五日目後。無事目が元通り見えるようになり、私は視力の有り難さをより一層に感じた。目の前にいる硝子ちゃんの目の下のクマが以前より濃くなっているような気がした。
「これを機に戦い方を考えた方がいい」
「うん。そうだね」
「と言っても、変わらないのが美沙ちゃんなのよね」
「えへっ」
硝子ちゃんにジト目で見られてしまった。そんな表情もちゃんと見れるようになってよかった。…よかったのか。
「あんまり言いたくないけどさ。美沙が危ない戦い方し続けると悟の寿命が縮むよ」
私にはその意味がよく分からなかった。
「そういえば、今日は悟と一緒じゃないの?」
「五条先生は私の保護者じゃないですよ?任務らしいです」
「そう。せっかくなのに、残念だろうな」
「うん? 五条先生も任務続きで一年生担任なのに授業できず残念でしょうね」
「ねえ、それわざと?」
「え?」
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外に出ると風が気持ちよく吹いた。数日、目が見えなかっただけなのに世界が変わってしまったみたいに思えた。空が青い。運動場に行ってみれば真希ちゃんが一人で練習していた。
「やほー、よかったら付き合うよ」
「美沙!目、治ったのか」
「うん。全然動いてなかったから、体なまっちゃって」
手に持っていた竹刀を構えると真希ちゃんは口角を上げて笑った。
それから何時間真希ちゃんと戦っていただろうか。彼女の攻撃を受け止め弾き、怯んだその瞬間に間合いに入る。決めにかかろうとするもののさっとかわされる。そして逆に足元を取られ体制が崩れた。やばい。辛うじて真希ちゃんの剣を受け止め、距離をとった。真希ちゃんは呪力がないが柔軟性や素の力が高い。そして何より呪具の扱いに長け、近接戦闘タイプだ。その反対に私は兎兎を始めとする呪符を扱う。俗に言う遠距離戦闘タイプ。私にとって相性が悪い。しかし、実際の任務では呪霊とある程度の距離を取って戦うことは難しい。そのため近接戦闘にも強くなりたい。真希ちゃんが攻撃をしかけてくる。私は逃げずに竹刀を構えた。
「だから、なんで逃げないんだよ」
ごつんっと真希ちゃんに一本取られてしまった。おでこが痛い。
「真希ちゃんまた強くなった?」
「ちげーよ。ってか、なんでさっきの私の攻撃避けなかった?あれぐらいどうだって出来ただろ」
「えー?」
「体鈍ってるからって、さっきは避けれただろ」
手を抜いたのかと疑われとても不機嫌になる真希ちゃんに私は弁解をする。真希ちゃん相手に手なんか抜かないよ。
「それは信じる。じゃあなんで」
「勝てると思ったから逃げなかったの。ただそれだけ」
「自信過剰か?」
「…そう、なのかも。そっか。自信過剰なのか、私」
「は?」
硝子ちゃんにも今の戦い方が危ないと言われたばかりだったが、私にはどうしたらいいか正直わからなかった。それが真希ちゃんと手合わせしたことにより、私は弱いのに勝てると踏んでしまう自信過剰?な戦い方をしていたことに気付いた。なるほど。
「私、もっと強くならなきゃな」
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一人で何かを納得した美沙は私に付き合ってくれてありがとうとにこにこ笑いどこかに行ってしまった。なんだったんだ。
「おーい。真希、ひとりか?」
「いや、さっきまで美沙としてたんだけど」
「しゃけ」
パンダと棘にさっきのことを言うと二人ともが同じ顔をした。
「…高菜」
「そうだよな」
「なんだよ」
「いや、美沙は自信過剰とかじゃなくて。ただ死に対して考えが甘いんだ」
「そうか?」
「しゃけ」
「美沙は自分がいなくなっても、それ以外の人が生き残ったらそれでいいって考えてるからな」
「あー確かに。それはある」
今回視力を失いかけた任務でもそうだった。人質にされた女の子のために自身を差し出したとか。何かしらの勝算はあったからだろうが、そうやって簡単に自らを犠牲にする。人を守りたいが為の自己犠牲か。
「しかもそれを自分が気付いてないときた。どうやらそれは自分にとっての当たり前になってて気付こうにも気づけねえんだよな」
「厄介だなほんと」
「しゃけしゃけ」
「悟も頭を悩ませてるぜ」
美沙の話をするとどうしても出てしまう悟の名前。
確かに美沙が任務に出て行った時あいつの心配は度を越している。彼女だって準一級の資格さえあり、幾度となく任務をこなし、ちゃんと強い呪術師なのだから、普通ならそこまで心配しなくてもいいはずだ。なのに、悟は毎回心配をしていた。その理由がやっとわかった気がした。
「悟も大変なんだな」
まあ、それだけの感情じゃないのはもちろん見ていたらわかるけど。