暑い暑い夏が来た。四月から綜合救護詰所で勤務していたがこの夏からは上級救護班の見習いとして加わることになった。

「千綾!こっち来てくれ!」
「はい!」

上級救護班とだけあって中々忙しい毎日を過ごしている。
だいたいが虚討伐任務に出ていた部隊の重症患者を診ることになる。虚討伐任務に呼ばれることも少なくはない。私はあの時の一回しか出動したことがなくて、この救護班に加わったことでもしかしたら任務に赴く機会も増えるのではないかと考えてしまう。

「高峰さん!こっちも手伝って!」
「は、はい!」

今は虚討伐任務に出ていた部隊が虚は全滅出来たものの隊員が重症で現地に派遣されたのである。持ってきた薬品では足らなかったかと後悔するがそれよりも先に名前を呼ばれ指示される。

「千綾ちゃん、この人お願い!」
「わかりました」

救護詰所で診ていた患者は軽傷者ばかりで、腹から血が溢れ出ている重症患者はみていなかった。そっとお腹の上に手を合わせ回道を施す。傷口を塞ぎ、霊圧を回復させる。それが我々四番隊の治療を行う際の基本だ。

「…っく!」

自分の限界を感じずにはいられなかった。だが、ここで諦める訳にはいかない。必死になって回道を続ける。直に血が止まり傷口が塞がる。後は少しの霊圧を回復させる。息をすることを忘れるぐらい真剣になっていた。治療していた隊士が無事に息を返した時やっと私も息を吸えた。


「千綾さん!こっち来て!」
「はっ、はい!」

休む暇もなく動き続けた。


結果、倒れた。その任務地からはクタクタになりながらも無事四番隊の隊舎に戻れた。しかし家に帰ろうとした時、倒れてしまった。

倒れた場所が悪すぎた。

「お前よう倒れるなァ」

そんな呆れたような声を聞きながら目を閉じた。

「おはようさん」
「すいません!」
「なんや俺に会ったら倒れるくせでもついとんのか」

苦笑いしか出来ず、小さくすいませんと謝ることしか出来なかった。目が覚め気がつくと五番隊の執務室にいる。しかもソファーを陣取って寝ていたのだ。急いで起き上がるものの無理すんなやと制止された。

「聞いたで。最近頑張っとるみたいやん」
「は、はい。上級救護班の見習いとして頑張ってます!」
「そおか。なんや楽しそうやな」

にっと笑い私の頭を撫でた。大きな手が温かい。ぼさぼさになる髪なんて気にせずにただ撫でられていた。

「平子隊長…」
「けどな、頑張るんと無理するんは話がちゃうで」

優しく撫でていた手が徐々に力強く頭を握られるのがわかった。え、いたいんですけど!

「隊士を助けて自分が倒れとったら意味ないやろが!」
「いたっ、痛い…!平子隊長…!」
「無理するんも程々にしとけ。ええな?」
「痛い…!」
「返事は!」
「わっわかりました!わかりましたから、離してください!いたいっ」

ぱっと手が離されて開放された。頭が潰れるかと思った。半泣きの状態で平子隊長を見るとしてやったりの顔でこっちを見ていた。そんな表情を見せるなんてずるい。

「別に、無理してるから、倒れるわけではないんです!」
「嘘つけぇ。現に俺の前で倒れとるやないか」
「平子隊長に会うと、なぜかすごく…安心しちゃうんです」

だから、倒れちゃうんです!と言い切る。…なんだその理由。自分で言っていてよくわからなかった。しかし、平子隊長は大きな手で自分の口元を覆いそっぽを向いた。耳が赤くなっている。アホか、と言われたが私は笑みを浮かべてやった。