いつまた任務を頼まれてもいいように私はあれから非番の日には流魂街で修行している。浦原さんも私の修行に付き合ってもらっている。彼はとても強い。その強さは隊長格に筆頭するのではないかと思わせるぐらいだ。気になって調べたが隊長、副隊長ではなく出てきたのは二番隊三席という肩書きだった。二番隊と言えば隠密機動のお抱え部隊。それは強いはずだ。それを知ってから私は浦原さんと上手く話せなくなった。なぜなら、二番隊の三席殿が四番隊の平隊員である私の修行に付き合わせてしまっていることがとんでもなく悪く思えたから。
「あああ、どうしよう…!」
今現在の状況を伝えると、胸に抱える書類を二番隊に持っていけと先輩に言われて二番隊隊舎の前まで向かっているところだ。二番隊隊長である四楓院隊長や副隊長の大前田副隊長に三席殿に修行を見てもらっていると知られていたらきっといい思いをされていないはずだ。怒られる…!
二番隊隊舎前であわあわしていると今は会いたくなかった浦原さんが出迎えてくれた。
「千綾サン、こんにちは」
「浦原三席…!!!」
「やだなァ。三席だなんて、いつも通りでいいっすよ」
「いや、そんな、わけには…!」
「なら喜助さんでもいいですけど」
「えっ、いや、そんな…!…う、浦原さんと呼ばせていただきます…」
さっそく究極の二択を選ばされてしまった。どうしたんすか?といつも通りに話してくれる彼に少しだけ安心して理由を伝えた。
「書類、夜一さんにですか」
「はい。隊長宛ですので」
お渡し頂くようお願いしようとすると彼は何を思ったのかにこにこ笑みを浮かばせて、ちょうど良かったっす、と言葉を漏らした。良かったっす?その言葉に意味がわからず疑問に思っていると急に手を引かれた。
「案内しますよ」
まさかこんな四番隊のひよっこが二番隊の隊長にお目にかかれるとは。思いがけないことに緊張した。いいんですか、いや、浦原さんから渡して頂ければ、と何度も彼に問いかけるが彼は聞く耳を持たずずかずかと廊下を歩いていく。手を繋いでいるのは私が逃げないためだろう。よく私のことを知っている。何も答えてくれない彼に私は強く手を握り返してしまった。
「夜一さん、入りますよ」
「し、失礼致します…!」
名前も所属も名乗らず隊首室に入ったのはこれが初めてだ。
「おー、喜助か。なんじゃその子娘は」
「千綾さんっす」
「四番隊の高峰千綾です…!書類を届けに参りました!」
浦原さんがいつも通り四楓院隊長と話すから逆に私は背筋が伸びてしまう。やっぱり浦原さんもすごい人なのだと実感させられてしまう。
「おー!お主が千綾か!」
四楓院隊長は私のことを知っていたみたいで不思議に思いちらりと浦原さんを見た。困ったように笑う彼をよそに四楓院隊長は盛大に笑った。
「喜助が暇あるごとに隊舎を抜けるから何事かと聞けば修行を見とると話すもんじゃからどんな奴の修行を見とるんか気になってのぅ」
「え、それってまさか、」
「夜一さんそれは言わない約束っすよ」
業務中に抜けていたってことですか?と、尋ねる前に浦原さんの言葉でそういう事だったのだと理解した。頭から血の気が引いてくのがわかった。
「す、すいませんでした!!!大事な三席を…!」
「なに、そんなこと気にせんでええ。喜助が勝手にしとったことじゃ。儂は気にしとらんが」
「が…?」
「修行を終えた喜助が楽しそうに話すもんじゃから、どんな女子が気になって仕方なかったんじゃ」
楽しそうに話す、とは一体どういう意味なのか。弱いんですよこの子、とか話されていたらそれはもう笑い者なのだけれども。
「夜一さん、この子本当に真面目な子なんっすからあまりからかわないであげてください」
「儂は事実を言っとるだけであって、からかっとるつもりはないがのぅ」
二人の会話にも入っていけず私はキョロキョロしてしまう。いつにもなく楽しそうに話す浦原さんの様子を見れば四楓院隊長とは気が合うのだろう。傍から見ていても仲の良さが伺える。
「喜助の修行はどうじゃ?こいつは手加減というものを知らんからの」
「浦原さんはとてもお強いです…。私の修行に付き合わせてるのが申し訳ないです」
「千綾は強くなりたいんじゃろ?違うんか」
「強くなりたいです」
「それならそんな小さいこと気にするな。喜助が愛想を尽かすかどうかはわからんが、」
そんなことありませんよ、と浦原さんが優しく制した。
「僕が彼女を強くしてみせます」
どうしてそんなこと、言ってくれるのか。私にとっては不思議でならなかった。