今日の私は足取りが軽い。昨日の夜から少し楽しみにしていたぐらいの思いで十三番隊舎に向かった。手には薬の入った袋を持ち門番の前に立つ隊士に入れて貰えるよう話しかける。どこかの隊とは大違いでにこやかかつすんなりと入れてくれた。十三番隊は隊長のおかげなのかとても穏やかな雰囲気だ。
執務室の扉の前で私は声をかけた。
「四番隊の高峰です。浮竹隊長のお薬をお持ちしました」
「おお。千綾か、入れ入れ」
失礼致します、と私は執務室に入った。中には書類と睨めっこをしている海燕さんがいた。その姿に私は笑えずにはいられなかった。
「なんだよ!笑いやがって」
「すいません。珍しいなと思いまして」
ああわかんねェ!と書類を投げる彼にまた笑みが零れた。がしがしと頭をかく彼の机に再び書類を置いた。
「浮竹隊長の薬だったか?俺を通さずにそのまま持ってけばいいんじゃねぇか?」
「そ、そんな!平隊士が他の隊長に話しかけに行くなんて恐れ多いです!」
「そんなものか?」
「そういうものです!」
「…お前、俺がもし隊長や副隊長になったら絶対距離置くやつだろ」
「ど、どうでしょうか…?」
海燕さんは十三番隊の上位席官の方だが出会った初日にガチガチの敬語を使ったら怒られた。俺は隊長や副隊長じゃねぇからそんな気を使うな。いいな!わかったな!と言われてしまった。気を使うごとにデコピンされ額を真っ赤にさせて四番隊に戻った日もあった。
でも、こうやって仲良く、と言っていいものかわからないが気さくに話せる人がいるとやっぱり安心感が違う。
椅子から立ち上がり、んじゃまあ行くか、と浮竹隊長がいるであろう雨乾堂に向かった。
「あの、書類よかったんですか?この薬は急ぎではないので、海燕さんが手の空いた時に隊長に渡していただいてもいいんですけど」
「いいんだよ。書類整理は肩が凝るからな。気分転換だよ気分転換!」
海燕さんはいつも温かい。
「浮竹隊長ー!千綾が薬を持ってきてくれましたよ」
「ああ。いつもすまないな」
ひょっこり御簾から出てきてくれた浮竹隊長に対し私はあわあわ慌てた。
「浮竹隊長!お身体大丈夫ですか?」
「ああ。今日はだいぶ調子がいいんだ。四番隊の薬のおかげかな」
「それはよかったです…!」
にこにこ優しい笑顔を見て安心した。新しい薬を渡してぺこりと頭を下げ戻ろうとしたが、気がつけば縁側で座布団に座りお茶を飲んでいた。浮竹隊長と海燕さんと私。この状況はもういつものことで、嫌だ帰りたいと思う気持ちはさらさらなく時にはこんな休息もいいかなと思ってしまうぐらい心地がよかった。
「四番隊はどうだ?もう慣れたかい?」
「はい!今は上級救護班の見習いをさせて頂いてます」
「おおすげぇじゃねぇか」
「毎日学ぶことが多いです」
「そうか。嫌がらせとか受けてないか?十一番隊とか余りいい話は聞かないが…」
「大丈夫ッスよ。コイツなら強気で平気に言い返しますから」
「海燕さん!」
「だってそうだろ?」
「…そうですけどー、」
不服そうな顔をしてみるとがしがしと頭を撫でられた。ちょっ!痛いです!と抵抗するものの笑われ、浮竹隊長にも笑われてしまった。髪を整えながらもう、と呟くと機嫌直せって!とお茶のお供に出してもらった自分の栗まんじゅうをくれた。
「ありがとうございます。頂きます」
「機嫌直るの早いな」
「栗まんじゅうおいしいですから」
「ははっ。高峰はおいしそうに食べるな。俺のも食べるか?」
「いっいえ!大丈夫ですから!」
また慌てだした私を二人が仲良く笑った。つられて私も笑ってしまう。四番隊とはまた違う穏やかな雰囲気に包まれて時が過ぎていく。それも悪くないと思いながらおいしいお茶を飲み干した。