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あれからぐっすり寝ていたみたいで起きたら朝になっていた。今日は外に出る任務はない。どうしようかなと朝からベッドでごろごろしていると自分の机に置かれていた書類を思い出して体を起こした。すると電話が鳴った。なになに。何事だ。

「おはよー。起きてた?」
「一応…。どうかしました?」

五条先生、と目を擦りながら尋ねると六本木行かない?と誘われた。デートですか?と何も考えずに口にするとそれもいいねと返される。ということは違うのか。

「遠慮しときます」
「パンケーキ奢るよ?」
「都会は苦手なんです」

ぴっ。電話を切って着替えた。外に出られる準備をして部屋を出ようとしたら再び電話が鳴った。また五条先生かと思い名前を見ずに電話を取ってしまった。五条先生じゃなかった。任務の依頼だった。すぐ用意して行きまーす。



「えー、一級は無理だって…」

寮から出ると伊地知さんが既に待っていてくれた。いつもながらに早いな。
今回の任務二、三級の呪霊が蔓延っているとのこと。それの殲滅だが、数が多すぎではないか。それに加えもしかしたら一級が混ざっているかもしれない情報につい愚痴ってしまう。

「私、本当は事務方なんですけどね」
「人手不足ですから仕方ないですよ」
「ですよねー」

はあ、とついため息が出てしまう。がたごとと荒い運転に伊地知さんが怒っているのかと思えばそうではなく、山奥を走っているせいだった。それから数分で辿り着き、ぽいっと外に出されてしまった。うわあ。呪霊がうじゃうじゃいるよ。これ全部一人で祓うの?

「帳、下ろしますか?」
「いや。山奥だし、これ以上増えても困るからやめときます」
「わかりました。派手になりそうならちゃんと帳を下ろすの忘れずに」
「りょうかーい」

ひらひらと手を振り私は山奥にぽつんと建っている古びた家に入った。

これなら六本木で呪霊を祓ってから五条先生とパンケーキデートしてた方が幾分かマシだった。都会は苦手だけど。

「さあ、出ておいで。兎兎(とと)」

呪札から式神を出して共に呪霊の巣窟に足を入れた。
さ、任務が終わったら書類整理が待っている。



任務の結果、ぼろぼろだが大きい怪我はなく無事殲滅出来たので成功と言っていいだろう。すっかり外は暗くなり山奥なので明かりは月だけだった。伊地知さんに電話をしたらすぐに行きますと返事をくれた。季節は夏に向かっているはずなのに風が少し寒く感じられた。そこら辺にある大木に体を預けて目を閉じた。もう少しで寝れそうだったが電話が鳴り起こされた。

「伊地知さん?どうかしました?」
「残念。僕だよ」
「五条先生…」

またもや名前を見ず電話を取ってしまった。五条先生にもちゃんと名前を確認してから出なよと注意された。

「今どこ?」
「山奥です。そういえば、パンケーキ食べました?」
「食べてないよ。今度食べに行く?」
「呪霊がいないパンケーキ屋さんにして下さいね」
「そんなとこあるかな」

自然と笑みが零れた。
それから新しく入った釘崎さんのことを聞いた。ちゃんとイカれてた、と。女の子に対してそんなこと言うのはどうかと思うが度胸が備わっているならこれからの呪術師としての成長が楽しみだ。

山奥に強い明かりが見えた。車のライトだ。伊地知さんが来てくれた。私は五条先生にそのことを伝え、電話を切った。少し寂しくなったが高専に戻ったらすぐ会えるだろう。

「お待たせしました」
「全然です。ありがとう、伊地知さん…え?」
「来ちゃった」

後ろに乗ろうとドアを開けたらそこには先程ずっと電話していた五条先生がいた。えっと?理解出来ずにその場に立ち尽くしてると長い腕が伸びて私を隣に座らせた。そして私の肩にカーディガンをかけた。寒かったんでしょ?と言われ頷く。戦いで片袖が破れてしまったのだが、この暗闇で彼は見えたのだろうか。それに、このカーディガン…私の部屋にあったはずなんだけど。

「怪我は特にしてなさそうだね」
「はい」
「おつかれおつかれ」

ぽんぽんと頭を撫でられた。大きい手。私はそれに安心して目を閉じた。すると急に眠気が襲ってきた。高専まで起きているつもりだったが、もちそうにない。頭をドアに預けて寝る体勢に入る。山道のせいか道がガタガタしていて何度か頭をドアにぶつけた。地味に痛い。これでは眠れないなとなんとかいい場所を探すためもぞもぞしていると急に肩を引き寄せられた。

「おやすみ」

ああもう、この人は本当に狡い。眠たいからと適当に理由をつけて何も反抗しなかった。手を握られてももうなんでも良かった。どきりと高鳴る鼓動も無視して再び目を閉じた。