「あ、起きた?おはよ」
目を開けるとそこには五条先生がいた。あれ、どうしてここに。恵や虎杖くん、あの生徒たちは無事なのだろうか。私はどうなったんだっけ。ぼんやりする頭と共に体を起き上がらせると身体の節々が痛み言葉に出来ない言葉を発してうずくまった。
「恵は軽い怪我で済んだよ。今隣の部屋で寝てる。他の生徒は病院で入院してるけどすぐに硝子が来てくれるから安心していいよ」
「よかった…」
怪我は負っても生きているなら傷を癒すことが出来る。死人を出すことなく終わったことに胸をなで下ろしていると頭を掴まれた。痛い…。
「そんで、君は肋骨にヒビがはいってる。あと身体の火傷があちこちに残るって」
頭から手を離し私の首の火傷をなぞられる。一瞬だけ震えた。それでも笑い無しに怒っている彼に私は目をそらす事しか出来なかった。
「すいませんでした…」
「自分より相手を優先するその性格ホントにどうかして欲しいな」
「…硝子ちゃんなら、この程度の火傷一瞬で治してくれますよ」
「そういう問題じゃないだろ」
真っ直ぐ私の方を向かれて布で隠している目と目が合っている気がした。首から手が上がりそっと頬に手を添えた。くすぐったいような感覚に頬が緩んでしまった。笑うな、と頬を抓られ折角のいい雰囲気が台無しだ。
「僕が来なかったらどうしてたのさ」
「あれ?後で行くよって言いませんでしたっけ?」
「言ってない」
「そうだっけ。でも、私は来てくれるって信じてました」
「…まあ、モノが特級呪物だったから上がうるさかったからね」
「五条先生」
「あのねー、俺はお前のセンセイじゃないんだけど」
「えー」
あははと笑っているとノック音が聞こえた。がらりと開けられた先には額に包帯ぐるぐる巻きの恵がそこにいた。五条先生がいた事に驚いたのか入るのを躊躇っていた彼に私はどうぞーと声をかける。五条先生も特に何も気にしてなさそうだ。
「美沙さん、怪我どうですか」
「恵よりはピンピンしてるよ」
「肋骨ヒビ入ってるけどね」
「でも元気だから!」
そうっすか、と安心したような少し罪悪感を感じているような彼の表情に私は殴り掛かりたくなった。彼とは距離があったのでそれは残念ながら叶わなかったけど。
「五条先生、美沙さんに虎杖のこと…」
「あー、まだ言ってない」
「なに?なにかあったの?」
簡単に言うと、私たちが探していた特級呪物、両面宿儺の一部を彼が飲み込んだらしい。呪術規定に則れば死刑になるが、彼は耐性がであることがわかり秘匿死刑となり執行猶予がついたらしい。そして呪術師になるべく呪術高専に入学することになったらしい。
予想外の展開が起きていたことに頭がついていかない。
「まあ、とにかく、仲間になるってことなんだね」
すごく簡単に要約したら笑われた。
▼
「………」
「………、」
恵もまだ病み上がりで本調子ではなかったからか、気を利かせてくれたのかあの後すぐに病室に戻って行った。必然と病室には僕と美沙だけになる。ベッドに横になり大人しくしている彼女の顔を見ると目が合った。眠たそうなとろんとした目に見つめられ、つい意地悪したくなる。すっと手を彼女の頬に滑らせた。
「僕が美沙を見つけた時どんな思いだったか、ちゃんとわかってるの?」
着いた瞬間視界に入ってきたのは壁にぶつけられた跡。近くには頭から血を流しぼろぼろになっている美沙が倒れていた。自分の血が引いてくのがわかった。安全な場所に寝かせて息があることを確認してやっと息が吸えた。そしてぼろぼろになっている恵と合流したわけだが。
来てくれるって信じてました。
そう彼女は言ったが、その言葉を素直に喜んでもいいのかとても悩まされる。
「ほんと、心臓が止まるかと思った」
「ごめんなさい」
「無茶しすぎ。この火傷だって跡になったらどうするのさ」
「硝子ちゃんなら治せる」
「その考え改めて。治らない傷だってある」
「はあい」
本当にわかってくれているのか。いや、この会話はもう何回したかわからない。沢山したのにも関わらずこの有様だ。しゅんとしたその表情に甘いのは重々承知している。彼女の頭を撫でてやればまた小さな声でごめんなさいと口にした。今度したら僕が硝子でも治せない傷つくっちゃうかもね。ほら、もう疲れただろ。寝ていいよ。おやすみ。