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私の目が見えなくなって二日目が経つ。だいたい部屋の空間は掴んだ。どこに何があって、この距離にあれがある、と。中々こんな状況でも過ごしていけることがわかり安心した。あの日の夜に五条先生はもう一度来てくれた。夜蛾学長から、私の視力が戻るまで当面仕事を休むようにってさ、と言われた。突然の休暇に何して過ごそうかな。あ、事務室に溜まってる書類整理と掃除とかしようかな、…あ、目見えないから出来ないのか。
ぐっすり寝ることは出来ても、もう寝れないほど寝てしまえば起きるしかない。パジャマを脱いで簡単なワンピースを着た。前後ろ、逆じゃないはず。その上からカーディガンを羽織った。外に出るにはまだ早いかな。でも、することないしなあ。

すると、私の部屋がノックされた。歩くのがどうしてもゆっくりになってしまい出るのが遅くなった。

「おはようございます」
「あれ、恵?どうしたの。こんな朝早くから」
「五条先生から、美沙さんの手助けしてくれって頼まれまして」
「へー」

まるで他人事のように返事をしてしまった。どうやら五条先生は朝早くに任務で外に出て行ったらしい。その時、寝ていた恵を叩き起こして頼んだらしく少しだけ不機嫌そうだった。声のトーンでしかわならないけど。

「食堂行きますか」
「あ、うん」

恵の足音が聞こえた。恐る恐る歩く私はその早さについていけなかった。そっか、とまた恵の足音が近くなったと思えば手を握られた。大きな手だった。

「これで、いいですか?」
「ごめんね。ありがとう」

歩幅もちゃんと合わせてくれているみたいで歩きやすかった。いつの間にこんなに大きく、そして気遣いのできる男の子に育ったのだろう。年の差からお姉さんの立場からするととても嬉しくなった。笑みがこぼれると少し怪訝な声でなんですかと言われてしまった。



食堂に無事つき、椅子に座って恵を待っていると知っている呪力を感じた。

「しゃけ」
「あ、おはよう。棘くん。ちょっと任務でへましちゃってねー」
「なんだ、てっきり悟のマネしてるのかと思った」
「真希ちゃんそれはないよ」
「悟もいるのか?こんなところに放置する奴じゃないだろ」
「五条先生は任務だって。わー、パンダくん今日ももふもふ」
「やめろ。くすぐってぇ」

二年生ズに囲まれ、どうやらみんなも今から朝ご飯らしい。椅子を引いて私の近くに座ったっぽい。

「恵がここまで連れてきてくれたんだー。あ、恵?」
「どんな状況っすか」
「ん?みんなでご飯食べるんじゃないの?」

けらけら笑ってると私の前にお盆が置かれた。おにぎりか、とパンダくんが喋ったのを聞いて恵なりに食べやすいよう考えてくれたのかなと思うとまた嬉しくなり笑ってしまった。ありがとう。

「でも、目が見えないって厄介だな。生活出来てるのか?」
「なんとか…。でも、いつ視力が回復するかわからないからなんとかしたいんだよね」
「なんとかって?」
「んー、心の目を開眼させるとか?」
「おかか」
「えー」

あ、このおにぎりの具おかかだ。
そんな冗談はおいといて。呪力を感知するのは得意な方だし、それをもっと向上させたら楽に動けるのではないかと考えた。恵にこれからの予定を聞くととりあえず何もないらしい。二年生ズは授業なり任務なり入ってるのでここで別れた。

「本気ですか」
「うん。心の目開いてみせる」
「………」

いや、無視されるとこっちが恥ずかしいから。木刀を構えた。意識を集中させる。恵の居場所がしっかりわかった。最初は慣れない動きに何度も恵に負けたが、次第に慣れてきた。恵の木刀を受け止めれるぐらいになった。恵に一本取ることは叶わなかったが。息が切れるまで続けた。

「美沙さん、水です」
「ありがとう」

ペットボトルを渡されキャップを捻り水を飲む。この状態に慣れてきたのだろうか。結構いけるんじゃないか。と思った時「伏黒ー!なにやってんの?」と近くで虎杖くんの大きな声が聞こえ驚いてペットボトルを落としてしまった。あわわ。大丈夫ですか?と野薔薇ちゃんの声も聞こえ、また驚いた。
ずっと呪力を意識してないと感じ取れないのかー。がっくり。
少し軽くなったペットボトルを手に戻してくれた恵の前で落ち込む。

「そんなすぐ心の目は開かないですよ」
「なにそれ。心の目?」
「そんなんあんの?」

野薔薇ちゃんと虎杖くんの痛い言葉に、恵がこっちを見てる気がした。知らないふり知らないふり。

「あれ?」
「どうかしました?」
「もしかして、五条先生、近くにいる?」
「え?いませんけど?」
「なになに?呼んだ?」
「うわあっ!五条先生!?」

すっと入ってきた五条先生にみんなが騒ぐ。賑やかで楽しそうな会話を繰り広げるその光景は見えなくても想像するだけでおもしろかった。

「美沙、硝子のとこ行った?」
「今日はまだです」
「じゃあ、行こっか」

優しく私の手を取り立ち上がらせた。

「五条先生、俺が美沙さんに付き添いましょうか?任務報告とかあるんじゃ…?」
「んー?いいよ。僕が行く。今日はありがとね、恵」

恵に付き合ってくれてありがとうと伝えて、虎杖くんと野薔薇ちゃんにまたねーと言い足を進めた。五条先生の手を握り返して隣を歩いた。




「伏黒、どうかしたのか?」
「いや。…さっき、美沙さんなんで五条先生が来るってわかったんだ?」
「美沙さん得意の呪力察知能力じゃないのか?」
「いや、お前らが来たときは驚いて水を落としていたから気付いてなかった」
「五条先生だからじゃない?」

釘崎の言葉がすんなり入って納得出来た。今二人の後ろ姿を見てもう一度実感する。手を握り合い、美沙さんの表情はどこか嬉しそうで、そして何より五条先生に全てを委ねている感じが出ていた。歩幅も、歩くスピードも全て合っていた。俺と歩く時は恐る恐るだったのに、今はしっかり一歩を踏み出せている。それだけ美沙さんは五条先生のことを信頼しているということなのだろう。

「あの二人本当にじれったいわよね」

どうやら女の目線からはそう見えているらしい。この言葉を彼女に届けたかった。