。
「すんません、一つお願い聞いてもらっていいッスか?」
「あ?お願い?うちに出来ることなら聞いてやるよ」
「あー、難しい事じゃないんでっ……て、監督!」
ウズウズとしていたリコは、笠松から出た了承を聞いた途端、日向の後ろから抜け出し、目の前のリコにしてみれば大きく厚い体に抱きついた。
「せ、せせせせ、誠凛******っ!!」
抱きつかれた当人の笠松は一歩遅れて、ぼふっ、と真っ赤になり、わたわたとしている。説明を求めて誠凛の面々を見るが、大半が良く解っていないみたいで、海常も誠凛も同じように目を向いて驚いていた。
そんな中、リコだけはマイペースに元気だった。
「日向くん、日向くん!!生の笠松さんだよ*!私、生きてて、監督やってて良かったぁー!」
「そうか、良かったなぁ!その笠松さんが困ってるから離れようか!」
「イヤっ!」
「「「監督ぅうううううっ!?」」」
真っ赤になっている笠松の胸元で、甘えるように首を横に降るリコの姿に、誠凛は我に返った。
その声で、海常の面々も我に返れたようだ。
「だって、あの笠松さんが私の目の前にいるのよ!」
「解った、解ったから落ち着け」
「そうですよ、お嬢さん。女性が苦手な笠松より、俺はいかがですか?寧ろ、今日この日に巡り会えたことは俺と君のうんめ……」「すみません、お断りします」
にっこり、とバッサリ森山を切り捨てたリコは、更に強く笠松を抱き締める。
笠松は今にも鼻血を出しそうな顔で完全に体は固まってしまっている。
「ふふっ、体の作り具合と言い、筋肉の付き方のバランスといい、しなやかさといい、最高」
うっとり、そう言う表現が似合うくらい、いや、実際うっとりしながら、笠松の体を抱き締めるリコも、ある意味鼻血を出しそうなくらい興奮していた。
唯一、誠凛の中で事情を知っている日向は、パニック混じりの周りに、頭を抱えてため息をついた。
「あー、何スかねぇこの状況…」
緑間との話を終え、これからはしっかり部活をすると言う意思を伝えようと戻って来たはいいが、林の中から出るに出られない状況を見て、苦笑混じりにため息をついた。あのパニック集団の中に入るのは面倒そうだ、先に着替えよう。
そう結論付けて、踵を返した。
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