刀を受けては薙ぎ払い、受けては薙ぎ払う。その繰り返しを何度か繰り返しながら打てるところで鬼道を放つ。詠唱破棄でも自分の鬼道には自信があった。しかしそれも目の前の虚化をした黒崎一護にはあまり効いていないみたいで悔しくなった。
「縛道の六十一 六杖光牢」
虚化をした黒崎一護の動きを止めて少し距離をとった。大きく息を吸う。詠唱破棄の六杖光牢だったが少しの時間稼げればいい。
「散在する獣の骨 尖塔・紅晶・鋼鉄の車輪 動けば風 止まれば空 槍打つ音色が虚城に満ちる 破道の六十三 雷吼炮 !!!」
雷を帯びたエネルギーが黒崎一護に向かう。狙いは確実に定まっていた。大きな煙がたち、姿が見えなくなってしまった。いや、あれだけ大きな雷を受ければ少しぐらい怯むのではと鷹を括ってしまったのがいけなかった。次の瞬間黒崎一護は私の懐に入り刀を振りかざした。
あ、斬られる。
なんともあっさりとした思いだった。
「十分経ったぜ。交代、だっ!」
「拳西…!」
目の前で拳西が黒崎一護の刀を自分の斬魄刀で受け止め、私は怪我なくことを終えた。もう十分経ったのか、早いなとなんとも呑気なことを考えていたらさっさと結界からから出ろ!邪魔だ!と怒られてしまった。
結界から出た途端、緊張のあまり息をしていなかったと思ったぐらい荒い呼吸を繰り返した。ゆっくりゆっくりと息を整える。
「おいおい大丈夫かよ」
「っは、っは…!…っへぇき」
思わずラブが声をかけてくれたがしっかり言葉を返せずふにゃふにゃの言葉を紡いだ。汗を拭う。怪我という怪我はなく、かすり傷程度で終わらせただけよかった。十分をみんなで回すとなると自分の番はこれでお終いのはずだ。今まででいくとの話になるが。
息もだいぶ落ち着き拳西をと言うよりかは先程まで自分が戦っていた相手を見た。見る見るうちに虚になっていく。ぞくり。今頃になって恐怖を感じてしまった。
「千綾」
それでもそんな感情を忘れてしまったかのようにしていなければいけなかった。私の名前を呼んだ真子は今までに無いほどの真面目な顔で私に近付く。どきん。フラッシュバックは今来なくていい。つい、ぎゅっと
強く目を閉じてしまった。
「ここ、怪我しとるではよ消毒しときや」
そっと優しく頬に手を当て親指で一箇所なぞった。恐る恐る目を開けると既に目の前から真子はいなくなっていた。頬に残る体温と感触が夢のようだった。そっと自分の手で確認すると乾いた血が手に着いた。
真子が黒崎一護を見る。私が目を瞑る前に一瞬見えた彼の表情はとても悲しそうだった。ああ、やってしまった。そう後悔をしても後には戻れず、無性に泣きたくなった。救急箱取ってくると誰かに伝えてひとり地上に向かう。頬についた傷よりも、胸が酷く痛かった。
「千綾ちん、だいじょぶかな?」
「あれぐらいの怪我ならすぐ治せるやろ」
「怪我、はね。彼女の気持ちは僕達じゃどうしようもないさ」
「あーあ。あれじゃまた自分のせいだって一人で抱え込むぜ」
「自分から戦いに行って傷負うとるんやろ?せやったら自業自得や」
「リサ、今回は辛辣だね」
「どんなにあたしらが考えても千綾の気持ちはわかりっこないんや。それは千綾も一緒や」
言葉自体聞くとキツく感じるが、リサも千綾のことを思っての言葉なのだ。言い方は他にもあるだろうが今はリサの言っていることに間違いはない。そもそもの立場が違うのだから。それが分かるみんなは一斉に黙った。
「好きなだけ悩めばええ。それぐらいの時間はあるやろ」
リサがそう言い切る。
すると頬に絆創膏を貼って地下へ戻ってきた。千綾は少し泣いたのか目が赤くなっていた。
「リサ、怪我の手当てするからこっち来て」
「こんなんかすり傷や」
「ダメ!かすり傷からバイ菌が入るんだから!」
しかし、彼女はいつものように振る舞うのだからそれを聞くのは野暮なことだ。また心配することも同じだ。リサは溜め息を吐くがその表情はどこか嬉しそうで千綾の手当を受けた。みんなはどこか微笑ましい光景を見て少し安堵する。そして何も無かったように黒崎一護を見守った。