エキエキの実。その存在は悪魔の実を知っている奴であれば、どれだけ価値が高いかを知っている。
それをまさかセツが……。そうとなれば黄猿が何故戸惑うのか合点が行く。セツを殺してしまえば、また何処かでエキエキの実が現れるだろう。しかしそれを探すのは困難だ。それを食べた人物がいるのであれば手元に置いておきたいというのが海軍の心理だろう。
かくゆうおれもエキエキの実を探っていた。見つければサッチ辺りに食べさせりゃ良い。と、物のついでにその存在を探しては居た。それ程までにエキエキの実は有能だ。
血が止まった事が分かると、セツの手がするりと離れていく。それを少しばかり惜しく思ったが、今はそれどころではない。血は止まった。これ以上流れ出る事は無いが、血が少ない事には変わりない。少しでも輸血するタイミングがあれば…。そう考えながら隣に歩み出たセツへと向く。
「いろいろ聞きてェ事はあるが……まずは助かっ!」
「おー…こりゃまた大胆な」
お礼を告げようとした口はセツの口で塞がれる。黄猿の楽しげな声を耳にしたまま、目を見開き固まる。首に回された手がぐっとおれを引き寄せ口付けをしたセツ。なにがどうなってやがる。そう考えるものの、久しぶりに味わう柔らかいセツの唇に思考が停止した。
「っ!?」
不意に合わさった唇から何かが入ってきた気がした。だが、感触はない。空気と言われれば納得してしまうような、僅かな違和感。数秒後、チュッとリップ音を立てて離れたセツ。その顔は少し上気しているようだった。
「輸血までされちゃ、身体に穴開けた意味が無くなるねェー…」
「はっ?輸血、だと?」
そんなまさか……。離れたセツは黄猿へと顔を向ける。
「少しだけですけどね。それより本当に私と戦うおつもりですか?ボルサリーノ大将」
「みすみす逃す訳にはいかんでしょう…」
「私は構いませんよ?今なら私の能力も最大限活かせそうですし」
辺りを見渡したセツは、もう一度黄猿を見て薄い笑みを浮かべる。
「困ったねェ…わっしの能力じゃ君とは相性が悪い……いや、相性の良い能力なんて存在するのかも怪しいねェー…」
「なら引いて下さい」
「無傷で引き下がる訳にはいかんでしょう…やれるとこまで、やってみようかねェー…」
おれを置いて進んでいく話。身体に戻りつつある体温は、セツが輸血をしたおかげだろう。まさかそんな事も出来るとは思っていなかった。おれの知っている話では血液を多種多様な武器に変える事ができる事。血を止めることが出来る事。そして、おれがこの能力を一番に欲した理由である、自分の血液を全ての血液型に変換できる事。
海の上、船の上でその能力は重宝する。その能力をセツが持っている。その事実はより一層セツを手元に欲しい。と思わせた。
ま、そんな能力無くてもおれのものにするけどよい……。
小さいはずなのに、大将と向き合うその姿は凛としていて美しい。ただその背中で主張する“正義”の二文字はセツには似合わない。今すぐ剥ぎ取りたい気持ちを堪え、黄猿へと向き直った。
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