京都方面に任務があったので歌姫ちゃんに会えるかと連絡を入れてみた。すると、すぐに返信が来た。会える、と。久しぶりに会えるのを楽しみに任務を早めに遂行させた。任務後にお楽しみがあるとそれだけで頑張れるから人って面白い。なんて。
オシャレなカフェに入ると私服姿の歌姫ちゃんが手を挙げて座っていた。
「歌姫ちゃん!久しぶりー!」
「久しぶり。元気だった?」
「うん!」
私は歌姫ちゃんの前に座ると店員さんが水を持ってきてくれた。メニュー表を広げて一番に目を引いたケーキセットを頼んだ。
「任務おつかれ。怪我してない?眠たくない?」
「下級だったから全然平気だよ。それにしても歌姫ちゃんお休みだったのに、よかったの?」
「せっかく美沙が来てくれてるのに、会わない選択肢なんてないでしょう」
「歌姫ちゃん大好き!」
お待たせしましたと机に運ばれてきた抹茶ラテとチーズケーキ。因みに歌姫ちゃんはブラックコーヒーとチーズケーキだ。私の甘さ全開の組み合わせに歌姫ちゃんは笑った。
「任務終わった自分へのご褒美なんです。任務後のおやつはゼロカロリー」
「なにそれ」
「もちろん、歌姫ちゃんに会うことも自分へのご褒美!」
「やめて。恥ずかしいから」
抹茶ラテは思っていたよりも砂糖が入っていて甘かった。美味しい。
それから飲み物とケーキがなくなるまで沢山話をした。会えなかった分を埋め尽くすかのように、ガールズトークは止められなかった。硝子元気にしてる?と聞かれ頷く。毎日お世話になってます。と付け加えるとあんまり頼っちゃダメだよとお叱りを受けた。
「怪我しすぎるのはよくないからね」
「うん。わかってる」
治るからって怪我を負ってまで戦い続けるなと以前言われたことがある。自分の命を軽く見てはいけないと散々言われてきた。そうは思っていないんだけどなあ。
空になったお皿たち。時計を見ると新幹線の時間が刻々と近づいていた。楽しい時間はあっという間に過ぎてしまう。
「今度は泊まりにおいでよ」
「うん。ぜひそうする。その時は硝子ちゃんも誘おうかな」
「それは楽しみね」
「帰ったらさっそく硝子ちゃんに言っておくね」
いつになるかわからないけど。近いうちにまた会いに来たいな。次は抹茶パフェとか食べたい。そういえば、笑われてしまった。いい歳して子供っぽかったかな。
「ごちそうさまでした」
お勘定を終わらせて歌姫ちゃんより後に出てくると歌姫ちゃんは誰かと喋っていた。誰だろうと見てみると相手はいなくて、どうやら電話だったようだ。邪魔にならないように少し離れたところにいると、とても不機嫌な表情をして私にスマホを渡してきた。え、さっきまでの笑顔はどこいったの。
「もしもし…?」
誰だろうと思いながらも耳をあてる。いや、待て。歌姫ちゃんをここまで不機嫌にさせる人なんてこの世にあの人しかいないのではないか。
「あ、美沙?任務終わった?」
「はい。無事終わって今から新幹線で高専に帰るところです」
「そっかー。元気そうでよかったよかった」
電話の向こうはやはり五条先生だった。声から安心した様子が窺えた。
「ところで、なんで歌姫ちゃんの電話に?」
私のスマホに直接かけてくれたらよかったのに、なんて思いながら聞いてみるとかけたよ、と返事を返された。
「でも電源切れてたから」
「えっそんな…。あっ本当だ」
私のスマホ充電切れるの早過ぎないか。とりあえず新幹線で充電しよう。歌姫ちゃんのスマホで長話も申し訳なかったので早々と切り上げよう。
「じゃあ、今から帰りますね」
「うん。待ってる。気をつけて帰っておいで」
五条先生の待ってるなんて信じられないが、適当に返事をして切った。
先程からすごい険悪な顔で見られていたなんて全く気が付かなかった。かわいい顔が台無しになっちゃうよ。
「ごめん。スマホありがとう」
「まだあのバカに付きまとわれてんの?」
「えー、そんなことないよ」
「美沙は優しすぎるのよ。時にはガツンと!執拗い!キモい!って言ってみなよ」
ぷんぷんと何故か怒っている歌姫ちゃんに私は逆に笑えてしまった。
仕事以外では五条先生の悪口を言うけど、それでも歌姫ちゃんも五条先生もちゃんと相手を信頼しているから素敵な関係だよね、なんて言えば凄い顔をされてしまった。
「私は羨ましいんだよ」
「はあ?何がよ」
「五条先生に信頼されていること」
「意味わからない。…もうこの話やめましょう。せっかく美沙との楽しい時間をあいつの話で終わりにしたくないわ」
おもむろにため息を吐いた彼女に私はまた笑みが零れた。
名残惜しくも新幹線の時間が来てまた来るねと彼女に告げてさよならをした。任務頑張ってよかった。歌姫ちゃんに会えるならこの地域の任務は私が全部請け負ってもいいのにな。なんて、そうはいかないか。
スマホを充電しながら電源をつけると着信有りの表示が出てきた。
五条先生に信頼されていることが羨ましい、なんて。
歌姫ちゃんがあまりにも嫌な顔をするから、つい本音を言ってしまった。高専に戻ったらこんな感情忘れなきゃ。