どうしたってどうにもならないこともあるもので


モブがたくさん出ます。黄瀬が女体化してます。
笠松が、最低(?)かもしれません。見る人によります。
黄瀬がわがままかもしれません。見る人によります。最低に見えるかもしれません。
全体的に、暗い?と思います。暗くしたかった。死ネタありです、苦手な方ご注意ください。


























結局、私と先輩は仲違いなんてそんなに長く続くものでもなくて、ひょっこり仲直りして、隣にいた。子供が生まれても、それは変わらなかった。先輩の奥さんとも、仲良くやって、本当に幸せな時間ばかりが過ぎていった。でも、それでも、最高に幸せな瞬間などやってこない。なぜなら、先輩は、絶対に私を見ないから。私が、一番近くに居る、夢を見ないから。だから、私の人生で一番最高に幸せな瞬間なんてやってくるはずが無い。

けれど、だからって、こんな未来を望んでいたわけじゃない!

「椿さん・・・」
「りょーちゃん、見つかっちゃったね」

白いベッドの上で、薄っすらと微笑む先輩の奥さん。患者の衣服にカーデガンをかけた姿は、どこか青白く見えて、私は泣きそうになった。

「何で!?」
「何が、かな?」
「どうして・・・先輩を置いていくの?」

奥さんは、末期だった。助かる見込みも無く、毎日鎮痛剤と抗がん剤を何時間も点滴されてる。
私の、問いかけに奥さんは困った顔でごめんね?と呟いた。先輩と、奥さんが結婚するとき、秘密裏に約束したのだ。絶対に、先輩を置いていかないって。一番傍に居る権利を貰ったなら、そのまま最後まで傍に居て欲しい。と。そうしたら、諦められる気がした。心の中の、希望を折れる気がしてたのに。

「謝るくらいなら、生きてよ!」

どうしようもない我がままをぶつけてしまう。そんな自分が嫌で、嫌でしょうがなかったけど、溢れ零れた涙も言いたくもないのに出てくる言葉も、とめることなんて出来なかった。
その度に、ごめんね。と謝る奥さんに胸が締め付けられた。

「ねぇ、りょーちゃん」

漸く、私の言葉が止まって少しした所で、奥さんが話す。
なに?とベッドにつけていた顔を上げて奥さんを見る。

「私が、居なくなったら幸男さんと露希のこと、よろしくね」

その言葉を聴いた瞬間、バッと立ち上がった。

「どうして、そんな事言うの!?」

叫んでも、奥さんは悲しそうに笑うだけだった。そんな姿を見たくなくて、私は病室を飛び出した。
どこに行くでもなく、目的も無く走り続けて、気がつけば自分の家の近くまで帰ってきていた。
自分の帰省本能が犬並みで、無性に笑えた。笑いながら、歩いて帰る。

「ただいま」
「おかえり・・・ママ?」

出迎えてくれたわが子をぎゅうっと抱きしめる。我が子の手が、そんな中、頬をぺちぺちと叩く。

「いたい、いたい?」

そうして、ようやく自分が涙を流していることを知った。

「そうッスね・・・痛いね・・・」





それから、数ヵ月後。先輩の奥さん、椿さんは病院で静かに息を引き取った。
先輩は、泣きながらも葬儀の時はしっかりしていたし、大丈夫、そう思った。
けど、数日後、先輩の家に顔を出せば、そこは酷い有様になっていた。奥さんが亡くなった事で、先輩は意気消沈と言った感じでどうにか保っていただろうバランスが崩壊していた。
見かねた私が、先輩の家に上がって勝手に掃除と洗濯、料理などの家事をやり、先輩の娘と私の息子そして私、センパイで食卓を囲んだ。
お腹いっぱいになった子供たちが寝たあと、センパイと向き合った私は、センパイの頬を思いっきり引っ叩いた。小気味いい音を立てて、シンッ、とそのまま静かになる。

「センパイ、私がどうしてセンパイを叩いたか解かるッスか?」
「・・・解かってる。悪い・・・」
「悪いと思ってるならしっかりしてください!!センパイ一人ならまだしも、子供が・・・露希ちゃんが居るんでしょ!?」

バンッ、と机を叩いて、府抜けた先輩に講義する。が、センパイも黙ったままではなかった。

「解かってるよ!!でも、ダメなんだ!露希が居るから、俺がしっかりしねーといけねぇのは解かってる!!けど・・・」

そう言って、グッと下唇を噛み締めたセンパイの姿に、奥さんがどれだけの存在だったか、改めて思い知る。
泣きそうに、潤んできた顔を俯かせて、グッと力をこめて押しとどめる。

「・・・誰かに、頼ればいいッス」

ポツリ、そう零す。

「黄瀬・・・?」
「誰かに頼って、露希ちゃんの居ないところで泣いて、清算つけて、露希ちゃんに向き合うべきなんじゃないッスか?」

その役目は、私じゃないだろうけど。そう、思いながらも言葉を続ける。

「センパイ、椿さんが亡くなってから、ちゃんと泣いてないでしょ?」
「・・・っ、」

何で?と驚いた顔をした先輩に、笑って返す。でも、全然笑えてる気がしなかった。
センパイは、確かに葬儀で泣いていた。けれど、それでもセンパイは喪主としてさまざまな事に目を通して、色々駆けずり回っていた。本当に、奥さんだけを思いながら泣いては居ないと、そう思った。

「そんなんじゃ、何時までたっても中途半端ッスよ」

センパイに、こんな事いえる立場じゃないのかもしれない。けれど、言わずには居れなかった。
辛そうにしているセンパイも、心配なのに、無理して笑う先輩の娘も、これ以上見たくは無かったから。
けれど、自分が踏み込んではいけないところだったかもしれない、と私はごめんなさい、と席を離れようとした。
が、その腕をセンパイに掴まれて立ち去ることは出来なかった。そのまま、ギュウッと抱きしめられる。お腹の辺りに顔をうずめるセンパイ。子供みたいだ、と見当違いな事を思いながらどうしようもなくて、動くことも出来なかった。
段々と、お腹の辺りが湿っていることに気がついて、声も出さずに先輩が泣いていることに気がついた。
きっとどうしようもない、悲しみを押し殺すことも出来ずに、でもさらしだすことも出来ないから、私を抱きしめて泣いているんだと思う。そんなセンパイの頭を、息子にしてあげるみたいに、ゆっくりと撫でた。
しばらくすれば、何だか重たくなったな、と思ってセンパイを見れば、先輩はすうすうと寝息を立てていた。
小さく噴出して、子供みたい。と笑いながら、センパイを座っていたソファーへと転がす。
眠って、緩んだ指を解くと、勝手に家捜しして、毛布を見つけると、それを掛けてあげる。

「・・・センパイ」

無防備なセンパイの顔を見ていると、キスしたい衝動に駆られたけど、そんなこと出来なくて、ギリギリのところで額に押し当てて、離れた。それが、むなしくて、辛くて、泣きたくなってその場を離れて泣き崩れた。
本当は、声を上げて好きだといいたい。泣き叫びたい。けど、それを私がして良い立場なのか?そう考えると、声を押し殺して一人で泣くことしか出来なかった。


その後、色々あったけど、どうしようもなく育児能力がセンパイは乏しくて、高校のときのキャプテンシーやら行動力やらはどこに行ったのか、と心配になった。
そんな中、はい、と渡された合鍵。見かねた私が、せめて夕飯だけでも、と一日一回、センパイの家に行っていたのが原因だろうか?帰りはいつも遅くなるから、息子を背負って帰るけれど。

「え?」
「お前さ、来てくれるのはありがたいんだけど、俺が帰ってきてからお前来て、料理とかするじゃん?だったら、合鍵渡しておいたほうが、何かと便利だろ?」

いやいやいやいや、と押し返す。
受け取れない。そんなもの、受け取ってしまえば自分がどうなるかわからない。
と。声には出さず、適当な理由をつけて返す。
が、センパイも引かない。

「じゃあ、いっそのこと、この家に住んだらどうだ?」
「はぁ!?アンタ、何言ってるの!?」

本当に、何を考えているかわからない。

「そうだ、それが良いな。幸い、部屋も余ってるし」
「いや、だから!第一、そんな問題じゃないでしょ!?」

頭を抱えたくなった。自分には息子も居るし、第一まだ、センパイのことが諦められないのだ、一緒に住んでどんなボロが出てくるか解からない。

「じゃあ、何だよ?」

あーもう!と私は、落ち着こうと深いため息をついた。

「・・・はぁ、良いです。百歩譲って、合鍵は受け取ります。けど、一緒には住みません!」

これ以上の問答を避けるために、私はセンパイの言うことを少しだけ受け入れることにする。すべて否定するから食いつかれるのであって、少し受け入れたら何とかなるんじゃないかって思って。

「何で?」
「何でって・・・、今だって押しかけ女房みたいなことやってますけどね!元々、夫婦でもないし!アタシとセンパイは呼び名の通り先輩後輩で、ここに住む意味も義理も無いッスよ!!」

勢いで言っちゃったけど、改めて自分とセンパイの関係を口に出すとむなしい。
それに、少し歯を噛み締めると、合鍵を奪い取って帰ります、と息子を背負ってセンパイの家を出た。













Side KASAMATHU

妻が死んで、黄瀬が同じ片親だからと世話を焼いてきて、10年。俺の娘も、黄瀬の息子も大きくなった。その分、黄瀬は仕事に打ち込むようになり、比較的残業の少ない家に息子を預けるようになった。もともと、学校帰りはいつも家に寄って夕飯を食べていく、そんな習慣になっていたため、それが泊まりになったところで、俺はもとより、娘も、黄瀬の息子も、さして問題は無かった。それでも、黄瀬はあの日の約束通り、俺の傍から居なくなったりしないし、ずっと、そう、喧嘩してもずっと傍に居てくれた。黄瀬は、本当にいい女だと思う。妻が死んで、黄瀬がこの家に来るようになってから、それがよく解かった。自分の家で家事もあるだろうに、俺の家に来ては家事を炊事をして、俺の娘を本当の娘のように可愛がってくれている。俺と俺の娘の事を、本当に大切に思って、時に怒ったり、泣いたり、本当にせわしない奴だとも思う。
そんな女が、一人で子供を産んで、育てているなんて、黄瀬を孕ませた奴を殴っても、殴っても、俺の気は済まないと思う。たとえ、それが黄瀬の望んだ結果だとしても、だ。
ブーブー、とスマフォがメールが届いたことを告げる。
開けば、それは今まさに思っていた黄瀬からだった。内容は、今日飲み会があるから、息子を預かって欲しい、との事。
特に何があるわけでもない、いつものことだった。俺は二つ返事で黄瀬にメールを返すと、再びスマフォをカバンにしまい、仕事を再開した。
ごたごたとした仕事を片付けると、家に帰る。明かりの着いた家に入り、ただいま。と声を掛ければ、パタパタと走ってくる愛娘の姿。

「おかえりなさい!お父さん!」
「あぁ、ただいま。優希君は?」
「ゆうくんなら、リビングにいるよ?」

そうか、と言いながら中へ入っていく。ちょうど、テレビの前の机に宿題だろうプリントを広げている黄瀬の息子の姿が目に入る。俺が入ってきたことに気がついたのか、後ろに居た俺を振り返った。

「あっ、おかえりなさい、おじさん」
「ただいま。そうだ、黄瀬、今日遅くなるみたいだから家に泊まれよ」
「あっ、そのつもりです。お邪魔しマース」

なんと言うか、黄瀬の息子はノリが軽い。そう言うところは、黄瀬に似ている。が、俺が半分育てたようなものなのか、俺にも似ているところがあって、驚く。ものの考え方なんてそっくりで、笑ってしまう。
が、腐ってもモデルの息子、そして読者モデルもたまにしているだけある。女にもてるらしい、ものすごく。同じ学校に通っている娘から聞く限り、酷くモテている。が、本人が取り合わない、らしい。何でも、母さん以上じゃないと・・・とか言ってるらしい。黄瀬以上って、そりゃどんな女なんだろうか?一度会ってみたいが、会いたくない気もする。
それから、娘の作った夕飯を食べて、娘と黄瀬の息子が順々に風呂に入る。そこで、俺は一息はいた。
黄瀬の居ないこの空間は、少し窮屈に、暗く感じてしまい、それを吹き飛ばすためにカシュッ、と開けた缶ビールを煽る。

「お父さん?もー、ママがいないとすぐそれなんだから!」

娘は、黄瀬のことを何時の頃からだっただろうか?ママと呼び始めた。亡き妻のことは、お母さんと呼んでいたのにも関わらず、だ。何か意味があるのか?と考えたことも在ったが、娘の考えはどうにもわからなくて、考えることを放棄した。
女の子は、女に。それで、黄瀬に任せたりしているが、それがいい方向に向かってよかったと思っている。
いい娘に、育ったと、本当にそう思う。

「おじさん、俺たちもう寝るから」

後ろから、眠そうな目をした黄瀬の息子がやってきて言う。何となく、ぬぼっとした印象を受ける。

「えっ?ちょ、ゆうくん、私寝るなんて言ってない」
「いいから、お前明日朝何あるか忘れたのか?そろそろ寝ないとやばいぞ」

黄瀬の息子のその言葉に、あに点をつけたような声を一瞬出して、お父さん、おやすみなさい、と娘は自分の部屋に飛んでいった。その様子を俺も、黄瀬の息子も呆れながら見つめていた。女の子ってのは、こういうもんなのか?黄瀬も、少しそう言うところがあるから、つい、同じように考えてしまう。

「それじゃ・・・、お酒も程ほどにしてくださいね。おやすみなさい」

まだ、一本も開けてないというのに、娘も黄瀬の息子も心配しすぎではないか?とクツクツ笑いながら、解かった解かったと、返事をおざなりにして、黄瀬の息子が泊まりに来た時に使う部屋へと押しやった。
それから数時間後、ぼんやりとテレビを見ていた俺の耳に、玄関の外でガチャガチャやっている音が聞こえた。
仕方無しに様子を見に行ってみれば、酔っ払った黄瀬が玄関の外に見える。
はぁ、とため息をついて開けてやると、黄瀬はなだれ込んできた。

「しぇんぱーい、たらいまー!!」
「酒クサっ!!」

何が可笑しいのか、ケラケラと笑っている黄瀬を見て、再びため息が出た。

「たっく、しっかりしろよ」

と、黄瀬を玄関の内側に引きずりこむ。マネージャーに送って貰ったはずだが、そのマネージャーの姿が見えない。もう、帰ったのだろう。こんな状態の黄瀬を無事につれてきてくれたことに感謝したかったが、それは後日となりそうだ。

「ねー、しぇんぱい?あろね?わらしっれ、いいおんららんらっれ!あははっ、ろこがいーおんららんれすかれ?」
「おい、黄瀬?」
「あらし、さいてーなころしかしれらいろに」

そう言って、笑っていたと思ったら泣き出した黄瀬に、俺はどうする事も出来なくて、とりあえず抱えて靴を脱がし、そのまま、黄瀬をリビングへと運ぶ。
時どき、しゃくりを上げる黄瀬の背中をぽんぽんとあやしながら。

「あらしらんれ、らめらめらろに・・・」
「・・・お前は、ダメなんかじゃないだろ。立派だよ」
「ろこが!!」

慰め方を間違ったのか、黄瀬は今度は俺に向かって激高し始めた。それを、ひたすら時々降って来る軽い暴力と共に受け流す。
その内に、すうすうと寝てしまう黄瀬。その黄瀬の頭を撫でてやると、起こしてしまったのか、後ろから、おじさん?と声がかかる。

「優希か、悪い起こしちまったか?」

その言葉に、黄瀬の息子は首を横に振る。

「トイレに起きただけ。・・・母さん、帰ってきたんだね」

それにあぁ、と返せば、黄瀬の息子は黄瀬を見て微笑む。そして、俺に、母さんがいつも迷惑かけてごめんなさい、と謝ってくる。が、それはお互い様だから、と返せばそうですねと笑う。
それじゃ、と黄瀬の息子はそのまま部屋へ戻ってしまう。

「俺も寝るか」

そう、呟くと俺は黄瀬を抱えて黄瀬の使っている部屋へと入る。
黄瀬が使っているといっても、その部屋にあるものは極端に少ない。モデルであるため、普通の女よりも荷物が多そうなイメージがあるが、実際に多いが、それが家に増える事は無い。むしろ、黄瀬の息子のほうが黄瀬よりも多く物を置いている。それが、時々たまらなく寂しくなる。
そんなことを考えながら、黄瀬が苦しくないように、と何度してもなれない手つきで、黄瀬の衣服を脱がして着替えさせていく。が、今日は服を脱がせようとしたその手が止まる。
黄瀬の、服にギリギリ隠れる部分に、赤く丸い印が一つ、残されていたからだ。
それを見た瞬間、カッと目の前が赤く染まった。気がつけば、同じ場所にキスして、吸い上げていた。
その刺激に、吐息を漏らす黄瀬。それが、どうにもとめられそうも無くて・・・、心の中で娘と黄瀬の息子に謝罪しながら、俺は黄瀬に始めて手を出した。
俺も、酔っていた勢いがあるのかもしれない。ただ、ただ夢中で黄瀬をむさぼって、我に返った。
幸いにも、黄瀬は眠ったままだったから、後始末をしていたたまれなくなった俺は、俺の部屋に帰り布団を被ってさっさと寝てしまった。罪悪感が半端無かったが、それ以上に満たされたことも事実で、次の日、どう黄瀬に顔を見せたら良いのか、それだけを悩みながら、眠りに着いた。
けれど、次の朝、起きてみれば黄瀬は何にも記憶は無く、俺はホッとため息をついた。
が、俺は知らない。黄瀬の体に触れたのが、これが初めてではないことも、再び黄瀬の体の中に宿ってしまう命のことも。
この時の俺は、まだ知らない。











「三ヶ月過ぎてますね」
「へっ?」

このとき、私の顔色はまさに真っ青だったに違いない。

END

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