「ふわあ」
欠伸をひとつ、ふたつとしたら硝子ちゃんにどうかしたのかと笑われた。夜寝れないわけでは無いのだがとても眠い。眠たいだけなら寝たらすぐ解消されるかと何日も睡眠時間を増やしているのだが、良くならない。
「睡眠の量よりも、質の問題だったりして」
「質?」
他に身体の異常がないかを見てもらって特に何も無いよと診断を受けた。それなら良かったと胸を撫でおろした。
「美沙さん、何してるんですか」
「わ!びっくりした」
欠伸をひとつ零して前を向くと恵がいた。危ないぶつかるところだった。そういえば、久しぶりに恵と会った気がする。頬に大きなガーゼがあったので先程まで任務に出払っていたのだろうか。
「怪我、早く硝子ちゃんに見てもらいなよ」
「美沙さんこそ」
「私はみてもらったばっかだよ」
異常がないことを伝えると恵も不思議な顔をした。まあそれはそれで失礼だと思うけど。元気なんですか?と聞かれ私はケロリともちろんと答えた。それがまずかったのだろうか。後で付き合ってくださいと言われた。え?
再び会った恵は包帯が取れていた。さすが硝子ちゃん。傷跡ひとつ残っていない。近くでまじまじ見るとすごく嫌な顔をされてしまった。
「で、こんな広場に来て何するの?鬼ごっこ?」
「ふざけないでください」
「何まさかの告白?」
「そんな命の惜しいことしません」
私に愛の告白をすると死ぬの?って笑ったら真面目な顔で頷かれた。ちょっとそれ何も面白くないから。
しょーがないなあ。と冗談を切り上げて私は一枚の御札を取り出した。
「おいで。兎兎」
私の前に大きなうさぎが現れる。ふわふわの毛を撫でてやれば気持ちよさそうに目を細めた。かわいい。そして、恵も自身の式神である玉犬を出した。
「任務帰りなんでしょ?また怪我しても知らないよ」
「美沙さんこそ。甘く見てると痛い目会いますよ」
全く。可愛くない後輩だ。
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「いやー!惜しかったね!」
再び兎兎の毛を撫でる。ふわふわの毛が少しぺたんこになっていた。おつかれさま、と声をかけて戻した。恵の玉犬はその場で疲れてばてていた。今なら、と近寄り触ってみた。おおお、大人しい!いつも元気な時は私のことを警戒して触らせてくれない。修行の後の貴重な癒しタイムだ。恵は頭を抱えて悔しそうにしている。
「まだまだ恵には負けないよ」
一応準一級の肩書きもあるし、呪術師の先輩としての面子がある。
「伏黒残念だったな!ってか美沙さん、強っ!」
「わー、びっくり。虎杖くん見てたの」
「はい!俺とも手合わせおなしゃす!」
真っ直ぐに手を挙げた彼に私は元気だなーと思いながらにっこり笑った。
「遠慮しまーす」
「ええええ!どうしてっすか!」
「疲れちゃった」
癒しタイムを終わらせて背中を伸ばした。休憩お終い。さてと、書類整理に戻らなきゃ。
「美沙さん」
「んー?」
「ありがとうございました。…また、お願いします」
「気が向いたらねー」
確実に日々強くなっている恵。これならいつ追い越されても可笑しくない。まあ、まだまだ若いもんには負けないけど。
階段を歩いていると急に眠気が襲ってきた。うわあ。眠い。
「美沙」
欠伸をひとつすると不意に名前を呼ばれてどきりとした。振り向くと五条先生がいた。吃驚した。急いで階段を降りる。知らず知らず浮き足がたっていたのだろう。ひとつ踏み外してしまった。
うわっ、と思った時にはすでに遅し。体が空中に浮き気付けば五条先生の胸の中にいた。
「…任務から帰ってきたんですね。おかえりなさい」
「うん。ただいま」
落ちる瞬間彼が手を広げて受け止めてくれた。うれしかった、なんて口にしないけど。五条先生とは何日会ってなかったかな。私も任務があったからすれ違いにすれ違いを重ねて全然会っていなかった気がする。
「いやー。今日はいつもより大胆な出迎えだね。これならいつでも大歓迎だよ」
何言ってるんですか。
そう言いたかったのに、心地よい温もりに瞼が重くなり目を閉じる。頭を優しく撫でられた気がした。書類がまだ残ってるのを頭の片隅で思い出しながらも、次第に何も考えられなくなった。
「あれ、美沙?寝ちゃった?」
「すぅ…」
五条先生が、いてくれたら、それでいいや。なあんて。