セクハラッスよ!!
「うひゃひゅわぁあああああああ!!!!!!」
「どうした、黄瀬!?・・・あ?」
居残りをすると言った黄瀬に、用事のあるメンバーが重なり、体育館には黄瀬しかいなかったはずの、そこから変な悲鳴が聞こえてきた。もちろん、黄瀬の。
何かあったのかと、急いで更衣室の扉を開けて体育館を確認すると、その光景に目が点になった。
「・・・笠松」
「何だよ?」
「何やったの、お前」
スリーポイントラインでシュート練習をしていた黄瀬は、その場に膝を付いて項垂れていた。その前に転がるバスケットボール。
そして、一緒に更衣室に入ったはずの笠松が黄瀬の後ろに立っていた。
「・・・こいつの手って冷たいだろ?」
「いや、何いきなり言ってんの!?」
「んで、」
「話聞けよ!!」
「お前が聞けよ!シバクぞ!」
「いてーよ!!」
がん、と笠松の拳が森山を直撃する。
森山が抗議の声を上げるが、知らぬ顔で話を続ける。
「んで、シュー練の時腹チラ見えたから、冷たいかと思って」
触ってみた、という笠松はそれだけだ、何か?という顔をしている。
ぽかーんとした後、森山はいやいやいや、と何言ってんだこいつ!?という顔をして突っ込みを入れる。
「触ってみた、じゃねーよ?何してんのお前!?いつも人に自主練の邪魔すんなとか言ってるのに、自分がすんなよ!」
「気になったんだから、仕方ない。それに、暑いんだよ」
むぅ、っとした顔をした笠松は、ふと思いついたように、今もまだ立ち直れないでいる黄瀬に近付きしゃがむと、その体に腕を回して抱きついた。
いや、張り付いた。と言っても過言ではない。
「ひゃ!!」
「あー、つめてぇ」
服の上からでも、くすぐったかったのか声を、上げる黄瀬。
が、先ほどより心構えができていたのか、立ち直るのも早かった。
「ちょ、やめっ、離れてくださいっすぅうううううううう!!!!!」
「やだ」
「やだじゃないっス!!ちょっ、まっ、腹撫でないでくださいぃいいいいい!」
「何?腹筋、弱いのかお前。こんだけ、いい筋肉付けてるのに」
「いや、だから触るなって!何、うわっ、シャツの中まで手を入れないでくださいっスぅううううううう!!!!!」
笠松が黄瀬にセクハラ仕掛けているのを、唖然として見ていたがハッと気が付き、森山が指示し、早川と中村が笠松を黄瀬から引きはがすまでそのやり取りは続いた。
引きはがされ、森山や小堀に保護された黄瀬は、ぜーぜーと息を吐いた。
「テメェら、俺にさわんじゃねーよ!!!あっついんだよ!!!」
「ちょ、主将落ち着いてください」
「笠松センパイ!!落ち着くっス!!」
「落ち着いてられっか!!近寄るな暑苦しい!!!」
笠松はいまだ、ばったばったと暴れていたが。
「大丈夫か、黄瀬」
「・・・も、むり・・・お婿にいけない・・・」
「お前もブル●タスか!」
「・・・森山も落ち着いて」
お前も何言ってんの!!?と、慌てた森山から発せられた言葉に、小堀は一瞬、思考が止まりかけた。
「大丈夫だ、俺がもらってやんよ。だから、安心して俺を冷やせ」
「い、いやっスぅうううううううううううううううううううう!!!!!!!!」
いつの間にか、早川と中村を強引に引きはがしていた笠松は、めそめそとする黄瀬の肩をポンっ、と叩き、にっこり珍しく笑って言った。が、その言葉は黄瀬にとってはありがたくも何ともないものだった。
「じゃあ、主将命令だ、俺を冷やせ」
「何それパワハラっス!いい加減、訴えるっすよ!?そして、勝つッス!!」
「いいぜ、訴えろよ」
どーんとした物言いに、勝算あるのか?と誰しもが思った中、笠松の次の言葉に皆ずっこけた。
「負けっから」
どやぁ、その言葉が一番良く合う顔で言いきった。言い切りおった、馬鹿かこいつ。と誰もが思った。
「負けんのかい!!」
「考えてもみろ、勝算あるか?」
「ない、まったくもってない」
あるわけがない。これだけの証人と目撃者がいるのだ。絶対に負ける。
「だろ?」
「だろ?じゃねぇだろ!!!IH近いっつうのに訴えられたら出れなくなるぞ!?それも、同じ部内の不祥事!!!」
「あぁ、そうか。でも、大丈夫だ。黄瀬は俺を絶対に訴えないからな」
「何で?」
「俺が訴えられたら、黄瀬も出れなくなるだろ?キセキの奴らと戦いてーこいつが俺を訴えるはずがない!」
「も、やだ。帰るッス・・・」
「黄瀬、一緒に帰ろうか」
「中村先輩・・・」
「黄瀬、おえも一緒にかえってやうよ!」
「早川先輩・・・」
「さ、森山と笠松が話してるうちに帰ろうか。今日はもう自主練どころじゃ無いだろうしね」
「小堀先輩ぃ・・・」
そうして、三人に囲まれた黄瀬は両脇と後ろをガードされるようにして帰路についた。
黄瀬の自主練で使ったものの後片付けは、本来用事があったはずの森山と笠松に任された。
「黄瀬、あいつ明日シバク」
「いや、自業自得だからねそれ!!」
終わってくれ。
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