愛が深い
井坂さんと桐嶋さんが同期設定
にて、桐嶋さんは井坂呼び。
「あれぇ、桐嶋じゃないの。珍しいねぇ、お前がこんなところで…誰か待ってんの?」
「井坂…まぁ、そんなところだ。あんたは?朝比奈さんは一緒じゃないのか?」
いつもいつも一緒なわけじゃねぇよ、と顔を赤くして言われても説得力のかけらもない。
井坂は、本当に朝比奈さんのことが好きなんだなってうかがえる。
「俺のことはどうでもいいの。で、誰まってんだよ?」
「…もうすぐ来る。来たら解るさ」
横澤の名前はあえて出さない。たぶん、見たらわかるし、大体知っていそうな気もする。井坂は、そういう情報だけは早いから。
「ふ〜ん?まあ、いいけど。あっ、そう言えばさぁ、結婚指輪外せたって本当?」
社内の女の子たちが騒いでるんだよねぇ、と勝手に左手を取られて、見られる。
「本当です。今、恋人がいるからする意味無いでしょう?それに、外せたんじゃなくて外したんです」
そう言えば、井坂は少し含み笑いをする。
「うそつけ。実際、今待ってるやつかは知らんが、その恋人やらが出来るまではずそうとも思わなかっただろ?……お前は愛が深いからなぁ、桐嶋」
それに、俺は苦笑するしかない。
全て、図星だからだ。
そう、嫁さんの形見だから、外したくなかった。これをはずしたら、嫁さんがいないことを認めて、一人になってしまいそうで怖かったから。
嫁さんのことを忘れてしまいそうで、怖かったから。
それでも、その指輪を外せたのは、横澤が気にしていたことよりも、何よりも、俺があぁ、外さなきゃだめだな、と思ったから。横澤を、愛しいと感じた時から、それは決まっていたことなのかもしれない。
それを、見抜かれてるとは、やはり井坂は只者ではないと、俺は思う。
俺だって、多少横澤の感情を読み取り、理解してやることが出来ても、たぶん、井坂のように完璧にとはいかない。
それは、仕方がない事なんだけれども、同じヒットメーカーと言われようと、やはり井坂はすごいやつだと俺は思う。
END
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