バトルドールと


『うぁああああああああ!!!!!』
「黄瀬!?」

もうダメだ、そう思ったとき、黄瀬の体が目の前にあった。
必死にこの空間を、笠松を守っていることが解る。

「黄瀬!止めろ!」
『俺は、負けないッス!!!!!』
「黄瀬!」

敵陣に突っ込んでいく、黄瀬。その後、大きな爆発と共に、マザーの声が響く。

――WINNER、笠松&黄瀬――

その声と共に、目の前は真っ暗になり、ゴーグルを外した。

「黄瀬!」

隣にいる黄瀬のゴーグルも外し、揺り起こす。

「ん……ぁ、せんぱい」
「黄瀬……こんのバカが!」
「う、えぇ!?」

何ともない所を見て、安堵したと同時に、怒りがこみ上げてきた。

「今回は、シュミレーターだから良いとして、実践なら死んでたんだぞ!?」
「センパイを守って死ねるなら、本望ッス」
「バカ野郎!シバくぞ!」
「イッテ!酷いッス!」

スパン、と頭を叩かれて押さえる黄瀬。しかし、言ってるほど痛くはないだろう。何せ、黄瀬は……

「俺はバトルドールッスよ?それが仕事ッス!」
「解ってんよ!だから、いっつも言ってんだろ!俺の命を守るなら、自分の命も守れって!」

どんだけ心配したと思ってる?
そう、黄瀬の体を抱き締める。人のようで、人ではない存在。主を守り、戦うために存在するバトルドール。
黄瀬が、他のバトルドールと同じならば、そう笠松は何度考えたか知れない。
黄瀬は、キセキ、と呼ばれる秘蔵のドールだ。かつて、世界を統べんとし、世界中を敵とした、絶対的強さを誇っていた帝光の第七ドール。
その製造方法は、他のバトルドールと違い明かされておらず、修理も修復もあまりしてやることは出来ない。バックアップも取れない。だから、黄瀬が戦闘で壊れたらお仕舞いなのだ。
死と、同じ。だからこそ、笠松は黄瀬に無茶をするなとキツく言う。
しかし黄瀬は、自分がバトルドールだからと、あまりその願いを聞いたことはない。









「……ご苦労様、黄瀬」
「センパイは、ケガ無いッスか?」

それに頷くと、黄瀬は血濡れのままニコリ、と綺麗に微笑み、良かった、と口に出した。
どれだけの返り血を浴びたか解らない。着ていた青と白の軍服は、赤黒く染まっていた。

「お前は?」
「何ともないッス。ケガ一つしてないッスよ」

誉めて誉めて、と言わんばかりの黄瀬の頭を笠松は、そうか、と撫でる。

「じゃ、早く帰るぞ」
「はいッス!」

ニコニコとしながら、着いてくる黄瀬に、漸く笠松は安堵の息を吐いた。



「黄瀬、お前は何か欲しいものとか、して欲しいことはないか?」

へっ?と隊舎に戻り、シャワーを浴びて出てきた黄瀬に問う。

「お前は、毎回良くやってくれてるのに、俺は何もしてやれないからな」
「あぁ、別にいいんすよ?」

俺は、貴方を守るために居るんだから。
そう言った黄瀬に、笠松は悲しげな瞳をした。

「お前は、それで良いのか?」
「いいッス。それが俺の望みだから……でも、もし叶うなら……」

そう、ポツリ、と俯き呟く黄瀬。その続きを待つ笠松は、静かに黄瀬を見つめていた。

「叶うなら、センパイが……笠松幸男がこの世から居なくなるとき、俺も共に連れていってほしい」

どこまでも、共に。
そう、顔を上げ笑いながら言う黄瀬に、笠松は目を見開いた。

「黄瀬……」
「俺を連れていって、一人は、置いていかれるのは、もう嫌ッス……」

その頬に一筋、涙が溢れた。

かつて、帝光のドールたちと離れ離れになった黄瀬は、擦れて誰も信じられなくなっていた。それを、拾ってシバき、再教育したのが、今の黄瀬のマスターである笠松だ。
今の黄瀬は、笠松こそ全てだ。笠松が居なくなれば、壊れてしまうだろう。肉体の機能は正常化していても、心は戻らないただの人形に成り果てる。
それが解っている黄瀬は、笠松からなるべく離れたがらないし、いつまでも共に在りたいと願う。

「バカだな、お前はやっぱり」
「何スか、それ」
「置いていったりしねーよ、心配すぎて置いてけるかっつの」

笠松は、笑いながら黄瀬の頬を撫でながら、その雫を拭う。黄瀬は、気持ちよさそうに、目を細めた。

「俺が死ぬ時は、お前も一緒だ。約束してやる」
「ほん、と?」
「あぁ。俺がお前との約束破ったこと有るか?」

それに、きょとん、とした顔の黄瀬は首を横に一度だけ振った。

「だろ?」

そう、にやり、と笑う笠松に黄瀬は歓喜余って飛び付いた。

「センパイ、大好きッス!」

END

と言う、訳の解らんファンタジーを書くのが好き。

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