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電話の奥で傑くんは今私がどこにいるかと焦り気味で聞いた。私は公園にいたことを伝えると安心したような声が聞こえた。しかし、私は震えた声で家にはお母さんが…、と伝えた。それからは電話を切る前に走った。父がどうしたと聞くがそれに答えている暇なんてなかった。

「なにこれ…!?」

私の家は見るからに呪われていた。中に呪霊がいる。怖くて足がすくみそうだ。何も見えない父は私を不思議そうに見る。二階の部屋で激しい物音が聞こえた。泥棒か!?と真っ先に入ってしまった父を止めれず、私は足に力を入れて一歩踏み出した。





傑が美沙の家に着いた時、そこは既に呪いの巣窟になっていた。近くにいる呪霊をどんどん倒して家の中に入る。ぅうう、と不気味な声が響き渡る。そんな中で呪霊の呪力ではない微力な呪力の気配を感じ取った。これはもしかしたら、と傑は思った。それは推定ではなく断定に近かった。

慌てて二階に上がる。微かな呪力を頼りに美沙を探した。
鳥のような小さい呪いばかりが現れる。音がうるさかったが、たすけて…と声が聞こえた。
辺りを見回すと、小さく縮こまっている女の子を見つけた。美沙だ。助けに行こうと呪いを祓う。彼女に近づくと異変を感じた。
彼女の周りだけ呪いが弾かれている。

「っ、はっ、はっ…!」
「美沙!」
「すっ、すぐる、く、ん、」

息をするのが辛そうな美沙の元にたどり着いた傑は彼女が強く握っているものに気がついた。それは呪符だった。この呪符が美沙の呪力に反応して、美沙を守る結界を貼っている。しかし、その肝心の美沙は呪力の使い方がわからず暴走しているみたいだ。
これはまずいと感じた傑は呪いを全て祓った。震える手で強く呪符を握る彼女は依然上手く息が出来ていない。

「美沙、安心しろ。もう呪いは全部祓った。結界を解くんだ」
「す、すぐ、る、くん…っ」

呪符が破れる寸前で美沙は力尽きたように倒れた。上手く彼女を抱きとめたが彼女の身体は震えていた。か細い辛そうな声で言葉を出した。

「おっ、おかあ、さん、と、…っおと、さんが……っ」

美沙の言葉に傑は急いで辺りを見回した。すると、傑は見つけてしまった。ぐちゃぐちゃになっていた人間が倒れていた。無残な姿で顔だってもうわからない。それでも、彼女が母と父だと言うのならそうなのだろう。美沙を強く抱きしめて外に出た。

傑が泊まっている宿に連れていき未だに震え続ける彼女の傍に近寄る。暖かいお茶を出したが息を整えるのに必死で飲むどころじゃなかった。数時間が経ち、やっと呼吸が穏やかになった。ようやくか、と思えば彼女は急いでトイレに向かった。背中を優しくさすれば、辛そうにごめんなさいと謝った。何もかもを吐き出した彼女は、見るからにげっそりとしていて今朝会っていた女の子と同じ子だとは思えなかった。

暖かいお茶が既に冷え切っていた。新しく入れ直すと彼女は湯呑みを両手で持ち手を温めた。

「何があったか、聞いてもいいか?」

その言葉にこくりと小さく頷いた。

美沙が家に着いた時、呪いがうじゃうじゃいた。見えてしまった彼女は真っ先に呪符のことを思い出した。傑くんが封印していた箱を私は開けっ放しで家を出てしまった。もしかして呪符を狙っているのかと焦り自分の部屋に戻った。呪霊たちは呪符には触れないようで私は急いでそれを掴んだ。使い方なんてわからなかったけど、私はこれがないときっと呪術師にはなれないと思ってしまった。呪霊の意味もない言葉にはっとして周りを見た。
まず視界に入ってきたものに目を見開いた。見るに堪えない母親の姿。気が付けば父親も無残な姿になっていた。悲痛な叫び声が彼女の耳に響く。呪霊の目がじろりと私を捉えた。殺されると思った。この状況をどうしたらいいかわからなくて呪符を強く握った。

「それで、結界が発動したわけか」

美沙は疲れきったようでソファに座ったまま寝てしまった。


呪術師は過酷だ。呪いを祓うために体力は必要だが、それ以上に精神が図太くなければやっていけない。今回みたいな凄惨な光景を見ることも少なくない。今回以上のことだってある。彼女が呪術師になりたいと口にしたが、やはり考えが甘かったと思う。目を覚ました時、彼女は呪術師を諦めるのではないか。その時自分はどう彼女に声をかけたらいいのだろうか。そう考えながら目を閉じた。