「次、私が行く」
当番だからと先に結界に入ったリサを見送ってもうすぐ十分が経つ。次誰が行くか決めていないことをいいことに私は自分から手を挙げた。簡単に準備運動をして戦闘モードに入る。

「ちょい待て。千綾、お前は行かせへん」
「ハッチ。開けて」
「話聞けや!」

私と真子との間に挟まれつつも、ハッチも真子寄りなのか中々壁を開けてくれなかった。それに安心している真子を他所に私は壁に手を当てた。開けてくれないなら自分で開けるだけだ。

叫び声は聞こえないふり。

「リサ、交代」
「っは!千綾、」
「交代。ゆっくり休んで」

一護の攻撃を受け止めて勢いよく弾いた。その瞬間にリサにこの結界の外に出るように促す。何か言いたそうな顔をしていたがそれよりも口を動かせなかったのか何も言わず結界から出ていった。

「高峰千綾。手加減なしでよろしく」



「千綾、行かせてよかったん?」
「あほか。アイツが勝手に行ったんや」
「ふーん」

一護との戦いを見る彼はいつもながらに真剣だった。十分間彼は緊張しながらこの戦いを見るのだろう。大きな爆発音。どうやら彼女が鬼道を使ったみたいだ。ハッチが結界の力を強めるのが分かった。

「千綾、強くなったな」

拳西が呟いた。回道しか得意と言えなかった彼女が今こうやって斬術、鬼道、縛道を使いこなしている。尸魂界から離れてから彼女は変わった。仮面を持たない彼女は、仮面の軍勢と比べると、元々が四番隊の所属でもあり、その力は月とすっぽん、雲泥の差だった。しかし、今こうやって一護と戦えているのはハッチや浦原、夜一に修行をつけてもらったからだ。

「いつの話しとるん。もともと千綾は強い女や」

彼らの修行に彼女は一度も弱音すら吐かなかったのだから。



「喰われちゃダメ」

仮面に覆われた一護に指を突き立てる。破道の四 白雷、その威力は凄まじい音を立てて雷が落ちた。爆風に紛れてこっちに向かってきた一護の姿を瞬時に見極め瞬時で距離をとる。
ガキィンと刀と刀がぶつかる音が響き渡る。

「さすがに無傷はこっちが傷つく、って!」

彼女が結界の中に入ってまだ数分しか経っていないが、結界の外にいるメンバーは様々な思いを抱えて観戦していた。その事を当の本人は知らない。

「はいはいわかったわかった!」

再び刀がぶつかる。高い音が響く。千綾は焦りを隠すように口角を上げて刀を構えながら手をかざした。

「君臨者よ 血肉の仮面・万象・羽搏き・ヒトの名を冠す者よ 雷鳴の馬車 糸車の間隙 光もて此(これ)を六(むつ)に別つ 蒼火の壁に双蓮を刻む 大火の淵を遠天にて待つ 縛道の六十一 六杖光牢 破道の七十三 双蓮蒼火墜」

二重詠唱を唱え、六杖光牢で一護の動きを止め双蓮蒼火墜で攻撃をし、すぐに爆風の中千綾は一護に斬りかかった。鬼道も縛道も確実に自分のものになっている。が、しかし、自分の力ではまだ虚化した相手を黙らせるにはまだ弱いこともわかっている。案の定、千綾の刀は受け止められた。

「ぐっ!」

思い切り吹き飛ばされたのは千綾だった。岩壁に背中を打ち付けられ千綾は顔を歪ませた。

「わ、千綾ちん大丈夫かな…?アタシも行こうか?」
「やめとき。手ェ出したら千綾今以上に怒ってくるで、白」
「そう?」

誰もが手を貸してあげたい気持ちになるがそれでは一人あたり十分の持ち時間がおかしくなってしまう。それに、千綾自身ここで誰かが助太刀にでも入れば一護と共に鬼道で吹き飛ばされるだろう。

「まだまだ、こっからでしょ…!」

虚化した一護に何度も打ち負かされてしまってはいるものの、彼女の目は負けていなかった。にやりと不敵に笑う彼女は数年前まではすることない顔だった。