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登校2日目から早速通常授業が始まった。
SNSを見る限り、一般的な高校に進学した友人たちはまだクラス内の交流を深めるレクリエーションとかをやっている期間らしく、国立名門高校との違いを実感する。


とはいえ午前中の授業を終えた感じ、一般教科の授業内容はいたって普通だった。
…教えてくれるのが常時ハイテンションなプロヒーローだったって点以外は。


そしてこれから始まるのはお待ちかねの「ヒーロー基礎学」。
ヒーロー科だけが受けることのできる、ヒーローになるための専門的授業。


一体どんなことを学べるのだろか。
期待に胸を膨らませていれば、廊下を走る音が近付いてくる。



「わーたーしーがー!!普通にドアから来た!!!」
「オールマイトだ…!!」
「画風違いすぎて鳥肌が……」



走ってきた勢いのまま教室に飛び込んできたのは、No.1ヒーローのオールマイト。



あのオールマイトに教えてもらえるなんて。

誰もが憧れるナチュラルボーンヒーローは、当然の如くあたしにとっても憧れの存在で、彼を間近で見れたこと自体に自分のテンションが上がっていくのを感じ、思わず上気した頬にそっと手を当てた。



「早速だが今日はコレ!!戦闘訓練!!!」



そうオールマイトが告げると、教室の壁が動き出す。


入学前に申請していたヒーローコスチュームだ。
特別あたしの個性には補助アイテム等は必要なく、デザインも特に思いつかなかったから、「動きやすく」「優美に」とだけ要望を書いて提出した。

果たして一体どんなデザインになっているのかしら。
早く確認したくて、そわそわしながらコスチュームを取った。



「格好から入るってのも大切なことだぜ少年少女!!
 自覚するのだ!!!!
 今日から自分はヒーロなんだと!!」


***


「んで、組替ってゲイなの?」


更衣室に移動して着替え始めれば、腕の関節が不思議な男子からいきなりそんな声をかけられた。
質問の意図がいまいち読めず、困惑して彼の顔を見つめながら瞬きをしていると、そのまま彼は会話を続ける。


「俺、瀬呂範太な。昨日気になったんだけど聞きそびれたからさ」


どうやら純粋な興味みたい。


「別にそういうわけじゃないっていうか、考えたこともなかったわ。今まで特に恋愛とかしたこともないし」
「女になりたいとか?」
「それも違うわね。ただきっかけがあってこういう話し方になって、それがそのまま定着しちゃったって感じかしら」



あたしと瀬呂ちゃんが話し始めれば、あやかるように何人かが自己紹介をしてくれた。
切島ちゃんに上鳴ちゃんに砂籐ちゃんね。

中学生の時は男子には遠巻きにされちゃってたけれど、雄英では男子とも仲良くできそうで嬉しい。



「良ちゃんって体つきも凄いんだな。俺もだいぶ鍛えてるけど、胸筋とかやべえ」
「うわっマジだすげえ」


着替え終わったコスチュームをチェックしていれば、切島ちゃん上鳴ちゃんからそんな声が上がる。


あたしのコスチュームは筋肉を増強したときに窮屈になってしまわないよう、袖のないハイネックのトップスに、ひざ下丈のワイドパンツ、そして伸縮性に富んだレギンス。
ショートブーツはリクエスト通りの5cmヒール。
さらには「優美さ」の表現なのか、縁にファーがあしらわれた王子様みたいなマントが付いていた。


全体的に黒で纏められたデザインはほぼ企業任せだけれど、なかなか悪くない。

特にぴったりとしたトップスは理想通りに作り上げたあたしの筋肉をひと際美しく見せてくれていた。


「ふふっありがと。でもこれ個性で作ったやつだから、自分で鍛え上げた切島ちゃんの筋肉の方が凄いわ」


それぞれの個性が生かされたコスチュームはどれも独創的で、眺めていてなかなか楽しい。
そのまま談笑しながら指定された運動場に行けば、そこでも女子を交えてコスチュームの鑑賞会が始まる。



「始めようか有精卵共!!!戦闘訓練のお時間だ!!!」


「君らにはこれから「敵組」と「ヒーロー組」に分かれて2対2の屋内戦を行ってもらう!!」



昨日の個性把握テストでその片鱗が掴めた個性の子もいれば、一体どんな個性なのか想像つかない子も何人かいる。
そんな中でのチームアップでの戦闘訓練なんて、わくわくしないわけがない。



「勝敗のシステムはどうなります?」
「ブッ飛ばしてもいいんスか」
「また相澤先生みたいな除籍とかあるんですか……?」
「別れるとはどのような分かれ方をすでばよろしいですか」
「このマントヤバくない?」

「んんん〜〜聖徳太子ィィ!!!」



カンペを見ながらのオールマイトの説明によると、核兵器を隠し持った敵に対し、ヒーローは制限時間内に敵の確保もしくは核兵器の回収。
敵は制限時間内核兵器を守りきるかヒーローを確保することが勝利条件。
それぞれの組み合わせはくじで決定する。

あたしの個性だとどうしても近接戦闘が中心になってしまうから、パートナーには中遠距離か妨害系のサポートができる子が欲しいところね。


***


くじ引きの結果、パートナーは上鳴ちゃんと耳郎ちゃんに決まった。
あたしたちの組だけ3人でのチームだけれど、実際の現場ではそういうこともあるよね、ということで特にハンデ等はなしということに。


対するは切島ちゃんと瀬呂ちゃん。
たしか瀬呂ちゃんは昨日、身体からテープを伸ばしているのを見た。
切島ちゃんはさっき「硬化」とか言ってたかしら。

設定的にあたしたちのやるヒーローチームの方が圧倒的に不利だから、事前にしっかりと作戦を立てておきたい。

まずはチームメイトの個性の把握からね、とあたしは2人の元に向かった。



「改めて、組替良成よ。よろしくね。個性は「細胞操作」、自分の細胞を弄って好き勝手できるわ」
「ウチは耳郎響香。個性は「イヤホンジャック」で、プラグを刺して心音を爆音で流せる。あと細かい音聞けるかな」
「上鳴電気!全身から電気流せる!よろしくな!」



丸くなって各々の個性について提示しあう。


耳郎ちゃんの個性で、索敵と遠距離からのサポートをしてもらって、あたしが近距離戦闘員。
上鳴ちゃんはイマイチ何ができるのか自分でも把握しきれていないみたいだけど、放電しての索敵はできるとのことだから、こちらも主にサポートに回ってもらうことに。


互いの役割を決めただけで最初の組の開始時間になってしまった。

大した作戦を決めることはできなかったのが残念だけど、任せとけとばかりにサムズアップをして見せた上鳴ちゃんが頼もしい。



とりあえず索敵ができるだけ十分ね。
今は前の組をしっかり見て学びましょう。