珍しく救護詰所にいらした猿柿副隊長と矢胴丸副隊長に連れられて定食屋さんに来た。お昼ご飯食べに行くで!と半ば無理矢理だったがちょうどお昼をとる時間だったのでご一緒することにした。

「昨日はなんやったんや?真子あれから機嫌悪かったで」
「なんや、なんかあったん?」
「いえ、その…」

お店に入ると温かいお茶がすぐに出され注文をする。お茶を一口飲んだ。おいしい、と味わう間もなくそう聞かれ私は昨日あったことを話した。二番隊の三席と非番の日に修行をしていると言ったら怒られた、と。

「二番隊の三席?誰やそいつ男か?」
「そうですね」

強い人です、と言うと矢胴丸副隊長が鋭い眼差しでそれしかないやん、と口にした。

「あー、なんやヤキモチ妬いとるんか」
「男の嫉妬は醜いわ」
「ホンマあいつちっちゃいやつやな」

お待ちどうさまです、と店員さんが蕎麦三つを届けてくれる。軽くお礼を言い、手を合わせる。いただきます、と蕎麦に手をつける。

「うまっ!うまいでこれ!」
「そんなに叫ぶほどか?」

私は首を傾げたまま蕎麦に手をつけられなかった。

「なんや、食べへんのか?」
「あっいえ、いただきます…」
「うまいわ」
「っその、あの、どういうことですか?」
「は?」
「その…平子隊長がやきもちって…」

とても意味がわからなかった。私は平子隊長と仲がいい方だとは思うが猿柿副隊長や矢胴丸副隊長と比べるとまだまだ全然だ。敬語無しで話したいとかは思わないものの、少しだけ羨ましく思うことはあるけど。

「なんやあんた気付いてへんのか」
「え?」
「真子の奴、相当千綾に入れ込んでるで」
「見たらわかるで」
「そ、そうなんですか…?」

よくわからない。本当によくわからない。二人はにやにやしながら私を見る。実際のところ千綾はどうなん?と聞かれ食べていた蕎麦を出しそうになった。なんとか危機一髪のところで飲み込み、その後ゴホゴホと咳き込んだ。慌てて水を飲んだ。

「その反応はどっちなん?」
「いや、ちょっと待ってください!平子隊長はそんな感情ないです!少しだけ仲良くして頂いてるだけですから!」
「はあ、そうか。で、どうなんや?」

二人は私の話を聞かずぐいぐい聞いてくる。平子隊長をどう思っているか。どう、と聞かれても困る。好きか嫌いかで言うと好きには入るがそれが恋愛感情であるかどうかはまた別問題だ。

「平子隊長は…、おもしろい方ですよね」
「もしかして、はぐらかされとるんか?」
「そんなことないです!猿柿副隊長と矢胴丸副隊長相手にはぐらかすなんて、そんな!」
「それ、やめやん?」
「アタシも思ってた」
「え?どれですか」

何かまた気に食わないことしてしまったのだろうか。最近そういうことが多いから気をつけないといけない。と自分を戒めながら尋ねた。

「副隊長呼び、いい加減やめや」

思いがけない発言に驚き、すぐに我を取り戻した。

「いや、それは無理です!」
「なんでや」
「だって、私は席官入りもしていない平隊士ですし、こうやって副隊長殿と食事を共にさせて頂いているだけで有難いことなんですから…!」
「はあー、ほんま真面目やな」

蕎麦をがががと飲むように平らげた猿柿副隊長がお茶を一気飲みしてこっちをみた。

「じゃあ、千綾が席官入りしたらウチらのこと名前で呼ぶ、それでええんちゃうか!」
「…千綾席官入りせえへんくなるで、それ」
「えっと…」
「そんなにイヤなんか!?」
「い、嫌ではないです!」
「じゃあ決まりやな!」

にっと笑った二人に、またやってしまったと内心焦った。いや、しかし私がいつ席官入りを果たすかわからない。そしてその頃にはその約束も忘れられているだろう。きっとそうだ。私に飽きているはずだ。謎の確信を持った私は、そうさせて頂きますと口にした。嬉しそうに笑みを浮かべる二人に、私はいつまでもこの関係が続いて欲しいと思った。