夕飯の買い物に行ってくるね、と近くにいたラブにそう伝えて廃墟を出た。今日は何を作ろうかとなんとも呑気なことを考えていた時だった。

「なにこれ…!」

莫大な霊圧を感じた。その中で魂魄が吸い取られているのが見えた。こんな現象は今までに一度も見たことがなかった。戻って皆に相談しようかと踵を返そうとしたが、その中で知っている霊圧を感じた。これは、喜助さんと夜一さんだ。戦いに赴くその動きに私も、とつい体が動いてしまう。

「…真子」
「買い物はどうしたんや」

腕を捕まれた私は抵抗出来なかった。これだけ莫大な霊圧だ。彼らが気付かないわけがなかった。そして、今自分たちが出る幕でもないこともわかっていた。しかし私は何も言えなかった。

「喜助らが行っとる。それぐらい千綾もわかるやろ。助けは不要や」
「…そうだね」

私が行っても逆に足でまといだもんね、と自虐してしまう。口から出てしまった言葉に自分で驚く。真子に怒られることを恐れ私は、ぱっと表情を変えて買い物行ってくると言い、私は逃げた。


喜助さんと夜一さんが向かっているなら私の役目はどこにもない、と先程真子に言われたことを必死に自分に言い聞かせながら、買い物を済ませた。みんながお腹を空かせて待っている。早く戻ろう。そう思っていても、自然と私の足は廃墟とは反対の方に向かっていた。もう遅いかもしれない。戦闘は終わっていて、跡形もなく帰路に着いているかもしれない。それなら、それでいい。ざわつく気持ちを無視出来ず、私は足を早めた。

進むにつれて人が倒れていて息が止まる思いだった。その中心にいたのは喜助さんと夜一さんだった。敵はもう倒したのか、姿は見えなかった。

「夜一さん!!!」

持っていた買い物袋を勢いよく落として私は駆け寄った。卵が割れた音がしたがそんなこと知ったこっちゃない。息が止まりそうだった。

「千綾、来てそうそうで悪いが、井上の手当を頼めるか」
「…っはい」

お得意の回道を使い女の子、井上織姫の手当てにかかる。夜一さんの怪我の方が気になるが、大丈夫。後で必ず治す。そう決めて集中した。周りに倒れている人間はどうするか聞くと喜助さんが予め持ってきていた薬を使い、治していった。。

「千綾さん、黒崎さんと茶渡さんもお願いできますか」
「は、はい…!」

とりあえず、致命傷を優先的に治し終わり浦原商店へと戻り治療を再開させた。みんな大事には至らない怪我だったので少し息をついた。そしてオレンジ色の髪の少年を見た。黒崎一護。死覇装を身に纏う彼は今どんな気持ちなのだろう。

夜一さんも含め無事に治療が終わり、あとは目を覚ますのを待つのみだ。がらりと障子が開かれそこには喜助さんがいた。

「千綾さんが来てくれて助かりました」
「お役に立てれたのなら、なによりです」

その言葉を貰えただけで、私は来てよかったと思った。しかしもう少し早く来ていたら夜一さんもこの人たちも深い怪我を負わなくて済んだのではないかと思わずにはいられない。

「ここに来てること平子さんたちは知ってますか?」
「……………知らないです」
「僕から言っておきましょうか?」
「大丈夫です。怒られるのはもう慣れちゃったので」

困ったような顔をして笑った。帰る前にもう一度夜一さんもの様子を見て廃墟に向かった。

「あ」

廃墟に着いてから私は思い出した。今日は私のご飯当番で、買ってきた物を置いてきてしまったことに。時間も時間だし、これは怒られる。今からでも近くのコンビニでお弁当を買いに行こうと廃墟に背中を向けたとき、名前を呼ばれた。どきり。心臓が飛び出そうだった。

「り、リサ…!」
「千綾の代わりにみんなの分の弁当買ってきたで、はよ中入りや」
「あ、ありがとう…」

リサはそれ以上何も言わず先に中に入っていった。リサにもバレてる。ということは、真子も気付いてるはずだ。そして他のみんなも。思わず足が重くなる。いけない事をしているわけでは無いのに、いけない事をしているみたいだ。大丈夫。後ろめたいことなんて何も無い。そう思いながら、重い足を進めた。