実は紙メンタルで淡白な黄瀬君のご褒美


「今日はありがとな、黄瀬」

今日は色々とゴタゴタがあり、本来なら関係の無い黄瀬まで『後で何でも言うこと聞いてやるから』と巻き込んでしまった。

(何があったかは、妄想してないので、するの疲れるので、長くなるので、黄笠書いている方々の素敵作品を見ながら皆様妄想してくださいませ)

「別にいいんスよ、それより…」
「あぁ、約束だったな。何して欲しい?」

ぱぁっ、と黄瀬の雰囲気が明るくなった気がした。

「じゃあ、じゃあ、俺の名前呼んで頭撫でてくださいッス」

ベッドの端に座った笠松の腰に、床に座っている黄瀬は抱きついてグリグリと擦りよっている。

「解った、涼太」

名前を呼べば、一層抱きついている腕に力が入った。
が、気のせいか黄瀬の周りには花が飛んでる。

見ての通り、黄瀬はこう言っちゃ難だが、所詮“お手軽”である。
普通、一般的この世代の男子に『何でも』何て言ったら、エロ事を想像するだろう。しかし、黄瀬の脳内では初めからそんな事は一つも考えられていなかった。
自分が幸せを感じられる方法をぐるぐると頭の中でシュミレーションのように考えていただけだ。

「そんでね、明日お休みだからずっと一緒にいたいッス……ダメ?」
「いや、いいよ。それぐらい、遠慮すんな」

何でも聞いてやるって言ったろう?そう、笠松は黄瀬の頭を優しく撫でる。

「へへっ、あとね、一緒に寝たいなぁって……流石に欲張りッスか?」
「んなことねーよ。寧ろ、少なすぎだ。もっと何か色々してやるよ。だから、んな不安がるな」

しゅん、といぬ耳が垂れたように一瞬見えた。
こうしている黄瀬は可愛い。外で自信を振り撒きカメラに写っている黄瀬とは本当に別物だ。
だがしかし、困った問題もあると言うこと。
単に言ってしまえば、淡白なのだ、黄瀬は。色々な事に関して。
それは、色事だとて同じ。
手を出してこない黄瀬に焦れて笠松が襲う、何てもう何度あったか知れない。
セックスをしても、出したら終わり、と言う訳じゃない黄瀬はそこら辺は淡白じゃないのかもしれないが、やっぱり回数は少ない方だろう。だからと言って、愛されていない、何て思わないけど。黄瀬は、色々な方法で愛を伝えてくれるから。
外では、モデルとしての見た目もあり、ヤリチンやらチャラ男みたいに思われてるかもしれないが、事実とは大分異なる。

「幸せッス……」
「良かったな、涼太」
「ふへ、幸さんのお陰ッスよ」

幸さんがいるから、俺は幸せなんス。

モデルにあるまじき声と顔をして、そう言った黄瀬に嘘は一つとして見当たらない。
笠松は己の頬が赤くなるのを感じながら『ありがとう、涼太』と呟いた。







「あっ、黄瀬君!」

雑踏の中、聞き知った声に振り向くと、笑い上戸で緑間っちの手綱を握る彼女が近づいてきた。

「高尾っち、こんちわ」
「こんちわ、今日は一人?珍しいね」
「あははっ、俺だって一人の時ぐらいあるって」

折角なんで、と近くの喫茶店まで向かう。
緑間も少ししたら合流するそうなので、お汁粉の出してくれる店に。

「この間はありがとねー」
「え、と?」

意味が解らない、と言ったように首をかしげた黄瀬に構わず、高尾は話続ける。

「あぁ、笠松さんから聞いたんだけど黄瀬君も奔走してくれたそうじゃん?」
「あぁ!あの時ッスね。別に良いのに。俺だって、純粋な気持ちで手助けした訳じゃないから」

その時のご褒美を思い出して、黄瀬の周りにはやはり花が飛んでいた。

「えっ?どゆこと?」
「幸さんが何でも聞いてくれるって言うから……超気持ちよかったッス!」

その言葉を聞いた瞬間、高尾は物凄い勢いでメールを打ち、とあるメンバーに一斉送信した。



from:かずな☆
――――――――――――
笠松さんが、汚されたぁああああああああああ!!

――――――――――――


数分後、やって来た緑間により、何故かボロボロになって、虚ろな目をした黄瀬が発見されることとなった。






「ただいまー」

玄関を開けて、少し。違和感に気がつく。
黄瀬が、『お帰りッス、幸さん』といつも先に帰っているときは迎えてくれていた黄瀬の姿がない。
靴がある、と言うことは家自体にはいると言うことなのだが。

「黄瀬?」

呼んでも返事がない。
ふと、考えれば玄関から続く廊下の電気も自分で無意識の内に付けていた。
リビングも真っ暗だ。人の気配がしない。
リビングじゃないなら、と風呂場を一応覗く。万が一、と言うこともあり得る。
が、風呂場にも人影は無く、ホッと息を吐いた。
順番に扉を開けていき、最後に寝室の前までやって来た。

「黄瀬ー?」

そろそろ、と扉を開けて、電気をつける。
付けた途端、目に入ったのは、ベッドの端にあるシーツの固まり。

「黄瀬?」

それに近付いてシーツを掴めば、びくり、とそれが震えた。
黄瀬、と名前を呼べば、もう一度。
何度か呼び掛けるが、一向に顔を表す気配がない黄瀬に、焦れったくなり、笠松はシーツを黄瀬から剥ぎ取った。
シーツは思いの外あっさりと笠松の手によって動き、膝を抱えて動かない黄瀬が、その下から出てきた。

「黄瀬、どうした?」

ぱさり、とシーツを床に落とすと、様子のおかしい黄瀬に近寄る。

「………」
「何?何言ってんのか聞こえねーよ」

ぼそぼそと何かを呟く黄瀬に、笠松は乱暴ながらも優しく声をかけ、頭を撫でる。

「……さ……て」
「ん?」
「さわら、ないで…せんぱいが、よごれ、ちゃう」

ぼんやり、と顔を上げた黄瀬の瞳には、正気がない。
それを見た瞬間、チッと舌打ちしたくなるのを何とか堪えた。

「バカ、何言ってんだ?」
「だって、みんな、けだもの、けがれる、けがされた、とか……」
「そいつらはアタシの事何だと思ってるんだ?」

聖人君子じゃねーよ、と思いながら、ぎゅっと抱き締めて、頭を撫でてやる。黄瀬は、ろくに抵抗もしない。
そんな気力も無いのだろう。

「……今日は何があったんだ?」
「撮影、上手く、いって、1人で、街、歩いて、高尾っち、会って、この間、お礼?言われ、て、幸さん、約束、の、話、したら、皆?来て……、緑間っち、送って、もらった……」

単語単語の黄瀬の言葉は解りづらかったが、何があったのか、大体把握できた。
しかし、詳細にはたどり着かない。

「成る程解らん。黄瀬、携帯貸せ」

と言いながら、黄瀬を抱き締めたまま、黄瀬の体を探る。大体、尻ポケットに入れているのをよく見かけるので、手探りに探せばあった。
普段の黄瀬なら、慌てるだろうな。
携帯を取り出すと、緑間に電話をかける。

『もしもし、黄瀬か?』
「あっ、緑間か?笠松だ」
『笠松さん?お久しぶりです』

数回のコールで出た緑間は、少し驚いたような声音をしていた。

「久しぶり。それより、近くに高尾いるか?」
『高尾なら、今日は昼にこれから女子会だと言って、行ったきり帰ってないのだよ』
「そら、好都合だ。緑間、今日黄瀬を見つけたときの話を聞かせてくれ」

は?と、一瞬戸惑ったような声を出したが、それでも答えてくれた。

「へぇ?つまりだ、高尾のメールで集まった奴等が、一斉に黄瀬をリンチした、と?」

理解した途端、笠松の目はすうっと細くなり、黄瀬を抱き締めている腕に力が籠る。

『言い方は物騒だが、間違っちゃいないのだよ』
「ふーん?ありがとう、緑間。ついでに、一つ伝言頼まれてくれねーか?」
『別に、構わないのだよ』
「サンキュ。じゃあ、高尾と今日の一件に関わった奴等に、『暫くその面アタシの前に出すな』って言っておいて」
『………解った、のだよ』

意外に低くなった声音。笑っているけど、怒りが消えた訳じゃない。
寧ろ、黄瀬に手を出した奴等に対して深い、深い、怒りが込み上げてくるのを緑間に当たらないようにするので精一杯だ。

「緑間、今日は悪かったな。黄瀬も迷惑かけて」
『別に、あそこに置いておいても邪魔だっただけなのだよ』
「素直じゃねーなぁ、まぁ、それがお前だって黄瀬が言ってたな」
『余計なお世話なのだよ』
「はは、今日は本当にありがとう。じゃ、頼むな」

解りました、と言う声を最後に、緑間との通話を終了させた。

「黄ぃ瀬!」
「??」
「しようか」

何を、とは言わないが、黄瀬をベッドへと押し倒す。
キスを仕掛けて、漸く黄瀬の瞳に正気が戻り始める。

「!!?」
「汚くなんてねーよ、お前は汚れない」
「笠松、さん?」
「名前で呼べよ」
「ゆき、さん」
「そうだ。お前は、アタシの太陽で光、だから。何よりも綺麗だよ、りょーた」

ふふっ、と笑いながらもう一度黄瀬にキスを仕掛けた。


end


この後、“笠松さんに嫌われた”とか言って落ち込む受け子たち。

私の考えてる黄笠って、やっぱり、笠松先輩が押せ押せの方が好きっつーか……うん。だって、何かヘタレ黄瀬と男前笠松に萌えるんだから仕方がない。
で、笠松の方が黄瀬の事好きすぎるとか、なにそれご褒美でしかないんだけど。

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