「千綾さん。お怪我の具合はどうですか?」
「う、卯ノ花隊長…っいた!」

何度この繰り返しをすれば私は気が済むのだろうか。痛みが治まると、死覇装を脱ぐように言われ、包帯を変えて頂いた。隊長直々にされるなんてとても畏れ多いことだ。隊長と新人平隊員なんで元々そんなに顔を合わせることも無く日常が過ぎていくわけで、卯ノ花隊長が私の名前を知っていることすらわからなかった。
こんなに近くで接するなんて入隊式以来だ。
私の緊張を他所に笑みを浮かべる隊長。

「千綾さん、よく聞いてください」
「はい」
「虚討伐任務において我々四番隊の役目は皆の傷を癒すこと。戦闘に表立って刀を振るうことではありません」
「はい…」
「今回は仕方ないことだったかもしれませんが、忘れてはいけません。傷を負った隊士を癒すことが我々の最優先です」
「はい…。すいませんでした」

隊長直々の叱咤に自然と視線が落ちる。
仕方なかった、とはいえわたしが戦うべきではなかった。私は逃げなければいけなかった。みんなの怪我を癒すために。もしも、増援が来なかったら全滅だった。その為の私だったのだ。四番隊の役割を私はきちんと理解出来ていなかった。

「体に傷跡は残らないので安心して下さい」
「は、はい」
「あと一週間は休んでくださいね」

最後に優しく微笑み病室から出ていかれた。
卯ノ花隊長はみんなの憧れの隊長だ。優しくて時に強くて芯がある女性。もちろん、私だって憧れている。その人に怒られてしまいしょげない私ではない。あと一週間も寝ていなければいけないのか。今すぐにでも働きたい。四番隊の隊士として。

「…今なら十一番隊の気持ちわかるわ」
「どんな気持ちなんや?」
「、っ平子隊長!!」

急に現れた平子隊長に心臓がばくばくとうるさい。独り言も聞かれていて恥ずかしくなった。

「あ、あの、」
「寝とる間に血の気でも多なったんか?」
「違います!…早く働きたいなと、思っただけです」

寝てるだけではつまらないので、と付け加えると平子隊長はにやりと笑った。

「退院できたらどっか連れてったるわ」
「え?」
「どこがええか考えとき」

頭をポンポンと優しく撫でられ平子隊長の後ろ姿を見送った。
退院したらどっか連れてったるわ。
これは、どういう意味なのだろう。やはり、彼はまだ今回の任務のことを引きずっているのだろうか。それの償いなのだろうか。そんなこと気にしなくてもいいのに。

「稽古でもつけてもらおうかな…」

そう思いながら目を閉じた。