「海賊なら!!!信じるものはてめェで決めろォ!!!!」
大気が震えるほどの圧力に息を飲む。氷の壁を意図も簡単に壊した白ひげは、白鯨の頭部から飛び降りる。大将が前線へと出できたことにより彼の仲間は闘志を燃やし、下っ端の海兵は一歩後ずさる。なんて情けない。気持ちで負けてしまえば、勝てる戦も勝てないというのに。
海軍の士気を上げようにも、派閥が多すぎる。私が敵を何人倒した所で、サカズキ大将派の兵はやる気を出さないだろう……。
「おれと共に来る者は命を捨ててついて来い!!!」
「「「オオォォオオ!!!」」」
耳を劈く雄叫び。動き出した白ひげ。貫かれた胸をものともしない振る舞いを見せるものの、その傷口からはドクドクと赤い血が流れ出ていた。
「…っ、と」
「気を付けろォ!!島ごと傾いてるぞォオ!!」
突然傾いた身体。誰の仕業かなんて考えなくてもわかる。倒れないように身体の重心をずらせば、目の前で派手に転げた男がいた。その男を私は覚えていて、男は瓦礫にぶつかる事により静止する。それを待ってました。と言わんばかりに一人の海兵が、ぶつけた頭を押さえる男に向けて剣を振り上げた。
「死ね!白ひげ海賊団!!」
男が顔を上げるよりも早く振り下ろされた剣。頭を真っ二つにするつもりで下ろされたそれは、男に届く直前で止まった。
「なっ、なにしてるんですか!!セツ大佐!」
驚く海兵。自身の剣を止めた私を睨むように仰ぎ見る。それもそうだろう。絶好のチャンス。それを大佐である私が止めたのだから…。ギリギリと押し込む剣を飛び込む寸前に拾ったサーベルで受け止める。ちらりと庇った男を見れば片眉を上げ不思議そうに尻もちを着いたまま、私を見上げていた。
「セツ大佐、白ひげ海賊団を助けるんですか!?」
「……助ける…?それはなんだかしっくりしませんね」
「あ?助けてくれたんじゃねェのかよ」
白ひげ海賊団を助けたい訳ではない。だから海兵の言葉に首を傾げれば、助けた男も首を傾げる。嫌でも目に付くリーゼントを揺らして。
「ま、どちらにせよ助かったわ!ありがとなっ!!」
「ぐふっ」
勢いよく立ち上がった男は私に剣を向けたままの海兵へと飛び込み殴り倒す。地面に沈んだ海兵。殴った手をひらひらとさせる男。それは先程マルコがサッチと呼んでいた人物。
「四番隊隊長、双剣のサッチ」
「おーおー、おれも有名になったもんだ。…えーと、セツちゃんだっけ?さっきマルコと居たよな?知り合いか?」
自身の武器を仕舞いながら、サッチは口角を上げる。
「……知り合い…と言えばそう、ですね」
「ふむふむ。マルコと知り合いでおれを助けたとなりゃ、味方だな!」
「……え?」
「え、敵ではないだろ?」
「……私海兵ですよ?」
「それは見たらわかんだろ。そんだけでっけェ“正義”背負ってりゃ」
彼の言い分に私は目をぱちくりとさせる。
「味方してくれんのは有難いが…大丈夫か?立場悪くなんねェ?」
あまつさえ私の立場を心配し始める。なんて変な人だろう。海賊だからなのか、白ひげ海賊団だからなのか、はたまた彼の性格によるものなのか。
「……変な人」
「ん?それおれの事言ってんのか?ひでェな、おい。おれはこれでも……っ!?」
突然黙ったかと思えば目を見開くサッチ。彼の目は私の後方へと向けられていて。釣られるように振り返って男と同じように目を見開く。
そこには海楼石の手錠を掛けられたマルコの姿。その背後で指を彼に向けるボルサリーノ大将。なにをしようとしてるか理解するよりも早くその指から放たれた眩しい光はマルコの身体を貫通する。
「っ!!マルコ!!」
叫ぶと同時に駆け出す。冷えていく指先とは裏腹に、腹の奥底が一気に熱くなった。グツグツとそれはマグマのように身体を駆け巡る。マルコを殺そうとしているボルサリーノ大将が憎くて憎くて仕方が無い。
スピードを上げ彼らに近付いた時、先程と同じように指先をマルコに向けたボルサリーノ大将を見て、目の前が真っ赤に染まった気がした。
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