どうしてですか?
二番隊の隊舎前まで彼女を送っていくと不意に聞かれた。なんのことがわからず尋ねると俯きながら、修行のことです、と答えた。

「私がすごく弱いこともわかってます。そんな私をどうして二番隊の三席である浦原さんが修行に付き合ってくれているのか…。その、申し訳なくて」

彼女はとても真面目な女の子だ。新人ともなれば隊長や副隊長、席官を相手に堂々と出来るものは少ないと思うが彼女は怯え過ぎだと思うところが多々ある。それに加え自分自身を過小評価し過ぎだ。それを思ったので自分のことを明かせずにいた。結果、彼女が見つけてしまった訳だが。

「千綾さん、僕は貴女が弱いとは思ってませんよ」

この言葉もきっと受け止めてはくれないだろう。納得がいかない顔をして僕を見ている。彼女の手をそっと触る。血豆が沢山できているその手は彼女の努力の証だ。努力出来る人が弱いわけがない。

「千綾さんが強くなりたい理由、僕は好きなんですよ」

みんなの傷を治すために、強くなりたい。彼女の思いを聞いた時、この子は根っからの四番隊だと思った。こういう子は大切に育てないといけない。虚を倒すことが出来なくても逃げる力を持って欲しいと思った。

「浦原さん…っ、あの!」

彼女は自分の手が恥ずかしいのか、あたふたしだした。今どきの女の子の手ではない。しかし、それよりはいい手だ。

「塗り薬は…って、四番隊なら隊においてありますね」
「は、はい。戻ったら使わせてもらいます…!」

さっと手を引いた彼女につい笑ってしまった。真面目な彼女の初々しい行動は見ていて飽きない。

「浦原さん、また修行見て頂いてもよろしいですか?」

見捨てられた子猫のような目で僕を見た。そんな目で見つめられたら断るにも断れないことを彼女は知らないだろう。元々断る気なんてないのだが。

「もちろんですよ。ですが、」
「はい?」
「次はその手を治してからにしましょう」
「…それ、結構先じゃないですか」
「そうなりますね」

不服そうな顔を見せて小さくわかりましたと呟いた彼女の頭を優しく撫でた。

それでは、と丁寧に頭を下げて隊舎を後にする彼女を見送るといつの間にか夜一さんが隣にいて、その表情はとても緩くなっていた。

「なんじゃ、初々しぃのう」
「見てたんですか夜一さん」
「かなり入れ込んどるように見えるが?」
「そうかもしれませんね」

彼女が力をつけてこれからの四番隊を支えるひとりとなってくれたら、とどこかで願ってしまうのは何故だろう。