酔っ払ったキス魔な横澤さんが見てみたい!
丸川で飲み会をするぞ、という井坂の突然な思いつきで、特に用事の無い者は強制参加の飲み会が開かれた。そこで、やはり酒を酌して回るのは編集の連中が営業にである。無駄に見目のいいエメ編は特に人気である。見た目が良いって言うのは得だ。ある意味、だが。
「うわぁあああああ!!!横澤さん、待った待ったぁああああああ!!!」
木佐の叫ぶような声がして、振り返る。すると、高野の目に、小野寺と横澤の姿が目に入る。
ただし、キスをしている、という動詞がつくが・・・。
「な・・・、横澤?」
その姿を見てから、数秒固まった高野は我に返って状況を整理しだした。その間に、どこからかシャッター音が聞こえてくるが気にしている暇は無い。
そして、そんな高野の目に、横澤の目の前に置かれているジョッキが留まる。そのジョッキと薄い黄色のドリンクを見て、叫ぶ。
「誰だ!?横澤にハイボールなんて出しやがった奴!!?」
ハイボール、と言うより横澤は大抵の酒には強いが、ウィスキー関連にだけは変な酔い方をする。
・・・今の状況から解かるだろう。キス魔になるのだ。大学のとき、一度飲ませて、そうなってからは、絶対に飲むなと忠告してきた。エメ編の部下にも、横澤にウィスキー関連だけは絶対に出すなといい含めてあったはずだ。
「律っちゃんだよぉ!」
「小野寺です」
「律っちゃんだね」
エメ編の三者三様の答えに、未だ被害にあっている小野寺を見て、高野は盛大にため息をついた。
そういえば、高野は入りたての小野寺だけには横澤にウィスキー関連を出すなといい忘れていたのだ。
聞こえてくる、水音と小野寺の吐息からして、しているのはディープ。
嫉妬するどうする、以前にこの後、小野寺と言う生贄がもたなくなったらどうしようか、そのことを考えていた。
が、考えがまとまる前に、小野寺はギブアップし、渾身の力で横澤を引き剥がすと、ぜーぜーと床に手を付ながら息を吐いている。
「・・・おのでら、へばったのか?」
少し、寂しそうな顔をして、小野寺を見る横澤。そして、ムッとした表情になった横澤。そこに、羽鳥が横澤に酔いを醒ましてもらおうと、水を持って近寄る。
「バッ、無闇に近寄るな羽鳥!」
が、その忠告も遅く、羽鳥は横澤に話しかけていた。
「横澤さん、飲みすぎですよ。水飲んで、酔いを・・・」
「んー?こんどは、はとり、してくれるのか?」
えへへー、と子供っぽく笑いながら、両手を羽鳥の首へ回す。その仕草はエロス漂う横澤。ちがっ、と開いた羽鳥の口を横澤が塞ぐ。
再び聞こえてきた水音に、高野は頭を抱えた。流石に、羽鳥から吐息が漏れることは無かったが、羽鳥はふさがれた当初固まっていた体を動かして、横澤を引き剥がすと未だに動けていない小野寺の手を引っ張り、横澤の傍から対比した。
それについても、横澤は面白くなさそうな顔をした。
羽鳥は、少し暗くなった表情で、何故か「負けました・・・」など、訳の解からないことを言っている。
そんな羽鳥を、小野寺が慰めている。が、小野寺の先ほどの歩みを見る限り、腰が抜けているんじゃないかと思う。
とりあえず、高野は横澤に近づかないように周りに言い含め、横澤の隙を突いてハイボールの入ったジョッキを奪う。
が、そこで面白そうだと出てくる人を忘れていた。
「何だー?横澤、面白いことになってんじゃん」
「ちょ、井坂さん!?」
いつもの食えない顔で笑いながら、井坂は横澤に近づいていく。
「あー、いさかしゃん」
「呂律回ってねぇ」
心底楽しそうに笑う井坂は、俺ともキスしようなー?と横澤に、自分からキスを吹っかけていた。それを、横澤は嬉しそうに受け入れた。が、井坂も耐え切れなくなって、唇を離す。
「はい、おしまーい」
「んー、もっと、しよう?」
「えーっと、ほら、次は木佐が相手してくれるってよ?」
ふっと、井坂は周りを見回して、パッチリ目が合った木佐にその照準を向けさせる。木佐は、笑いながらまじで!?と、内心叫んでいた。横澤は、ほんとうか?と首を傾げながら立ち上がって木佐に近づくと、迷いも無くキスを始めた。何故、ディープばかりかましているんだろう、このキス魔は。そう、思わなくも無い。確か、と大学の記憶を探れば、その時はまだ近くにいた人間の頬や首にくまなくキスしていたような気がする。面白がって、キスし返す奴も居たような・・・と高野は思う。
「わるい、遅くなった・・・って、これ一体どういう状況?」
遅れてくる予定だった、桐嶋さんが到着して、宴会の会場の異様さに首を傾げた。まぁ、それはそうだろう。今は、横澤を中心にクレーターのようになっているのだから。
その、桐嶋の声に横澤は反応して木佐から唇を離す。
「んぁ、きりしましゃんらー」
本格的に、呂律の回らなくなってきた横澤。ふらふらしながら、桐嶋にダイブした。
「きりしましゃん、きすしよーぜ?」
「はいはい、後でなー」
横澤の口を上手く押さえながら、桐嶋は近くにいた高野に目を向けて困惑した表情を浮かべる。
そんな桐嶋に、高野は簡潔にあったことを告げる。
その間も、横澤は不満そうに、隙あれば桐嶋にキスしようと仕掛けている。が、桐嶋ははいはい、と子供をあやすようにかわしている。
が、いい加減うっとうしくなったのか、解かったわかった、とためらいも無く横澤にキスする。
横澤は、これ以上なく嬉しそうにそれを受け入れて、吐息を吐いている。
暫く続いたそれは、がくっ、と崩れた横澤の足で終わった。
危ない、ととっさに受け止める。が、当の本人である横澤は満足そうに笑っている。
「やっぱり、きりしましゃんとのきす、いちばんきもちー・・・」
引っ掻き回すだけ引っ掻き回した横澤は、最後にそれだけ言い残すと、すぅすぅ、と寝息を立てて寝てしまった。
「人騒がせな奴・・・」
小野寺のせいだけど、と内心呟く。木佐は、いつの間にか移動していて、羽鳥と小野寺の元にいた。まるで、被害者の会だな。何て、ぼんやり高野が思っていると、桐嶋が目の前にいた。
「エメラルド、あそこまで被害受けているのに、お前が被害なしって言うのは不公平だろ?」
そう、面白そうに笑った桐嶋。さっきまで横澤としていたように、高野にキスを仕掛けていた。
高野は、抱えている横澤のせいでろくな抵抗も出来ず、そのテクに腰が抜けるまでむさぼられた・・・。
終わる。
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