愛泣き愛
唐突に悲恋が書きたくなりました。そして、いつものようにぐだぐだってます。
救いなんて無くて、笠松が酷い人に見える。黄瀬が、ひたすらに暗い。
キャラなんて崩壊してナンボです。
本当は、誕生日の小説をもくもくもくと書き始めたかっただけなんだがどうしてか、こうなった。
笠黄だが、森←笠←黄って感じですね。
苦手な方バッグボタンで忘れましょう。
「・・・センパイ、別れましょ?」
たった、一言。
その一言で、俺たちの関係は終わりを告げた。
告白したのは、黄瀬からだった。好きです、付き合ってください。学校の屋上で、笠松を呼び出して、王道的に告白。その時、笠松は少し考えた後、良いぜ?と黄瀬の告白に答えたのだった。
けれど、付き合い始めてから、それまで衝突など無いと言って良いほどの関係だったのに、笠松と黄瀬の衝突は増えた。それでも、近くに居られれば、黄瀬は幸せだった。
けれど、ある日気がついてしまった。笠松の目が、自分を見てなどいない事に。黄瀬を透して誰を見ているのか。すぐにわかった。黄瀬も、美形と呼ばれる部類だが、この部活でも同じ美形に属している残念な先輩が居ることに。
解かったとき、黄瀬は誰かに相談しようかと思った。けれど、同じ部活の中でまさか森山に相談できるわけないし、そうしたら必然的に仲のいい小堀にさえ相談できない。2年の早川も中村も笠松を慕っている。相談、出来るはずがなかった。では、校外の人なら?
まず、浮かんだのは黒子。でも、黒子は笠松を買っているし、何より黄瀬の初恋の相手だ。相談できない。次に、面倒見のいい緑間。しかし、彼の近くにはいつも、相棒と称した高尾が居る。高尾は、笠松のファンだ。相談なんて、出来ない。
いっそ、青峰にでも・・・、と思いはしたが、解決できるとも思えなかった。赤司と紫原は、距離的に論外だろう。そして、考えれば考えるほど相談できる人間など居なくて、結局、傍に居られるだけで幸せ、そう、心に刻み付けて目の前の問題から逃げた。
きっと、いつかは。そう、叶いそうも無い願いを胸に抱いて、毎日眠るたびに、感情をリセットした。そうしないと、いつか壊れてしまいそうだった。
付き合い始めて、少し経って、笠松を黄瀬は家に招いた。その日は、ただ一緒に眠っただけだったが、黄瀬にとっては幸せな時間だった。誰にも、邪魔されず、笠松を独占できる、そんな時間。そう、思っていた。
目が覚めて、笠松の寝顔を見て、黄瀬はあぁ、幸せだなって笑った。が、それが涙に代わるのは一瞬のことだった。
「ん・・・、もり、やま・・・?」
寝ぼけていたのかもしれない。けれど、笠松は黄瀬の名前ではなく、森山を呼んだのだ。独占できている、と勘違いしていた。そう、黄瀬は涙が出そうになって笠松の腕の中から抜け出して洗面所へと足を向けた。
せめて、笠松の前では泣かない様に、冷たい水で何度も顔を洗って、気持ちを静めて鍵をかけた。
付き合えただけで、幸せなんだって暗示をかけて、目の前の問題から目を背けて、それでも、笠松を黄瀬は離したくなかった。好きになった人で、初めて手に入った人だったから。
黒子に一目惚れをして、叶わなくて、青峰に惹かれて、それも叶わないうちにキセキはバラバラになってしまって、恋なんてしても、叶わないと諦めていた。諦めたまま、黄瀬は笠松に恋をした。一目惚れや、一気に引き寄せられる感じではなく、ゆっくりと黄瀬は笠松に落ちて行った。だからこそ、離したくなかったし一緒に居られるだけで、付き合えただけで幸せだって思わなくちゃ、黄瀬はどんどん欲張りになって行ってしまう。
黄瀬は、ふと気がついた。そう言えば、笠松が森山を好きだと気がついてから、黄瀬と笠松の衝突は目に見えて減ったことを。それを思って、黄瀬はふっと笑った。そうして、自分が我慢して生きていけば笠松は手に入るし、つまらないことで、言い争いにならなくて済む、と。
そうして、過ぎた日々。黄瀬が、幸せと思って生きていた日々。段々と、回を重ねるたびに笠松の寝言は、森山の名前が減っていき、黄瀬は笑う。よかった、と。
それでも、大学へ進学した笠松と会える日々は限られてきて、寂しかったけどそれでも、別れようとは思わなかった。
唯一、我がままを通したのは一年で1度きり。6月18日だけは、わがままを言って一緒に居られる時間を作って貰う。他の、記念日をいろんな予定でつぶされても、この日だけはどうしても、黄瀬を優先して貰った。しかたねぇな、と面倒くさそうに言いながらも付き合ってくれた、我がままを聞いてくれた。それが、たまらなく嬉しくてまた1年耐えられると思った。
けれど、次の年。黄瀬の高校最後の誕生日。平日だから、部活終わりに会う約束をした。バスケ馬鹿っぽく、海常の体育館で。会って、バスケがただしたかった。久しぶりに笠松と黄瀬はバスケが出来ればそれで良いと思っていた。だから、“待ってます、ずっと”といえば、わかったと返事が返ってきて嬉しかった。けれど、下校時間になり、体育館を出なければいけない時間になり、学校から出て、校門で待っていても一向に笠松が現れる気配が無い。どうしたのかとスマフォを覗くも、そこに連絡は無い。着信も、メールも、ラインも。待っている間に、ポツリ、と雨が降り出してきた。そう言えば、今日の深夜から明日の昼辺りまで雨だって予報だっけ?と黄瀬は降り出した空を見上げた。大量の雨粒に体を濡らしながらも、その場を動こうとは思わなかった。ただ、減っていくスマフォの電池を見つめながら来ない連絡を、笠松をずっと待っていた。けれど、1時間たっても、2時間たっても笠松からの連絡も、笠松が現れることも無くて、スマフォのデジタル時計がまた一つ分を刻んだ。
そうして、そろった00:00。ごーん、ごーん、とどこかの鐘が鳴った音が聞こえた。
そして、黄瀬は空を見上げて思う。もう、だめだって。
雨にぬれて、一人歩く黄瀬。その口は、知らず知らず笑みを浮かべていた。
部屋に着いて、明かりの無い部屋の扉を開けると、後ろ手にオートロックの扉を閉めて、ふらふらと歩き出す。濡れたまま、ベッドへと転がった黄瀬。そのまま、枕にしがみ付くと泣いた。
「うぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
あの、雨の中。こらえてた涙が、溢れた。泣いて、泣いて、泣き叫んで、夜の夜中に、泣きつかれて眠った。思えば、笠松と付き合いだしてから、これが黄瀬の流した始めての涙だった。
次の日、黄瀬は案の定熱を出して倒れた。笠松から、昨日の謝罪のラインが届いていたが、それを読む気にはなれなくて、黄瀬はメールを開くと、母親にSOSを送った。
そして、復帰したときには、あの日泣いたおかげか、黄瀬はすっきりとしていた。前より笑えるようになった気がする。・・・そう、気がするだけで、黄瀬の体は笑い方をすっかり忘れていた。能面のように、古橋のように動かなくなった黄瀬の表情。何かあったのか、そう思うには十分すぎて、でも誰も何も聞けなかった。早川にいたっては、黄瀬に何かしようとするたび、中村に全力で抑えられていた。
そうして訪れたのは、7月29日。そう、笠松の誕生日だ。毎年、誰か彼かが男前で頼りがいのある兄貴分な笠松の誕生会を企画するらしい。黄瀬が祝いたい、と言う前に笠松の誕生会をするから、お前も来るか?と誘われた。今年もそう。誰かが企画した誕生会が、廻り巡って黄瀬の下へとお誘いが来る。それに、黄瀬は二つ返事でOKを出す。
その日は、夏なのに頭がいかれたのか、鍋をしようと言うことで水炊きをしながら笠松の誕生を祝った。
皆が、誕生日プレゼントを渡していく中、黄瀬はぼんやりとその光景を見つめていた。比較的仲のいい高尾や、黒子が声を掛けようとも、その表情が動くことはなく、黄瀬はぼんやりとしたままだった。声は明るくいつもどおりなのに違和感がぬぐえない。そんな中、黄瀬に巡ってきたプレゼントを渡す瞬間。
黄瀬は、プレゼントを物を先に笠松に渡す。それを、きちんと笠松が手にしてから言う。
「あのね、センパイ。それは、プレゼントの単なるおまけッス。俺の本当のプレゼントは、俺が居なくなることッス」
その言葉を聴いて、周りはシンと静まり返った。高尾は、やだなぁ、黄瀬。そんな冗談言っちゃって。と、無理に笑っているけど、黄瀬の目は本気で、その上言葉でも冗談じゃないと返されてしまった。
「だってね、俺。センパイが俺のこと好きじゃないの知ってるっす。それでも、縛り付けてたのは俺ッス。いつか、センパイ俺のこと好きになってくれるんじゃないかって、あの日、告白受けてくれたから、ずっと思ってた。期待してた。けど俺のこと、バスケ意外ならどうでも良いんでしょ?ねっ?だって、センパイ、俺のこと何にも知ろうとしてくれない。俺、どんなにセンパイのこと知りたくても、教えてくれない。ねぇ、センパイ。俺、もうだめだって思っちゃったッス。ダメだって思ったら、おしまいだと、俺は思うッス。だから・・・センパイ、別れましょ?」
これが、俺からの誕生日プレゼントッス。そういった黄瀬。その瞳を見つめ、笠松は暫くしてから、わかった、とそれだけを告げた。その瞬間、悲しげに、でも黄瀬は久しぶりに表情を動かして静かに笑った。
その場の雰囲気を壊したことだけ、謝罪をして黄瀬はその場を去った。
残された笠松の手の中にある黄瀬からのプレゼントは、黄瀬の家に置いてあった笠松の私物だった。そんなに量は多くないけれど、確かに笠松が黄瀬と居たという証だった。自然と笠松は、舌打ちした。
数年後、一冊の雑誌を手にとって開く。そこには、今話題のモデル兼俳優の黄瀬涼太特集としてインタビューが載っていた。
―――次の質問なんですが、この間、週刊誌に熱愛報道が載りましたが、すぐさま否定なさりましたよね?どうしてですか?
黄「ありえないからですよ」
―――ありえない、とは?
黄「俺、きっとこの先も、もう恋をすることは無いんだと思います。恋愛って、向かないんですよ。だから、ありえないんです」
―――もう、とは以前お付き合いされていた方がいらっしゃったのですか?
黄「居ました。今でも、俺はその人が大好きだけど、俺が耐えられなくなって別れました」
―――意外です。黄瀬さんから別れを告げられたとは!
黄「俺も、若かったって事ですよ(笑)」
―――いやいやいや、今でも十分お若いですって!さて、次の質問に参りましょう。・・・
笑えなくなっていた後輩は、自らの卒業と同時に引越し、携帯を変え、モデルの活動も休止して、消えてしまった。元から、居なかったかのように何の痕跡も残さず、消えてしまった。ただ、残ったのは後輩の載った雑誌と、自らの記憶、そして後輩から来たウザイぐらいにぎやかなメール。
そんな、後輩が何があって何を経たか解からないが、こうして笑っていられるようになったのだから、それを見守ろうと思う。
End
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