カメラマンとモデルでパロディ4
黄瀬のアルバムが、秋口に発売された。その表紙に、ネット上ではさまざまな憶測が飛び交った。
「ユキさん、この反応は予想外だったッス・・・」
そう言って、事務所の机に突っ伏す黄瀬。その頭を何も言わず、笠松は撫でる。
「いや、でもあれは卑怯でしょ。何せ、不意打ち」
「10代のエロさ・・・って書いてあったねどこかに」
ニカニカ掲示板のスレッドでは、アンチも居たが、大抵は、叫んでた。
その、問題の表紙と言うのは、黄瀬の目元がメイクではなく赤く、シーツを纏った姿。ちらりと見える足。朝日が差し込む窓辺。風に煽られてなびく薄いカーテン。そして、極めつけは、大層嬉しそうに微笑む黄瀬の笑顔だろう。黄瀬は、見本品が出来て、それを見た瞬間に、誤解だと叫びたかった。が、写真集の発売日は決まっていたし、もう何万冊かは綴じ込みが終わっているそうで、差し止めも出来なかった。そうして発売された写真集は、開始1時間でほぼ完売、と言う結果だ。
しかし・・・。
「あんな・・・、あの時の泣いた朝の写真撮ってるなんて・・・うー、ユキさんのばかー」
「俺は、俺の黄瀬を少し分けてやっただけだ」
ドンッ、と構える笠松に、黄瀬も小堀も言葉をなくす。森山だけが、唯一苦笑いしながら笠松の頭をブッ叩いた。
が、それが当たる前によけられて、けりを食らっていたが。
表紙になったその写真は、黄瀬が北海道に撮影で行った時にキセキに出会い、まぁ、色々会った末に、泣きながらホテルへ戻った次の日に撮った写真だ。あの、シーツの下にはキチンと寝巻きとしてのタンクトップも、ショートパンツもはいている。シーツに包まっていたのは。朝の冷え込みでその格好では耐えられなかったからだ。
窓を開けたのは、寝起きの笠松の要望。これでいいッスか?と黄瀬が笠松を振り向いたときに撮られたらしい。
「でも、森山さんも小堀さんも出来上がる前に見たんでしょ!?何で教えてくれなかったっスか!?」
「いや、ほら・・・笠松に口止めされてたし」
ごめんね、と謝る小堀の姿に、再び黄瀬はうー、と机に突っ伏した。
そうして、事務所で過ごした後。月曜日、学校へ行けば、キセキが待ち構えていた。
「これは一体どういうことだ!?」
バンっ、と叩きつけられた自らの写真集。どういう事だも何も、一番自分が知りたい問題である。
赤司は、腕組をしながら、座った黄瀬を見下ろす。さぁ、吐け、と言わんばかりに。
「どうもこうも無いッスよ!見たまんまッス!」
黄瀬にとっては、泣きつかれて眠った翌日の、腫れぼったい、隠してしまいたいような自分の写真でしかないため、恥ずかしいから、顔が赤くなる。が、事情を知らなければ、情事後の朝、その相手に微笑みかけている写真にしか見えない。
黄瀬の答えを聞くなり、キセキは有る意味面白い位に崩れ落ちた。
「俺の・・・俺の黄瀬が汚された・・・」
「あぁ、可愛い黄瀬が・・・」
「何て事なのだよ・・・」
など、ぶつぶつと呟いているが、黄瀬にはさっぱり何のことか解からない。だいたい、赤司のものになった覚えも無い、と一人頭の中で言い返す。
「黄瀬ちん、ちなみにぃ、この写真撮ったのはー?」
「ユキさんに決まってるじゃないッスか」
何を当然の事を、と黄瀬は首を傾げる。が、キセキの殺気は増すばかりだ。
「あの人とは、一度キチンと話し合わなければいけないね」
「はい?何を?」
「黄瀬は気にしなくて良いんだよ?」
と、笑う赤司に寒気を覚える黄瀬。あぁ、これはダメなパターンだ、と。
しかし、黄瀬は今の笠松を思い返し、数秒後、フッと力を抜いた。
何だかんだ、笠松は黄瀬に優しいが、大学を卒業して、カメラマンとなった笠松は、ある意味引きこもりで、あまり人ごみの中に顔を出さない。人と、関わることもあまりしなくなったように思う。知り合いならまだしも、きっとたぶん、笠松がキセキの相手をすることは無い。そう思ったら、自然に肩の力が抜けた。
まぁ、笠松の変わり様に、森山も小堀も高校時代の鬼主将が懐かしい・・・と嘆くが。黄瀬は、高校時代の笠松を知らないため、全く解からない。
「黄瀬さんは、あの方と付き合っているんですよね?」
突然の黒子にびっくりしながらも、そうッスよ?と頷く。
笠松と黄瀬は、付き合ってそろそろ一年になる。社会人の笠松だが、時間にある程度融通の利く仕事なのか、黄瀬の休みに合わせてくれるため、黄瀬と笠松はすれ違うことなく、黄瀬は幸せいっぱいだ。
「今、幸せですか?」
「もちろん!」
幸せじゃないはずが無い、とニッコリ笑って答える。
「ユキさんに一目惚れしたのはアタシッス。その時、アタシはまだ小学生で・・・でも、ユキさんに会って・・・世界が変わった気がしたッス」
そう、照れたように笑う黄瀬。その顔は幸せいっぱいに見えて、キセキの面々は目を見開く。それは、きっと自分たちでは引き出すことの出来ない笑顔だからだ。
「何か・・・、負けた気がするわ・・・」
「・・・悔しいが、右に同じなのだよ」
認めたくないが、認めるしかない。黄瀬を今、一番幸せに出来るのは、彼しか居ないのだと。
ちなみに、キセキ→黄瀬への感情
緑間、黒子、紫原→妹
灰崎(出てきてないけど)、青峰→女
赤司→娘
桃井(出てき(re・・・)→女友達
って感じです。
「黄瀬、迎えに来た」
再び、一群の練習している体育館へ笠松がやってきた。黄瀬は、もうちょっとかかると言って、作業に戻ってしまったが。
そこに、突っかかってくるのはやはり青峰だったりする。黄瀬の笑顔を見て、諦めたはずがどうも笠松を見ると突っかかってしまうらしい。大輝は本能で生きてるからね・・・。と、赤司が珍しく苦笑していたが。しかし、この日笠松に突っかかったのは青峰ではなかった。
「アンタ、誰だよ?リョーカの何?」
珍しく練習に参加し(させられ)ていた灰崎だった。が、笠松は関係ないと口を開かない。が、黄瀬には解かった。笠松が、イラァッとしていることを。それを、反応すると面倒くさいことになりそうだからと耐えていることを。
「何とか言えよ、おっさ・・かはっ!?」
「ゴチャゴチャうるせーんだよ!クソガキが!!」
胸倉を掴もうとした灰崎の手は逆に掴まれて、そのまま鳩尾に蹴りを食らって、灰崎は床に崩れた。
「俺が誰だ?お前に関係あるのか?あぁ!?だいたいだ、お前年上に向かってなんて口の利き方してやがる?青峰と言い、テメェといい、礼儀っつーモノを知らんのか!?」
ギリギリと、笠松は灰崎の頭を片手で掴み締め付ける。それを見て、うわぁユキさん久しぶりにキレてる、と黄瀬は引きつった笑顔を浮かべた。イダダダダダダ!!!!!!と灰崎は悲鳴を上げるが、笠松は関係無しに締め上げる。
「笠松さん、その辺にしておいてあげてください」
その言葉に、チッと舌打ちした笠松は灰崎の頭をパッと放す。
「ユキさん、帰りましょ?」
バタバタと帰り支度をして、黄瀬が慌てて笠松の元へ駆け寄り、この場から連れ出そうとする。
が、待てよ!と灰崎は黄瀬の腕を掴んだ。その手は、笠松によって振り払われてしまったが。
「マジでお前の何な「構うな、帰るぞ」
灰崎の言葉をさえぎり、笠松は黄瀬の腕を引いて体育館を出て行ってしまう。
残された灰崎は、弾かれた手をさすりながら、チッと舌打ちしてキセキの面々へ振り返る。
「灰崎君、今回は諦めたほうが懸命です」
「あー?何がだよ?」
黒子に肩をポンッと叩かれ、同情されている灰崎だが、本人は訳が解かっていなさそうだった。
ところ変わって、黄瀬の腕を引く笠松だが、その頭は羞恥心を隠すのでいっぱいいっぱいだった。
「・・・あー、カッコワリィ・・・」
ボソッと口からこぼれたその言葉は、近くに居た黄瀬には聞こえてしまったようで、えっ?と聞き返された。
「ユキさんはカッコいいッスよ?」
「いや、ちげぇ、そうじゃなくてだな・・・」
あー、だの、うー、だの唸る笠松の珍しくハッキリしない様子に、黄瀬は首を傾げた。
「あー、くそっ、俺らしくもねー・・・」
「何がッスか?ユキさんは全部ユキさんッス」
黄瀬の言葉に、笠松は目を見開く。黄瀬は、その様子に更にハテナマークが増える。
「お前は、だから・・・いや、いいや」
ハハッ、と笠松は笑う。これだから、黄瀬が好きだ。そう、笠松は思う。
いつも、いつも、大切なところで自分を救ってくれる存在。暗くなりがちな自分を光あるほうへ導いてくれる。
「好きだ、黄瀬」
突然の言葉に、黄瀬はボフッと真っ赤になる。
「なななっ、何ッスかいきなり!!」
「いや?ただ、心底お前が好きだって思っただけだ」
それを聞いた黄瀬は、立ち止まるとしゃがんで、自らの顔を隠してしまう。
「もー、ユキさん卑怯ッス!!」
そうか?と笠松は優しく笑う。
そして、黄瀬に手を差し出す。
「ほら、行くぞ」
「・・・はいッス」
少し、躊躇った後笠松の手を取って再び歩き出す。
そんな黄瀬の頬に、柔らかい感覚が触れる。
「ゆゆゆ、ユキさっ!!?」
「愛してる、のほうが良かったか?」
「もー、何すか?デレ期ッスか?アタシの心臓が持たないッス・・・」
悶えながら、黄瀬は思う。悶え死ぬってこういうことなのか、と。
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