姫と出会った人々と


それは、偶然だった。
俺たちの国、海常が奴隷廃止制度を制定してから、もう数十年がたつ。
だから、海常では奴隷、という身分の人間を目にしたことは無かった。

「ほな、気をつけて」
「あぁ、サンキュ。また来る」
「今度は、由孝もつれて来たってな」
「断る。そんなに会いたいなら、手紙でも書いとけ」

そう言って、笠松は友好国である桐皇の公爵である今吉の屋敷を出た。桐皇の街並みは海常とは当然違っていて、眺めているだけでも面白い。
そうして、馬車に乗ったまま、街を見てるときだった。

「すまない、止めてくれ!」

大きな、鉄格子の付いた馬車。
その中に入ってるのは、動物ではない。人だ。
初めて目にする光景に、笠松は思わず馬車の運転手にあれは何か、と尋ねた。

「おや、海常公爵様、あれを見るのは初めてですかい。あれは」

奴隷市ですよ、そう運転手は言った。笠松は、あれが、とその馬車と周りを見つめた。
そこで、鎖に繋がれた一人の少女が目に留まった。
あれは、あれは・・・。
ふらふらと、馬車を降り、奴隷市へ向かって歩き出した笠松。
後ろから、運転手の呼び止める声が聞こえたが、笠松はかまっていられなかった。

「すまない、ここのオーナーは?」
「ヘイ、いらっしゃい。どんなのを、お求めで?」
「アンタか。馬車の中に居る、黄色い髪の少女を見せてくれ」

そう言うと、少々お待ちを、と言って奴隷商人は下男を動かし、あの時見えた黄色の髪の少女を連れて来た。

「涼、姫?」

すっと、俯いた顔に手を当てて上げさせ、その名を呟くと、ビクリ、と震えた体に、笠松は確信した。
少々薄汚れてしまっているが、数年前、助け出すことの出来ず、死んだと思っていた涼姫だと。

「この娘、幾らだ?」
「その娘でしたら、この位になるかと・・・」

と、紙に書かれた値段に頷くと、小切手を切って渡す。

「へへっ、まいど。今、奴隷の印を・・・」
「いらない」
「へ?ですが・・・」
「その子の綺麗な肌に、傷一つ付けるな」

と、笠松は奴隷商人を睨む。
衣服に隠れている部分には、どれほどの傷があるかわからない。
だから、これ以上傷なんてつけたくなかった。

「契約書を早くよこせ」
「へっ、へい!!」

さらさらと作成された契約書に目をざっと通してサインすると、写しと足枷と手枷の鍵を受け取って馬車へ戻る。
こんな往来で、枷を外すわけにもいかず、歩きにくそうにしている少女を抱えて歩いた。
その間、少女は何一つ、言葉をこぼすことは無かった。

「すまなかったな、時間を取らせた。行こう」
「はい」

己の隣に座らせ、馬車を出す。今吉は公爵と言っても、海常との境にある辺境の公爵なので、海常までは馬車でおよそ半日だ。
まぁ、辺境にいる公爵としては笠松も同じ立場だが。

「今、外してやるから」

と、街を出て、暫くしたところで少女の手枷と足枷を外す。
そして、ボサボサの髪を掻き揚げて、その顔をまじまじと見る。
間違いなかった。この子は

「元帝光の、第四皇女、黄瀬の涼姫」
「幸男、様・・・」

ようやく、細々とした声を出した黄瀬。その瞳から、溢れ出した大量の涙。
そう言えば、この姫は大変涙脆かったと、涙あふれるその顔をそっと抱きしめた。








こんな感じの、笠黄公爵と奴隷パロが見たい。と思う。


黄瀬 涼太
→女体化してますが解かりやすく名前はこのままで。数年前に侵略により滅んだ帝光の第四皇女。黄瀬とは、黄瀬の母親の住んでいた地方の名前。涼姫、と普段は呼ばれていた。笠松とは、帝光のパーティ何かで会ったことがある。小さい頃は、たまに来る良き遊び相手でもあった。

笠松 幸男
→海常の辺境公爵。今吉とは旧知の仲。互いに、互いの国の情報を交換してる。別に密偵とかじゃなく、堂々と。今の情勢はどうだとか、なんだかんだ。桐皇が帝光に攻め入ったけど、その事も事前に知っていた。その前に幼い頃から知っている姫である、黄瀬を助け出そうと思っていたが、一足遅く、黄瀬は居なくなっていた。


(ほんの作者の小話)
本当は、海常で黄瀬が見つかる話を書きたかったが、何ていうか・・・。長くなりそうだったからなぁ・・・。奴隷の身分から救い上げて、でもそれで余計な噂話とか立っちゃって、黄瀬ちゃんが傷つく話を書くのは・・・。無理です、アタシが耐えられない←




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