カメラマンとモデルでパロディ5
「幸兄!どうすればいいんだよ!!」
「どうした、順平。荒れてるな」
笠松の職場にやってきた日向は、笠松の腰掛けていた席の対に座ると、ダンッと真ん中の机を叩き叫んだ。
いきなり、何がなんだか解からない笠松は、とりあえず落ち着け、と小堀にお茶を頼んだ。もちろん自分では淹れられない。
出されたお茶を飲んで、一息ついた日向はうなだれた。その様子に、一応心配する。一様。
「幸兄、俺、去年から教師やってんだけど・・・」
「あぁ、知ってる」
ポツリ、と零された言葉に頷く。日向は、笠松の記憶が正しければ、誠凜という私立の新設高校で社会科の教師をやっていたはずだ。教員試験が受かったと連絡があって、それを祝った覚えはある。どうして、他人に興味の薄い笠松が日向の就職を祝ったか?日向が、笠松の従弟であるからだ。普段、ぼぅっと、暇しながらすごしていると言っても過言ではない笠松でも、親戚、ましてや兄と慕ってくる従弟を蔑ろには出来ない。
「今年、入学してきた帰国子女が居て」
そこで、言葉を切った日向は、深い、それは深いため息を吐いた。
「・・・それからどうしたんだよ!?」
沈黙が続く中、無言の状態に耐えられなくなったのか、森山が叫ぶ。
それに驚いた日向は、ガバッと状態を上げると、森山の姿を見て、森山が近くに居るわけでもないのにのぞけった。
「うぉ!森山さん、居たんですか」
「居ちゃ悪いか!!ココは笠松だけの職場じゃねぇ!!」
ダンダン、と地団駄踏みそうな勢いの森山。普段から、何かしら鬱憤が溜まっていたのだろうか・・・。
「帰国子女が・・・」
「だから、そこで話を切るな!」
「俺にだってよくわかんねぇんですよ!!」
段々と声が大きくなっていく二人のやり取りに、あるところでプツン、と笠松が切れて二人ともがシバかれた。
そして、はじめから全部話せ。と、一段と低い声で笠松が日向に言うと、あった事柄を全部はじめから話し始めた。
「何だ?要約すると、帰国子女のその少女に懐かれて、告白された、と?」
「はぁ、まぁ・・・そう言うことになりますかね・・・」
話すだけで、ぐったりとした日向をよそに、森山は、何だそのシチュエーションうらやましい!!と、残念が本領を発揮したといわんばかりに叫んでいた。その口は近くにあったお菓子で小堀に、煩いよ、森山。と、塞がれていたが。
「懐かれる事態は、教師として嬉しいんでそれはいいんです。問題は、好きだって告白してきたその後からで・・・」
後?と首を傾げた面々をよそに、日向はため息をまた深く吐いた。
「一応、俺は教師で、そいつは生徒だからって断ったんです。その断り方がいけなかったのか、じゃあ学校辞めるとか言い出して・・・」
再び、ずぅうううん、と沈んでいく日向。そんな日向を意にかえす者など、この場にいるはず無く、それで?と日向を見つめている。
「何とか引き止めて、自主退学だけは阻止したんですが、俺が告白された事が何でか一部にバレて、生徒からネチネチと嫌がらせに近い・・・あれは何ていうんだ?」
嫌がらせ?と首を傾げた日向に、知るかよ、と返す笠松。実際、見たことも体験したこともない、全く知らない事を何ていうんだ?と言われても答えようが無い。しばらく、考えた後、日向はピシッと椅子に座って明確に告げた。
「とりあえず、学校に行きたくないです」
「結論がそこか!!つか、教師が登校拒否すんな!」
無駄にキリッとした日向に、スコッ、とギャグ漫画のようにズッコケた森山は、バンバン!!と作業用の机を叩きながら日向に反論する。
「教師だって、登校拒否したくなります。だいたい、明日からそのクラスの担任が産休に入るんで、そこ受け持つことになって・・・憂鬱だ・・・」
段々とまたうなだれ、声に張りが無くなっていく日向。最終的に、再び机にペタリ、と突っ伏してしまった。
「あぁ、そりゃ大変だな。頑張れ」
「他人事ッスね、幸兄」
「当たり前だろ。だいたい、お前の問題だろうが」
俺は聞くだけ聞いてやった、と笠松は言う。まぁ、今の笠松に話を聞いてもらえるだけ、マシだということだ。
それに、笠松はどう助言した所で、どうするか決めるのは最終的に日向だと言う事が解かっているから、余計な口出しはしない。
「こんにちわーッス!!」
ずぅうううん、と沈んだ空気の中、黄瀬がバンッ、と扉を開いて輝きながらやってくる。
いつも通りの明るい笑顔に、今日も良い一日だったんだな、と笠松は思う。
「ユキさんただいまッス!って、何この空気おもっ!!」
一目散に笠松に飛びついた黄瀬は、ニコニコと笠松に向けていた笑顔から一転、空気の重さを感じると顔をしかめた。
黄瀬のマシンガンの様な言葉の合間に、お帰り涼華、と笠松は返す。黄瀬の高校の入学と同時に同棲を始めた二人。その時、笠松は黄瀬の呼び方を苗字から名前に変えた。同棲と言うことで、二人の両親にはもう付き合っていると報告してある。
まぁ、約10歳と言う年の差は、お互いの両親にとても驚かれたし、何より、黄瀬の両親より、笠松の両親が黄瀬に考え直した方が良い、と真剣に迫ってきたのは、ある意味記憶に新しい。
カシャ、としかめっ面も笠松に納められてしまう。
「って、ちょ、ユキさん写真撮ってる場合じゃないッスよね?何すかこの空気・・・あ、ジュンペーさんお久しぶりッス」
あっ、とようやく日向の存在に目が行った黄瀬は笠松からいったん離れると、ペコリ、と頭を下げた。それもこれも、笠松の教育(?)の賜物だろう。
黄瀬は、日向の事を笠松の従弟であるから名前で呼ぶ。それは、笠松も認めていることだし、何より従弟、と言うことはいずれ自分の親戚にもなるのだから、苗字で呼ぶのはおかしい、と黄瀬が言ったからだ。それが、笠松には嬉しくて止めろとは言えなかった。
あぁ、久しぶりだな、と沈んだ声で返す日向に、黄瀬はどうしたッスか?と首を傾げた。涼華、と呼ばれた黄瀬は笠松の膝の上に座りながら、笠松から事情を聞く。日向が、黄瀬にふっと誠凜の火神って知っているか?と尋ねた。
「・・・誠凜の、火神・・・?って、あぁ!知ってるっす!!」
こてっ、と首を傾げた黄瀬は、パッとひらめいた!と言うようにポンッと手を叩く。
「赤い髪の女の子ッスよね!ジュンペーさん知り合い何すか!?紹介してくださいッス!黒子っちに言っても中々紹介してくれなくて・・・」
「黒子!?黄瀬ちゃん黒子と知り合いか!?」
ガバッと机から顔を上げた日向は、机に手を突いて黄瀬に詰め寄った。若干引き気味の黄瀬の態度に、笠松は無言で日向のデコを押して椅子に戻した。
「えっと、中学の友達ッスけど・・・何か・・・」
「何かじゃねーよ!だいたい、大元の原因はそいつだ!」
日向から聞かされるそれに、黄瀬は目を見開く。
「新しい光がどうたらって、それを俺がたぶらかした!?そんなつもり俺にはねーよ!だいたいだ!好きなら好きって、火神本人に言いやがれ!俺にネチッこく火神から手を引けだの何だかんだと言う前に自分で行動しろ!男だろーが!!!」
バンッ、と言いたい事をはっきり口に出して叫んだ日向。黄瀬は自分ではないのに、思わずごめんなさい、と謝っていた。
何となくすっきりしたような顔になった日向はストン、と落ち着く。そして、笠松の従弟として良く似た、やる気の無い、いや、ぼんやりとしたような顔になった。
「って、悪かった。お前に当たっても仕方の無い話だったよな」
「・・・いや、いいッス。大丈夫。そういえば、火神ちゃんに告白されたって言ったッスよね?それで、ジュンペーさんは火神のことどう思ってるッスか?」
すき?きらい?と尋ねられた日向は少し困った顔つきになりながら、頭をかいた。
「はっきり言えねぇんだよなぁ・・・嫌いじゃねーけど、好きでもない。俺にとっては、ただの生徒なんだよ・・・」
そう言った日向だが、その瞳が一瞬かげったのを黄瀬は見逃さなかった。
「じゃあ、どうして火神だけ特別に勉強見てあげたりしてるんスか?」
「どうしてって、アイツは帰国子女だから日本語教えて欲しいって言われたから・・・」
「日本語なら、国語の先生に頼めって言えば良かったんスよ」
その手があったか、と今更気がつくあたり、日向もどこか抜けているというか何と言うか・・・。が、いや、でもなぁ、と考えている時点で、日向の心内、それも無意識に閉じ込めている部分では、もう結論が出ているのではないだろうか?
「じゃあ、ジュンペーさんは火神振った後、火神の隣に誰がいても許せるッスか?」
黄瀬がそれを聞いて、日向は黙り込んでしまった。
火神の隣に、俺じゃない誰か・・・?俺じゃない、誰かのために、アイツ笑うのか?
そう、考えてハッとなる。握り締めた手は、血が出そうなくらい真っ白になって、震えている。
日向は、クソッと悪態を付いて舌打ちをした。
「・・・それでも、俺と火神は教師と生徒なんだよ・・・」
苦しそうに呟かれたその言葉を最後に、お邪魔しました。と、そのまま日向は出て行ってしまった。それを不安げに見送る黄瀬。その顔に笠松はデコピンを食らわせた。イッタ!!と額を押さえて涙目になる黄瀬。笠松はその表情を見て、小さくため息を吐いた。
「馬鹿かお前は」
「何すかいきなり」
「んな、不安そうな顔するんだったら、最初から手出しするな」
そう言って、黄瀬を抱きしめた笠松。その腕に、黄瀬はゆったりと自分を預けた。
「だって・・・」
「だっても何も、アイツの問題だろ?それは、俺たちが口出ししていいことか?」
違うけど、でも、と黄瀬は唸る。唸ったところで、何の解決にもならないが。
それでも、黄瀬には放って置くことなんて出来なかったのだ。何せ、日向は笠松に自覚は無いだろうが、笠松の捨てられない、大切な人の一人なのだから。黄瀬が何か、力になりたいと思って当然といえば当然の答えだ。
おまけ【日火】教師と帰国子女な彼女のパロディ【女体化】
「センセイ!!」
後ろから、最近耳に慣れてしまった少女の声がする。振り返ると、やはり自分は間違ってなかった。赤髪の少女がこちらに走ってきていた。
「火神!廊下は走るな!!」
ピタッと止まって、競歩か?と言う勢いで歩いてくる火神に、日向は思わず笑ってしまう。近くまで来た火神に、笑うな!といわれるが、それが呼び水となって余計に笑ってしまった。笑いやまない日向は、火神にポカポカと殴られてしまうが、それだってどうしても可愛いものだった。
「悪い、悪い」
「センセイひでぇ!!」
「火神、敬語」
羞恥で顔を赤くして、涙目で見上げてくるのは、少し・・・いや、大分来るものがあったが、それをどうにか抑えて、火神を注意する。敬語に慣れない火神が、敬語を教えて欲しい、と頼んできたのだ。
「えっと・・・酷い、です?」
「そうそう、それだ。悪かったな、笑って」
ぽんぽん、と頭を撫でてやる日向。それを、火神は気持ちよさそうに受け入れる。
「センセイ、課題やってきたぜ!です!」
「そうか・・・火神、課題からもう一回言ってみろ」
「えっと・・・課題、やって、きました、です」
「おしい!です、はいらねぇ。きました、で大丈夫だ」
解かった!と笑顔で答える火神に、日向も笑う。二人、いつもの歴史準備室に向かいながら、ふと日向の頭の中に黄瀬の言葉が過ぎった。
こうして、笑うのも、他の誰かのものになってしまうのだろうか、と。そうして、どす黒い感情が競り上がって競うになって、舌打ちしそうになった。
「センセイ?どうしたんだ?ですか?」
準備室着いたぞ?と不安げにこちらを見る火神に、あ、あぁ、と返し、我に返って準備室の扉を開けた。
火神を招き入れて、後ろ手に扉を閉める。その隙に火神はいつもの定位置へと座る。その姿に、どういうわけかホッと何となく落ち着いた。
「・・・本当にどうしたんだ?センセイ、今日何だかおかしいぞ?です」
いつもなら、すぐに火神に追いついて、傍の椅子に腰掛けているはずの俺が、入り口から全く動いていないからだろう。火神は、座ったまま俺を伺うように見てくる。
「・・・悪い、考え事してた」
と、歩き出していつもの作業スペースの椅子へと座る。
「センセイ、アタシ、なんかした?」
「何で?」
どうして、そう考えるのかわからなくて、日向は首を傾げて火神を見た。その表情は沈んでいて、笑え、と思ってしまう。たとえ、今その顔をさせているのが自分だとしても。
「だって・・・センセイ、何だか変だし・・・、でも、さっきまで普通だったし・・・」
そう言って、火神用に置いてあったクッションをぎゅうっと抱きしめる姿に、あークソッ!と頭をガリガリとかいた日向は、今日何度目かになるかわからない、火神に、悪い、と謝った。訳の解からない火神は、頭にクエスチョンを浮かべながら日向をじっと見つめている。そんな火神に、日向は問う。
「お前、卒業まで待てるか?」
「・・・へっ?」
突然のことで、何を言われているのかわからない、と言った顔の火神に日向は目を細めて微笑む。
「お前が、卒業してそれでも俺が好きだって言うなら、付き合おう」
突然の、日向の返事に、火神は目を見開いた。そして、頭の中で整理して理解できた途端、待ってる、と叫んで日向に飛びついた。
「待てる!センセイ、俺、ちゃんと待つ!です!」
「そっか・・・」
抱きとめた火神。日向はそのまま、ぎゅっと抱きしめると、火神の耳元で、“好きだよ”とささやいた。
火神の顔が真っ赤になったのは、言うまでもないが、その顔は日向の肩にうずめられていて、誰も見ることは適わなかったが。
という、火神と日向の話が書きたかった!!!
本当に書きたかったのは、笠松と日向が従兄弟だって所だけなんだけどね!
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