近くで破面の霊圧を感じた。真っ先に感じ取ったのは私だったが真っ先に動こうとしたのは一護だった。そんな一護を止めに入る拳西と羅武。怒鳴り合う一護達。行かしたれ、と指示を出した真子は何を考えているのか分からず私は何もせずただ見ていただけだった。


「ねえ、近くない?」

かなり、いや、本当にすぐそこで一護と破面が戦っているのがわかる。ひよ里に声をかけるが気にしていないようだ。先程一護と言い争っていた二人は知らねえと言わんばかりの顔をしている。そんな中でそわそわしてしまうのは私だけなのだろうか。

「千綾。助けに行こうとか考えるなよ」
「拳西…」

すごい怒ってるじゃん。そんな険しい顔しないでよ。
大きな舌打ちをしてその怒りは真子へと向かう。どうして止めたんだ、と。今のアイツでは勝てない。たとえ虚化しても時間が限られている。二人の言っていることは正しい。

「アイツは今自分がどの程度強くなっとるか試すいい機会や」
「死んだら元も子もねぇだろ」
「死なさへんに決まっとるやろ」

二人の言い争いに参加しようとは思ってない。けれど、状況が変わった。

「真子、」
「あかん」
「私も実力試したい」
「あかん言うてるやろ」
「なんで、一護はよくて、私はダメなの?」
「わかるやろ」
「わからない」

わかっている。けれどまるで小さな子供のように駄々を捏ねてしまう。やれやれと大きな大人はあからさまに溜め息を吐いて私を強く見た。

「お前は一護より弱いからや」

こうやって直接言われることはなかなかなかった。自分ではわかっていたが、やはり人に言われると胸にくるものがある。

「っこのハゲ!言い方っちゅーもんを考えろやアホシンジ!」
「せや!あたしらが千綾にどれだけ救われてきたか」
「救われてきたのは回道や。戦いで千綾に守られたことはない」

悲しい、悔しい。それ以前に私の心はさっと冷たくなる。言葉が見つからない。そんな私に代わってひよ里とリサが怒鳴ってくれている。止めるのはハッチ、そして先程言い争いをしていたはずの拳西に羅武だった。もはや私の入る隙間はない。

「千綾ちん… 」
「大丈夫。白、みんなをお願いね」
「うん?」

謎の言葉を残して私はこの結界から抜けた。思った以上に近くでドンパチしていた。女の子が頭を潰されそうになっていて私は慌てて複雑な感情を抑え手を翳す。

「破道三十三 赤火砲 !」

我ながら詠唱破棄でなかなかの威力だと思う。死神の女の子は破面の手から解放され地面へと落とされる。一護はなにをしているのか探すと女の子の近くで倒れていた。大きく息を吸った。あんたがそれじゃ、私はどうなるのよ。

「なんだまた出てくるのかよ」
「見逃せなくてごめんなさいね」

目の前から破面が消えた。一瞬のことで斬魄刀を構えるのが遅かった。一撃一撃が重くて強い。情けないが受け止めることで精一杯だった。鬼道も縛道も打つ暇さえ与えてくれない。

「ぐっ!」
「お前はなんなんだ?死神か?」
「さぁ?っね!」

ありったけの力を振り絞り刀を振り翳した。一歩少しだけ下がったのを見て私は大きく離れた。

「千手の涯 届かざる闇の御手 映らざる天の射手 光を落とす道 火種を煽る風 集いて惑うな 我が指を見よ 光弾・八身・九条・天経・疾宝・大輪・灰色の砲塔 弓引く彼方 皎皎として消ゆ」

大きく息を吸った。

「破道の九十一 千手皎天汰炮 !」

沢山の光の攻撃に凄まじい音が鳴り響く。まともに喰らっていたら深手を負わすことが出来るほどの力だろう。爆風の中で息を整えながら相手の様子を窺う。倒した、とは思えないので気を引き締めながら斬魄刀を握る。
あぶねぇ!と一護の叫び声が聞こえた。それに対応出来なかった私は何も思い切りお腹を殴られた。建物に打ち付けられ斬魄刀を離してしまう。うっ、と情けない声が出た。片腕の破面は私に刀を向ける。殺意を感じた。その、一瞬の怯みを許さなかった。破面は私に斬りかかる。

「…やれやれ、ほんまは死神の戦いに手ぇ出すつもりはないんやけどなァ」
「…っしんじ」
「まぁ、しゃあない」

目の前に見えるのはトレンチコート。それが隊首羽織りに見えたのは私だけだろう。破面の刀を弾き返したのは真子だった。何かを破面と話しているが全く聞こえてこない。いや、私の意識が朦朧としているのだ。

「しんじ…」
「もうええ。気ぃすんだやろ。下がっとけ」

振り向いた彼のその表情はよく分からなかった。

「おい、破面。俺の連れに手ぇ出したこと後悔させたるわ」