後退して数分。成り行きを見守りながら近場の海賊を制圧しいく。四方八方に目を向け、ヒナ先輩の姿を探すが見当たらない。ヒナ先輩は大佐。それも私より歴は長く、実力は本物で容易には負けないだろう。
「あああぁぁぁああああ……」
「え、なに?」
爆音が轟く中、それよりも大きな叫び声に驚き空を仰ぎ見る。それは私だけではなかったようで。海軍海賊、その場の全員がまさかの乱入者に目を向けていた。
「……海軍船…?」
空から降って来た船は厚い氷の張られた海へと落ちて行く。どちらにせよ即死だろう……。そう思っていた私の耳に、ザバーン。という音が聞こえ水飛沫が上がった事により、どうやら氷ではなく奇跡的に海の上に落ちたのだと理解する。
ほぼ一面氷の床。溶けたにしろ壊されたにしろ、それは一割にも満たないだろう。
「凄い強運」
「エーーースーーーー!!!」
感心する私の耳に届いた爆発音に負けない程の声。どうやら火拳のエースを奪還しに来た者らしい。その者を見てざわつき始める海兵達。私のいる場所からではあまりよく見えず、手近な海兵を捕まえて詳細を問えば慌てたように説明を始めた。
「ど、どうやら“麦わらの”ルフィが名だたる海賊とインペルダウンの囚人を率いて現れたようです!」
「……へぇ、名だたるって?」
「“元王下七武海”クロコダイル、同じく“元王下七武海”ジンベエ、“革命軍”イワンコフ、“道化”のバキーです!」
「それはまた壮大なメンバーですね」
確かジンベエは元々白ひげを尊敬していたはず。だから火拳のエースを奪還しに来たのだろうか?それにしてもよく分からないメンバーだ。そこに混じる元とはいえ王下七武海。サカズキ大将辺りは腹を立てていそうだ。
それはそれでいい気味かもしれない。くすっと笑みを漏らした時、視界の隅に先程見た黒い檻が通過する。それにはっ、として顔を向けた。
「ヒナ先輩!」
呼んだところで聞こえるほど近くはない。だがその勇ましく海賊達を捕まえる姿に、ほっと一安心する。
無事だったようだ。ヒナ先輩がここにいるという事はマルコも捕まってはいないのだろう。その事実にほっとする自分がいる。嫌気が刺す。一体自分はどうしたいのか、どうされたいのか。訳も分からずモヤモヤとする。
分からない……。だけど一つだけはハッキリとしている。この戦争でマルコは死ぬか或いは生き残るか。その2つの道しかない。
そして、私は彼を死なせたくは無い。私のいるこの場所では……。
「行けェエ!!マルコォオ!!」
「マルコ隊長!!」
聞こえた名前に彼が何処にいるのか。とキョロキョロと辺りを見渡す。青い何かがちらりと視界を掠め、それが彼だと無意識に顔を向けた。そこには不死鳥となったマルコが処刑台を目指す姿を見つける。
遠い。そう思った時、突如現れたガープ中将によって殴り落とされる彼を見て息を飲んだ。
凄まじい音を立てて地面に落ちた不死鳥。ここからではどれだけの怪我を負ったのかなど分かるはずもなく、考えるよりも先に彼へと駆け出していた。
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