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そんな……。まさか。現状を理解出来ず呆然とする。これは夢なのだろうか。それか私の都合のいい妄想。そう考えてみても、盾にした銃に伝わる重い圧力に手がビリビリと痺れるのを感じて、夢では無いと理解する。

ならば、今、手の届く距離に居る彼は…本物。



「───よお、久しぶりだなァ。セツ」



楽しげに笑みを浮かべた彼が私の名前を呼ぶ。聞きたかった声で。聞きたかった私の名前を。途端にせりあがってくる物を飲み込むように目を細め、奥歯を噛み締める。



「………マル、コ…」

「おう、」

「っ、なんで……」



ここに。そう言いたくても言葉が続かない。胸が苦しい。彼の青い瞳に私が映っている。それをもっとよく見たかったけど、不快そうに歪んだ顔に尻込みする。



「男共を蹴り倒してるお前を見て元気にやってんだと思ったが……んだよ、その顔色…」

「……………」

「身体も……健康的に痩せた訳じゃねェだろい」



ちらりと落ちる視線に羞恥が込み上げ唇を噛み締める。



「……なんとか言えよい、セツ…」



眉を寄せ不快を露わにする彼、マルコを見てグツグツとお腹の底が熱くなる。どうして貴方にそんな顔をされなければならないのか。全ての原因は彼なのに…。



「……誰の、せいだと…」



私とてこんな姿になりたかった訳では無い。食べよとしても吐いたり、安心して眠れなくなったり……けして望んだ事では無いのだ。最初は必死に生きようとした。たかが男と別れたくらいで。と。

頑張っても頑張っても日に日に落ちていく体重。青白くなっていく肌。そんな私に不快な顔を向けるマルコが腹立たしく感じた。



「おれのせい、か……?」



まさかな。とでも言うようなニュアンスで彼は足の力をふわりと抜く。自由になった手を持ち上げ彼に銃口を向けた。私達の動きを見守っていたクルーが慌てたように声を張り上げ、自分達の隊長を守ろうと私に銃口を向け引き金を引こうとした瞬間、彼の右手がゆっくりと上がる。



「やめろ、手は出すなよい」

「けど!マルコ隊長!」

「うるせェ。お前らは先に進め、おれがこいつを足止めする」



私から一切目を逸らさず指示を出すマルコに、クルー達は一瞬ザワつくものの直ぐにその指示に従い進み出す。雄叫びを上げながら周りは進んでいくのに、私と彼だけがただ静かに見つめ合う。



「……足止め、ね」

「ああ、おれだって隊長だ。役不足じゃねェだろい……なァ、セツ。少し話さねェか?」

「話し?そんな悠長な事言ってられるの?貴方達の大事な家族を取り戻せなくなるかもしれないのに?」



貴方の目的はあっちでしょ?私などではなく、今まさに処刑されようとしている大事な家族は彼。早く行けば良い。邪魔などしない。



「勿論エースは取り返す。……だがおれはもう一つ、大事な“者”を取り返さねェといけねェんだよい」



大事なもの。それがなんなのかは分からないし、聞きたくもない。



「……へぇ。取り返せると、本当に思ってるの?」

「…ああ、力づくでも、嫌がっても、おれは連れて行くと決めたんだ」



その言葉に眉を寄せる。強い決意が見えたから。そしてまたぐるぐると心の中が荒れ狂う。

どうして私の時には言ってくれなかったの。どうして無理矢理にでも連れて行ってくれなかったの。彼にそれほど思われる人物は一体誰なのか。今すぐ駆け出してその人物を殺してしまいたい気持ちに駆られる。

ぐるぐると負の感情が入り乱れる中、それを悟られまいと必死に平然を装う。そんな自分を馬鹿みたいだと思った。



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