「……おれは、セツに触れて欲しい」
本心だった。
「っ!!」
「傍に居て欲しい」
「……な…に、言ってるか…分かってるの……?」
そんな事最初から分かっている。困惑するセツは目をキョロキョロと動かす。どうやら理解が追いついていないようだ。そんな姿が可愛らしく思えた。
「殴られて頭でもおかしくなったか?とでも思ってんだろい。……残念だが正気だ。それと、今この場でお前は答えなくていいし、おれも聞かねェ……」
淡々と言い退けるおれにセツは疑わしげな目を向ける。セツが何をしたいのか、して欲しいのか。昔は少なからず理解出来たが、今では分からない。それは離れていた期間が長いからだ。分からない物は今考えても仕方がない。ならおれが出来る最善の事をする。
「───お前を連れていく」
固まってしまったセツに、ふっと笑みを漏らす。そう、おれが出来る最善策。分からなければ分かればいい。
時間をかけて、ゆっくりと……。
「泣こうが喚こうが関係ねェ……悪いが、無理矢理にでも連れていくよい」
「っ、な、…わた、……っ」
震える声。ギュッと下唇を噛んだ姿は懐かしさを感じる。セツが泣くのを我慢する時の癖。泣き出しそうな彼女に手を伸ばそうとした時、横から飛び出してきた海兵に舌打ちをする。いい所だってのに……。
「セツ大佐!下がって下さい!孤立します!」
どうやら海兵は孤立したセツを助けに来たようだ。驚いたセツが辺りを見渡す。おれ達の周りにはちらほらと海兵が居るものの、ほぼ白ひげ海賊団のクルーによって制圧されようとしていた。だからおれ達だけの空間が出来ていたのだ。そんな事は、まあいい。それよりもセツの階級に少なからず驚いた。
「へぇ…出世したとは思ったが、大佐ね。予想以上だが……孤立させるのが目的だよいっ!」
ひょいっと海兵の攻撃を躱し、拳を握る。
「ぐっ!」
「っ!」
「セツ!」
まだ若い海兵を殴り飛ばせば、慌てたようにセツが駆け寄ろうとした。おれではない他の男に。それも気に食わない。おれの元から去ろうとするセツの腕を掴み引き寄せる。
振り返った顔。怯むセツ。紫喑の瞳に映るおれの姿。
「おれを選べ」
おれだけを。おれの為に。なんとも傲慢で身勝手な自分自身。セツには全てを捨てさせるのに、おれは全てを手に入れたい。
そんな考えになっちまうのは仕方が無いだろ?何故ならおれは海賊。欲しい物は奪ってでも手に入れる。
だからおれはセツを海軍から奪って行く。
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