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思ったよりも任務が長引いてしまった。二つ目の呪霊の巣窟だった病院は大変だった。まだ一日も経っていないけどすごく遠い昔の事のように思い出される。病院と言っても廃墟みたいな、壊れる寸前の病院だったので人は誰もいなくて戦いやすかったけど。一つ目の任務で土砂降りの雨のせいで濡れてしまった黒いコートは乾かず、なくなく黒いパーカー風のワンピースと黒タイツで過ごした。なかなか動きやすかったのでこれでもいいのかもなんて思ったけどこんな格好あまり人に見せたくないなとこっちの感情の方が勝った。一日で殲滅できず二日かかってしまったのは本当に誤算だった。しかし、そんな大きな怪我もなく完遂したのだから自分を褒めてもいいだろう。今現在呪力が尽きてホテルのベッドで倒れているわけだけど。あのまま病院で倒れなかっただけ偉い。すごい成長だよ私!

眠る前に電話をひとつ。夜蛾学長に、任務報告しておこう。

「もしもーし。夜蛾学長?」
「美沙か。無事か」
「はーい。二つとも終わりました。特に呪物関係は無かったです。怨霊みたいな感じで蔓延ってみたいでした。ちょっと、今動けそうに無いので戻るのは明日になりそうなので、よろしくお願いしますー」
「ご苦労さん。ゆっくり休め」
「はあい」

ぴっと電話を切って、重たい瞼を閉じた。あー。疲れたなあ。


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私が高専に入学する前から悟くんの噂は聞いていた。すごい呪術師がいると。知らない間に有名人になっていた彼に会うのはとても気が引けた。私の事覚えてるかな。忘れちゃってるかな。どんな反応するかな。緊張と不安と、少しの楽しみを抱きつつ入学した。
残念ながらすぐに悟くんに会うことは出来なかった。それもそうだ。彼は既にここを卒業してしまっている。しかし、先生曰く高専を拠点として呪術師は任務に出るそうなので会える日はそう遠くないだろう。
ついていけない授業に何度も先生に質問しに行く。それでもわけがわからない。はあ、とため息を吐いて教室に戻ろうと無意識にも下を向いて廊下を歩いていた。すると、目の前に現れた身長の高い人。顔が自然と上に向けられ、…あれ、さとるくん?私の小さな声は彼に届いたみたいで目が合った。

「わ、やっぱり!悟くんだ!」

私はやっと会えた嬉しさが勝ってしまって、それまでにあった不安なんてどこかに消えていた。悟くんも驚いていた。なんで、と言われにこにこ笑っていた私の顔が瞬間で固まった。悟くんの顔がとても嫌がっていたから。驚きだけではない、その顔は。驚きからみるみるうちに嫌悪が現れる。心臓がうるさい。私はそれから悟くんに何も言われないよう一方的に話して切り上げた。何を話したのか私も覚えていなかった。ただ、悟くんのあの顔が忘れられなかった。

それから、何故か悟くんと会う機会が増えた気がした。昔みたいに笑い合えたらよかった。けど、悟くんと会う度に私はあの悟くんの顔を思い出してしまい上手く話せなかった。いつ、高専をやめろと言われてもおかしくない。

「硝子ちゃん、悟くん何か言ってる?」
「悟?なにも知らないけど?」
「そっか」

悟くんと同級の硝子ちゃんに聞いても何もわからなかった。硝子ちゃんには私が呪力切れでぶっ倒れるのでその度にお世話になっている。申し訳ないが、彼女は気にしないでいーよと優しい言葉をかけてくれた。正直、泣いた。
そしてなんで悟くんが私が高専に来たことを嫌がるのか考えるうちに辿り着いた答えがあった。小さい頃のように私の面倒をみることが、私が悟くんの後ろをちょこちょことつきまとうのが嫌なんだ。そうだ。それしかない。

それから数日後、保健室のベッドでまたもや呪力切れでぶっ倒れ目を覚ますと硝子ちゃんの代わりに悟くんがいた。どうして、ここに。そんな疑問よりも彼に弱い所をみせてしまった。そんな後悔の方が大きかった。これ以上嫌われたくないのに。

「おこってる?」

そう恐る恐る聞けば、相談してくれてもよかったんじゃない?と言われて謝ることしか出来なかった。やっぱり、私がここにくることを望んでいなかった。悟くんと再会してはいけなかったのだ。もう、これ以上何も言えなくて目を閉じた。ごめんなさい、小さく言うしか出来なかった。




「おも…」

朝日が目にさし、眠りから覚めると不意に重たいと感じた。身体が、というよりは布団が重い?起き上がると、そこには五条先生が寝ていた。えっなんで、と思わず声が出る。むくりと起き上がる彼は欠伸をひとつして私の方を見た。

「起きたー?」
「な、なんでここにいるんですか!」
「美沙の様子を見に。大丈夫だよ。ついでに、ちゃんとこっちでの任務も終わらせてきたから」

いや、違うでしょ。任務があって、ついでに、私の様子を見に来たんでしょ!と頭の中で訂正を入れる。ホテルの場所とか鍵とか色々聞きたいことが山積みだったが、五条先生は心配した表情で私の頬を大きな手で包み込んだ。

「涙の跡。泣いてたの?」
「…覚えてません」
「そう」

それ以上、五条先生は何も聞いてこなかった。私は頬を拭い涙の跡を消した。