カメラマンとモデルでパロディ8


今日、6月18日は黄瀬の誕生日である。

「ゆっきさーん、おはようございますッス!」

ガチャっと寝室の扉を開けて、黄瀬が入ってくる。
その声で、意識が浮上する。

「・・・きせ・・・」
「ユキさん、寝ぼけてるッスか?」

おーい、と黄瀬はまだ目の開かぬ笠松を覗く。
すると、素早く出てきた笠松の手に、腕を取られて、ベッドの中へと引きずり込まれた。

「たんじょーび、おめでとう」
「あ、ありがとうッス・・・、ゆ、ゆきさん、離して」

黄瀬は、眠っていて体温の高い笠松にドキドキする。
寝ぼけている、と黄瀬が解かるのは先ほどの呼び名もそうだけれども、一度寝る前、日付の変わる頃、一番におめでとうを言われたからだ。
きっと、笠松の頭の中には今日が黄瀬の誕生日、と言う事しか入っていないのだろう。

「ん〜・・・」
「ゆきさん!!」

笠松に相手をされるのは嬉しいのだが、今の状況は恥ずかしい。
思わず、大きな声を出せばパチッと笠松の目が開いた。

「おはよう、涼華。何してんだ?」
「・・・アンタがそれを言いますか!!」

真っ赤になって、叫ぶと笠松のホールドから抜け出して、プンスコと寝室を出て行った。
黄瀬の照れ隠しを理解している笠松は、クスクス笑いながらベッドから抜け出した。

着替えて、寝室を出れば朝ご飯のいい匂いが漂ってくる。
黄瀬に、笠松が声を掛ければ、さっきの不機嫌はどこへやら。ニッコニコと黄瀬は笑って笠松に答える。
笠松が顔を洗って、食卓に着くと黄瀬も座ってお互いにいただきます。と手を合わせた。

「涼華、今日夜は事務所集合な」
「うん、解かったッス」

付き合い始めた当初。笠松と黄瀬は二人っきりでお祝いをしようとしていた。が、黄瀬の誕生日を森山、小堀、早川、中村が協力して祝ってくれると知ったとき、申し訳なく思った二人。
そのため、誕生日の日は平日であれば夜を空けておく。二人っきりにはいつでもなれるのだから、と言うことで。

支度して、玄関先でお互いの格好のチェックをする。

「じゃあ、行って来ます!」
「おう、いって来い」

普段はしないが、今日は誕生日と言うことで、特別に黄瀬の頬にキスをする。
たった、それだけの行動なのに黄瀬の顔はぼんっ、と音が鳴るんじゃないかって位、真っ赤に染まった。
その様子が可笑しくて、笠松はクスクスと笑う。

「い、いいい、いってきます」

キスされた場所を押さえて黄瀬は慌てたように扉を開けて出ていった。
さて、と笠松は自分も仕事部屋からカバンを取って来て、誰もいない空間に行って来ます、と声を出してその扉を閉めた。







妙に機嫌のいい、笠松に森山が問うと今朝の出来事を話され、早く結婚しろバカップル、と返された。

「森山、今日の予定は?」
「・・・、今日は新宿のあの新しくオープンしたディスプレイショップの宣伝用の写真取り。それが終わったら、旅行雑誌の景観撮り。で、今日の仕事は終わり。終わったら、黄瀬の誕生日の準備するぞ」

それに、頷くと愛用のカメラを専用のバッグに入れて事務所を出た。
仕事は順調に進み、予定より早く終わった。
そのため、笠松は少しの暇な時間に外をぶらぶらと歩く。
そうして、笠松の感性に触れたものを撮り溜めていく。
笠松が、そうして撮った写真を一番に見るのは大抵黄瀬だ。
笠松は、黄瀬に見せて同じ世界を共有したかった。
そうして、黄瀬の表も裏も無い感想を聞いて、笠松は無意識に溜め込んだ黒いどうしようもない感情を昇華していた。
この日、笠松は少し裏道を散策していた。表通りを通ると人が多いため、裏路地を使うのは珍しいことではない。
そこで、目に入ったのは小さなアクセサリーショップ。
中に入ると、可愛いアクセサリーがたくさん並んでいる。

「いらっしゃいませー」

奥の工房になっているらしい場所から声が聞こえる。
が、これだけ可愛いものがそろっているというのに聞こえた声は、どうやら男らしい。
笠松は、黄瀬が居るとは言え、仕事で女性と関わる機会も増えたとはいえ、苦手なものは苦手だった。
それにしても、やる気の無い声だな、と自分を棚に上げて笠松は思う。

「あ、男・・・てか、お前海常の笠松か?」
「あ?」

ふっと、工房から出てきた男に目を向ける笠松。その男は、黄瀬よりも薄い金髪をしていた。
知り合いに、こんな奴いたか?バスケ関係者か?と頭を捻るが、出てこない。
まぁ、バスケから離れていればその記憶も薄れる。

「覚えてねーか。俺は、秀徳の宮地・・・3年のときにSFしてたんだよ」

そう言われて、アッと思い出す。

「3位決定戦のときの」
「そうだ、その時当たったろ」

なるほど、と笠松は頷く。
惜しくも負けてしまったが、全力を出し切ったいい試合が出来たと思っている。

「何で、お前ココで店してるんだ?普通に会社勤めしてると思ってたわ」
「あー、最初の一年は普通にサラリーマンしてた。でも、合わなくて止めた。それから、銀細工作ってるところたまたま見て、面白そうだと思って、みゆみゆにこんなの似合うんじゃないかってつくりまくってたら、そのまま店が開けた」

ざっくりとした説明だったし、笠松にはよく解からない単語も出たが、とりあえず解かった。

「でも、売れねぇだろ?こんな路地裏じゃ」
「良いもん作ってりゃ、その内売れるだろ」
「赤字だろうが、それじゃあ」

内職別にしているから平気だという彼に、商売気が無い事と言うことを思い知らされる。

「良かったら、宣伝してやろうか?」
「お前、記者にでもなったのか?」
「ちげぇ、俺はカメラマンだ」

カメラを掲げ、にやりと笑う。それに、あぁなるほど、と宮地は納得した。
そこから、一悶着あったが写真を撮ってそれを情報誌編集の知り合いに渡すことになった。
話が終わり、勝手に見て行けと言う宮地は工房へ戻ってしまった。
笠松は、ディスプレイに無造作に置かれているだろう商品に目を向ける。
一通り見て、気になった商品を手に取った。
それは、六角形の黄色い石の填った星のネックレス。
薄い黄色のそれは、光の加減によっては白にも見え、面白いと思った。

「宮地、これくれ」

そう言うと、会計をして包んで貰った。

「彼女にプレゼントか?」
「あぁ、誕生日のな」

幸せそうに笑った笠松に、宮地はニッコリ笑ってあっそ、と返した。
リア充爆発しろ、と言いたげな顔をしてる。

「・・・じゃ、また来ると思うわ」

そう言って、店を出た。形ばかりの、宮地のありがとうございましたー、と言う声が聞こえた。
次に来るときは、黄瀬もつれてこよう、とそう思った。







肝心の、誕生会とか・・・書く気力が無かったわ・・・。
ごめんな、黄瀬。誕生日おめでとう。

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