笠黄と雪木佐とクロスオーバー
笠黄メインで雪木佐が出てきます。クロスオーバー。あたしは楽しかったです。はい。
黄瀬が女装とかしてます。そう言う描写は少ないけど・・・。
『センパイ、すんません。土曜日の約束なんすけど・・・』
そう言って、黄瀬から電話が入った。
「おぅ、どうした?」
『予定が入っちゃって・・・』
今週の土曜日は、部活の後、黄瀬と出かける約束をしていた。デート、デートとはしゃいでいた姿を呆れながら見ていたのを覚えている。そのため、想外の出来事なのだろう。申し訳なさそうな声と、困惑が耳に残る。
「そうか、残念だな。仕事か?」
『いや・・・あの、俺、モデルしてるから・・・その・・・』
歯切れの悪い黄瀬の声に、イラッとしながらも首をかしげる。
「んだよ、ハッキリ言え!」
側に居るわけでもないのに、口癖の様に“シバくぞ!”と出てしまう。が、その言葉で黄瀬は電話の向こうにも関わらず、ビシッと姿勢を正したように感じた。
『はいッス!従兄弟にモデル頼まれたッス!』
いとこ〜?と我ながら、間抜けな声が出た。
『あー、えーっと・・・北海道に従兄の家があるッスけど、そこの兄ちゃんがこっちの美大に通ってんス』
成る程、と合点がいった。だから、モデルか。と。
「じゃあ、明日は終わったらそのまま?」
『はいッス。終わったら、電車乗ってそのままモデルしにいくッス』
それに、ふーん?と返すと、だからごめんなさいと返ってくる。
「いや、頼まれたなら仕方ねーよ。それより、美大か・・・」
『センパイ、興味あるッスか?』
「これでも一応受験生だからな」
美大は視野に入れてなかったが、一応、オープンキャンパスなど行ってみたら選択肢も広がるだろうか、と考える。
『じゃあ、センパイも一緒に行きませんか!?』
目の前にいたら、あのシャララオーラ全開で迫ってきそうな声音に、携帯を遠ざける。
「いや・・・」
別にいい。と言おうとしたところで、黄瀬の“俺、聞いてみるッス!”と言う声と共にブツッと切られ、後にはツーツー、と終了の合図だけが残された。
思わず携帯を握る手に力が入る。
「あんの、バカ」
話は最後まで聞け、と低く、それは低く呟いた。
数分後、黄瀬から再びかかってきた電話に出ると、黄瀬は喜びながらOK貰えたと伝えてきた。そうか、良かったなぁ?と言った所で、笠松はくどくどと黄瀬に話は最後まで聞くように、と説いた。
そうして、迎えた土曜日。
森山達に別れを告げ、そのまま駅へ向かい、東京へと出発する。今日は遅くなりそうだから、と黄瀬の従兄に泊めてもらうことになった。
「あっ、リョーター!」
目的の大学に近付くと、やたらキラキラした、なんつーか・・・正統派王子?みたいなイケメンが黄瀬の名前を叫びながら近付いてきた。
「こーちゃん!久しぶり!」
両手を広げ、走っていき、その王子とハグを交わす黄瀬。イケメンどうしだから許される往来での戯れだな。と、ある意味現実逃避したくなった。
「あっ、君がリョータの言ってた・・・」
「笠松幸男です。よろしくお願いします」
ペコッと頭を下げると、こちらこそ、キラキラと笑う彼。
「雪名皇です。いつも、リョータがお世話になってます」
挨拶もそこそこに、雪名がいつもデッサンをしている教室へと向かう。
入った瞬間、歓声が上がる。
「えっ、ちょっ、これキセリョじゃない?」
「なん、雪名あんたキセリョと従兄とか聞いてない!」
と、詰め寄られる雪名。笠松は女性ばかりの集団に、黄瀬の後ろへと隠れてしまう。
センパイ・・・、と黄瀬には呆れられてしまうが、苦手なものは仕方がない。
「えっと、それで俺はどうすればいいッスか?」
笠松が弄られない内に、と黄瀬は先手を打つ。
が・・・。
「あら、後ろの彼、男前!」
一人が笠松に気が付き、視線が集まる。
ひっ、と息を飲む声が聞こえた。
「あの、スミマセン。それ以上寄らないで欲しいッス」
ははっと苦笑いを溢しながら、後退り距離を取る。
皆の頭には?が浮かぶ。
「センパイ、女性が苦手なんス。だから、お願いします」
と言えば、そっか、残念、と距離を取ってくれる。
「あっ、いいこと思い付いた!」
そう、雪名が言う。こっち来て!と雪名に強引に手を引かれる。雪名はその間に、誰か別の人に何かを頼んでいたようだ。
そうして、連れて行かれたのは服飾科。ここでも、同じような反応を受ける。が、ココは女性が芸術科より多い分、大変だった。雪名は服飾科の誰かと交渉している。
「だからさ、あれ、貸してくんない?」
「良いけど・・・ちゃんと、写真撮らせてよ?ちょっと待ってて」
何かを耳打ちして、だから、と言った雪名に女性は頷く。暫くして奥から出てきた女性が準備できた。といえば、雪名に二人とも呼ばれる。そうして、着替えて来て、と簡易の更衣室へ押し込まれる。が、黄瀬がよく解からない悲鳴を上げて出てくる。
「こっ、こーちゃん、こっ、これ・・・」
「リョータを流石にそのまま描くわけにはいかないからさ」
用意してたんだ、と言う雪名に、黄瀬は泣きそうになった。
「いや、だからって、これは・・・」
「いいから、いいから。笠松君、出てきちゃうよ?」
そう雪名が急かすと、ハッとした様に黄瀬は更衣室に戻った。笠松に遅い、といわれ自分の着替えている姿を見られたら、どんな反応をされるかわからない。
だったら、と一度引き受けてしまったもの、最後まで責任を持とうと自分の服を脱ぎ、その服に手を通し始めた。
「様になってるね、笠松君」
「ありがとうございます・・・」
出てきた笠松の姿を見て、雪名はキラキラとした笑顔で笑う。なんだか、その笑顔が居心地悪い。
無意識に黄瀬と比べてしまう。正統派王子の笑顔よりも、黄瀬のシャラッた笑顔のほうが何倍も安心できる。
じゃあ、メイクしちゃうわね。と、女性に手を引かれ、笠松の頭はオーバーヒートしそうだった。
(黄瀬!助けろ!)とその時ばかりは、渾身の力で叫びたかった。小さく、いや、と返すも聞き耳を持ってはくれない。
手早くパパッとメイクを済まされ、先に元の芸術科のほうへ戻される。芸術科では、豪華なアンティーク調の椅子が敷かれた赤いカーペットの上に置かれており、そこに座るように求められた。
しばらくして、雪名が戻ってくる。後ろに、見知らぬ女の子を連れて。黄色い髪に、青いカチューシャをして、薄い黄色とオレンジ、白を基調としたメイド服っぽいものを着ている。
雪名が何か耳打ちをすると、その子は笠松の膝元で座り込み、そのまま笠松の膝に顔を俯かせて乗せた。
びっくりして、笠松は固まったが、よくよく見てみると、ふっと力が抜けた。
「お前、黄瀬か?」
「・・・セイカイッス」
俯かせていた顔を笠松にだけ見えるように上げると、クスクスと笑った。そのまま、芸術科の人たちは思い思いの場所をとり、書き始めていた。なんだか、服飾科の人も写真をいっぱいとってるが。二人は気にせずに、クスクスとおしゃべりを続ける。
「何でそんな格好・・・」
「俺って、モデルしてるからそのままじゃ、事務所に許可取らないと描けないッス。でも、これなら俺だって解からないっしょ?」
「そうか・・・」
そう言って、笠松は黄瀬の頭を撫でてやる。
その表情頂!!とか、キャーッとか聞こえた気がするが、気にしたら負けだと思っている。
それから、数時間後、笠松と黄瀬は開放された。
「ここがこーちゃんの家かぁ」
そう、お邪魔します、と訪れた家は、一人暮らしにしては片付けられていた。
少し散らかっているけど、と雪名は言ったが、何処がだろう?
「こーちゃん、少女マンガ読むんだね?」
そう言って、黄瀬は遠慮なく本棚に納められていた一冊をとる。
おい、と笠松は止めるが、いいのいいの、遠慮しないで、と雪名は言う。
しかし、そんな自由でいいのだろうか?とも思う。
「俺、夕飯の支度しちゃうから、笠松君も遠慮しないでくつろいでて」
「あっ、はい。ありがとうございます」
そういわれれば、ため息を一つ零し、黄瀬の近くに座る。やはり、落ち着く。この、何ていうか・・・抜けてる?感じがたまらなく愛しくなった。
黄瀬は、普段笠松から擦り寄られることがないため、免疫がなく、柄にもなくあたふたしている。
顔は赤く染まっていて、なんだか笑えた。そこに、ピンポーンとチャイムが鳴る。
「ごめん、リョータ出てくれる!?」
手が離せないようで、台所から顔を出した雪名に、黄瀬は慌てて、うん、と答えるとバタバタと掛けていく。その姿に、また笠松は笑った。
「はーい!」
二度目のチャイムに、黄瀬は大きく返事をして玄関を開けた。
「「えっ、誰?」」
玄関を開けた黄瀬と顔を合わせた彼。目を合わせ、二人で大きく見開いて暫くして同時に呟いた。
「あの、てかっ、はっ?えっ?あれ?キセリョ!!!???」
「えっ、ちょっ?」
このマンションで大きな声でキセリョ、と叫ばれたらどうなるか、それを考えてとっさにその人の腕を引っ張って玄関を思いっきり閉めた。勢いあまって、そのまま後ろへと倒れこむ形になってしまったが・・・。
「アンタ、なんっ」
「どうしたの、りょー・・・木佐さん!?」
どうしたんスか?と雪名が倒れた木佐に手を差し伸べる。
その手を取って、悪いと黄瀬の上からどける木佐。
雪名は木佐の突然の訪問に驚いているようだ。
「いや、その・・・いいわ、俺帰ったほうが・・・」
「リョータ達なら大丈夫ですから、上がっていってください」
そこで、暫く戸惑った木佐はおじゃまします、とあがる事にしたようだ。
そこで、黄瀬が我慢の限界、とばかりに問う。
「その前に!こーちゃん、この人誰ッスか!?」
「あれ?前に、リョータには話しただろ?」
「いや、だって・・・この人どう見ても高校生でしょ!?」
その言葉が、グサッと木佐の胸に刺さる。30過ぎたおっさんに、高校生って・・・と。
「いや、本当に社会人だから!木佐さん、免許だして」
と雪名に言われた木佐はカバンの中から財布を取り出すと、免許証を黄瀬に渡す。
「・・・うっそぉ!?」
木佐の年を計算し、黄瀬は目を見開いて、免許証と木佐を見比べて更に驚いている。
「雪名、お前とキセリョは一体どんな関係だよ?」
「あぁ、従兄弟っす」
従兄弟!?と木佐は驚く。
「美形って遺伝なんだな・・・」
そう、しみじみ呟いた木佐。黄瀬と雪名は首を傾げるばかりだ。
「どうかしたんですか?」
騒ぎを聞きつけて、玄関に顔を出した笠松。その姿を見て、木佐は言う。
「童顔の仲間が居た!!!」
「はぁ?」
一人、訳の解からない笠松だった。
end
とりあえず、来客用の布団は一組しかなくて、黄瀬と笠松にベッドを譲る話も盛り込みたかったが・・・そんな気力はなかったよ!!
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