慣用少女パロディ


「はい、黒子っち。オーダーされてた、人形っスよ」


黄瀬は、抱えるようにして持っていた桐箱を開ける。中の品物を確認して、店長である黒子は頷いた。


「完璧です。間違いなく、受けとりました」


良かった、と息を吐いた黄瀬は、その人形の頬を撫でる。


「後は、君が選ぶだけ。いい人を見つけるんスよ」


その眼差しは、慈愛に満ち溢れている。


「黄瀬君、もう一つの方の依頼は?」

「あぁ、はい。これで良かったスよね?」


懐から取り出した小さな風呂敷。それを広げれば、バラの細工があるネックレスが現れる。


「はい、ありがとうございます。助かりました。人形たちは、あなたの作ったもの以外を着けようとすると嫌がりますからね」


黄瀬の作る観用少女は、当然のごとく人形本体からオーナメントに至るまで黄瀬の手作りだ。

売られていった人形たちは、服こそ仕方ないとはいえ、ブローチやネックレスなどは絶対に手放さないと言う。一度、何処かの貴族が無理やりにそのオーナメントを奪ったばかりに枯れて変質してしまった人形も居るくらいだ。黄瀬の作った人形達にとって、主の愛情は最も必要なものだが、黄瀬の愛情の塊である服やオーナメントも必要なものなのだ。

今回は、客の不注意にて壊されてしまったオーナメントを黄瀬に修復してもらっていたのだ。

代金は勿論、壊した客に支払わせた。何せ、プランツドールの生死に関わる。それ相応の対価を支払ってもらわねば困る。


「さて、その子はどこにいるッスか?」


久しぶりに会っていくっスよ、と言った黄瀬に、それは良いですね、彼女たちも喜びますよ、と黒子はネックレスの持ち主である人形のある道を歩き出した。

それに黙って黄瀬も着いていく。

ドレープのかかっているカーテン間に並べられた椅子の上に座る彼女たち。寝ているのに、雰囲気は何処かやはり何時もより嬉しそう。


「この子ですよ」


と、一つだけ悲しみのオーラを纏った人形に出会う。そんな彼女に、黄瀬は笑いかける。


「もう、悲しまなくて良いんスよ。ほら、治ったでしょう?壊れたらまた、治してあげる。だから、大丈夫っスよ」


そう言って着けたオーナメントに、彼女は嬉しそうなオーラを取り戻す。


「良かったです。彼女だけが、暗く沈んでいたもので、心配していたんですよ」

「俺も、彼女に元気が戻って嬉しいっスよ」


さて、と立ち上がった黄瀬は元来た道を戻ろうとしている。


「せっかくです。彼方に、違う人形師の作品があります。見ていかれませんか?」


黒子が指を示した方向に、普段なら断るはずが何故か今日はその気になり、良いッスね、と笑って進んだ。


「……久しぶりッスね〜、彼らに会うの」


そうですね、と黒子は笑う。


「君が全然会わなくて、寂しそうでしたよ。お父さん」

「やめてくださいッス!確かに、彼らの作り手ではあるけど、黒子っちの父になった覚えはないッスわ」


不愉快そうな面を隠そうともせずに言う黄瀬に、黒子は、すみません、と言いながら笑っていた。

しばらく進むと、円状の広場に出る。と言っても狭いことには狭いが。


「キセキの間に足を踏み入れるのも久しぶりですね」

「ッスねぇ〜」


それだけ言うと、スタスタと一体の人形へと近付く。


「【セイ】、ネクタイが少し曲がってるッスよ。だから、そんな難しい顔してたんスね」


治して、その頬を撫でる。


「【シン】、ブローチが少し汚れてきてるッスね。人事は尽くしてこそ、君に合う素敵なご主人様が現れるッスよ」


キュッと指先で汚れを払う。


「【アツ】、また飴食べてる途中で寝たんスね、口許ベタベタじゃないッスか」


そう言ってハンカチで口許を拭ってやる。


「【ショウ】、また【テツ】のミルク奪って飲んだッスね、悪い子」


と言いながらも黄瀬は笑っている。

水色の人形が【ショウ】を睨むように座ってるから解る。


「【テツ】嫌なことは嫌って言って良いんスよ。イグナイトかませば良いんス。【モモ】もそう思うでしょ?」


長椅子に座り、仲良く手を繋ぐ二つの人形の頭を撫でる。二つの人形のとなりにも目を移し、寄り添うその青い頭を撫でる。


「【ダイ】二人を守ってね」


一通り全員を見た黄瀬は、閉まっているカーテンに目がいった。そこは、前回は確かに空いていたはずだ。何もなく、誰もいなかった。


「黒子っち、あそこ……」

「あぁ、近日公開だったんですが…黄瀬君になら良いでしょう。驚きますよ?」


そう言った黒子は、カーテンを開くための紐を手に取り、引っ張った。


「えっ?コレ……」


中に座っていたのは、黄と黒の髪を持つ2体の人形。それは、余りにも黄瀬の知る人物と良く似ていた。


「赤司くんの作品ですよ。この部屋に黄瀬君、君が居ないのはおかしい、と。それで、黄瀬君を作るなら、ともう一体の方も作って貰いました」


二つの人形は寄り添い合い、手を握り、幸せそうに長椅子に座っていた。


「こっちの黄瀬君似を【リョウ】、黒髪のそちらを【ユキ】と名付けてあります」

「そう、ッスか…」

「そうでした、忘れていました。1つ、黄瀬君に注文です」


黒子の表情は、いつ見ても変わらないが、本当に忘れていたかは、分かったもんじゃない。絶対に、故意だ。


「彼らに、相応しいオーナメントを、お願いします」

「……何で?赤司っちが作ったなら、赤司っちがあげた方が喜ぶッスよ」

「いえ、これは赤司くんからの依頼ですので、彼が用意したオーナメントは気に入らなかったんでしょうね」


特に、【ユキ】の方が、と言う黒子に、黄瀬は苦笑した。

確かに、【ユキ】の元になった人物は、赤司が黄瀬に関わってくることを余り良しとしていなかった。

寧ろ、嫌がってた割合の方が高い。

キセキを自分のモノ、とする彼と、黄瀬を手に入れた彼との細やかなぶつかり合いだ。


「この二体は、必ず一緒の人物に惹かれて目を覚まします。ですので、身に付けるオーナメントは同じものを」

「……同じもの、スか」


ふふ、と笑った黄瀬はスルリ、と身に付けていた指輪を外した。


「すぐ出来るッス。そして、お代は要らないッス」


外した指輪に力を加える。指輪は光に包まれ、どうなっているのか解らない。が、黄瀬がオーナメントを作ってることだけはわかる。

処理が終われば、指輪を包んでいた光は消え、黄瀬の手に出来上がったものが落ちてくる。


「センパイとの、思い出の、証しッス。君達が持っていて、【リョウ】【ユキ】」


繋いでいた手を少しだけ離し、【リョウ】の左手の薬指に指輪をはめる。はめた後はまた確りと握り直されてしまったが。【ユキ】の左手の薬指にも同じく指輪をはめる。左手は指輪を落とさぬようにか、ギュウッと拳に握りしめられた。

黄瀬がさっきまでしていた指輪と、同じ形同じデザイン。裏側に彫られた文字まで全てが一緒だった。


2体の微笑ましい姿を見て、ポツリ、と黄瀬は呟く。


「ごめんなさい、まだ、俺は貴方を愛してる」


愛してるんです、そう、黄瀬は涙を流した。

黒子は、昔黄瀬を傷つけてしまった過去があるため、何も声をかけることは出来ない。

ただ、見守ることしか出来なかった。


「だから、これからは、ずうっと一緒、ですね」


【ユキ】と【リョウ】の事だろうが、それでも黄瀬は自分の事のように嬉しそうに笑った。


『あぁ、そうだな』

と、彼も何処かで笑ってくれたような気がした。



end。


あれ?これって、死ねたじゃないよ?笠松さん生きてる(予定だ)もん。


はい、と言うわけで『黄笠黄n番煎じ観用少女バロディ〜オリジナル設定も入ってるのに突然始まって突然終わるよ〜』です。はい。


黄→→←(←)笠な感じで付き合ってたんだけど、色んな妨害に合い、破局(黄瀬からフリます)。

振ったけど、好きだし愛してた黄瀬は元々才能のあった人形師になり、姿を眩まします。

けど、何故か黒子に見つかり、謝られて黒子の店に人形を卸すようになります。

赤司はその店の常連客で、一番始めにキセキの間に入り、キセキシリーズの人形を見た人。精巧に作られた人形を見て驚いたら良い。

で、黄瀬がいないことに気づき感づく。

で、黄瀬を作るために勉強。ついでにと、笠松を一緒に作ってください、せめてもの罪滅ぼしに、と赤司に黒子が頼んで、どうせならと色々オプション(一緒の相手に目覚めるとか)を着けた。(僕に不可能は無いよ、by赤司)


黄瀬の指輪を作るシーンとか人形に好かれるオーナメントとかは全部空想。ローゼソメイデソのアニメうろ覚えを参考にこんな感じだったら良いなぁって。

あぁ、【リョウ】と【ユキ】に渡した指輪の元は笠松とお揃いでした。

ちなみに、人形は黄笠で人は笠黄だったりする。ほら、作ったの赤司だし誤解?みたいな!


って感じの話を書こうとして、こうなった。

どうしてこうなった?



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