姫と出会った人々と


友人に誘われるがまま、入った娼館。新しいのが入った、と娼館を切り盛りしているオーナーが若松に進めてくる。今、つれてくるからね!と部屋を出て行った主人に、買うとは言ってない、という暇も無く、若松はため息を吐いた。

「厄日か・・・」

自分の不甲斐なさに、飽き飽きした。隣の部屋からは、友人と娼婦の声が響く。壁、薄すぎだろう。
お待たせ!と入ってきた主人に、連れられた青い髪の少女。その少女を見たとたん、若松は目を見開いた。

「輝姫・・・」
「てるひめ?」

あとはごゆっくり、と若松の反応を見もせず、せかせかと主人は行ってしまい、残された少女だけが若松の言葉を聞いていた。

「いや、何でもない・・・ただ、お前と・・・とても良く似た娘の名前だ」
「そうなの?」

ぼんやり、とこちらを伺いながら見上げてくる瞳を見つめ返す若松。
だが、若松の知っている少女は、いつも傲岸不遜で自信に満ち溢れてて、腐ってもこんな娼館に身を落とすような娘ではなかった。

「私、貴方のお相手、しなきゃいけないの」

私・・・。彼の少女の一人称は俺だった。そのせいか、違和感がぬぐえない。

「そう、か。お前、名前は?」
「大、大きいって書いて“ハル”って、おばさんが言ってた」

おばさん、というのはさっきのオーナーの事だろうか。
では、本当の名前ではないのかもしれない。

「それは、そのおばさんに付けられた名前か?じゃあ、本当の名前は?」
「解からないの」

それから、ポツリ、ポツリ、と大は話す。

「大にはね、記憶?って言うのが無いの。どうして、大ここにいるのかも解からないの。ただ、おばさんが大を拾ってくれたから、ここにいるの」

幼い話方、澄んだ嘘偽りの無い瞳に、若松は無意識にあふれる涙を抑えることが出来なかった。

「どうしたの?大、貴方に、何かした?」

突然の涙に不安がる大に、首を横に振るが、抑えようとしても抑えようとしても後から後から出てくる涙を止めることは出来なかった。
純粋無垢な少女が、あの傲岸不遜の少女と重なる。いやでも、追い出せないほど強く強く残っている、鮮やかな青。
目の前の少女との違いに、心が悲鳴を上げる。

「・・・なぁ、大」
「なぁに?」
「俺と、一緒に来るか?」

手を、あの日、帝光に侵攻していく自国の軍を尻目に、差し出すことの出来なかった手を今、差し伸べる。

「貴方と?大が?」
「あぁ」
「大、何にも無いよ?大、何にも出来ないよ?」
「いい。それでも良いから」
「大で、本当にいいの?」
「あぁ、もう・・・どっせーい!!来たいか、来たくないかハッキリしろ!」

少し、大きな声を出しすぎて、目の前の少女はびっくりしたように目を見開いた。
涙目になっていく少女にやっちまった、と思ったが口から出たものは取り戻すことは出来ない。
ただ、それ以上少女に何かを言うことは出来なくて、少女の出方を待った。

「・・・大、大ね、貴方と一緒にいってみたい!!」

少し俯いていた少女は、キラキラと目を輝かせて、若松に飛びついた。





ということで、若青で伯爵と記憶喪失娼婦パロディだったんですが・・・あれ?若松の伯爵要素、どこ行ったし。まあ、なんていうか、すんません。

青峰 大輝
→女体化して(re・・・。帝光の元第三皇女。輝姫と呼ばれていた。第五皇女だったさつき姫と仲が良かった。若松とも何度か顔を合わせた事があるが、その度に、それはするなとか、皇女の自覚を持てだとか、よくこいつ飽きないなぁっと思っていた。現在、なぜか記憶喪失。

若松 孝輔
→帝光時代から、青峰のことは気になっていた。ただ、素直になれずいつも顔を合わせば喧嘩ばかりしていた。帝光を自国が攻めるとき、伯爵と言う地位についているお陰で下手に動けず、青峰の行方を見失ってしまった。


(ほんの作者の小話)
もっとね、本格的に娼婦やってる青峰くんでも良かったんだけど・・・嫌悪する人もいるかなぁと。それで、こう新入りって事で登場。いや、でも何か娼館の主人ってこう・・・太った威勢のいいおばちゃんってイメージがあるんですが、皆さんはどうなんですかね。




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