05

最初の対戦から大波乱の結果となった。


ヒーローチームは緑谷ちゃんと麗日ちゃん、迎える敵チームは飯田ちゃんに爆豪ちゃん。

開始早々に爆豪ちゃんが仕掛けて戦闘が始まる。
激しい攻防を見ているうちに、緑谷ちゃんの既視感の正体を思い出す。

かつてニュースで見た事件で必死に敵に向かっていった男の子。

あの時もしかしてクラスメイトに、なんて妄想していたことが現実になっていて面白く思う。


モニター越しには核兵器の確保に動く麗日ちゃんを完全に無視した爆豪ちゃんと緑谷ちゃんの激戦が繰り広げられる。

どこか不自然な2人の戦いは、オールマイトが中止を宣言しかける程激化したけれど、緑谷ちゃんの作戦により麗日ちゃんが核兵器に触れたことで終了した。



その後の対戦は圧倒的な個性で速攻を決めた轟ちゃん以外、いい感じの拮抗具合で進んでいった。
それでも最初の一戦に影響されたのか、どの組もそれなりに激しい戦いになったのだけれど。


そしていよいよあたしたちの番。


「絶対に勝ってやりましょう!」
「うん!」
「おう!」


気合い入れに拳を合わせて、ビルに侵入する。


どこに核兵器が設置されているのか、敵チームがどこに潜んでいるのか。
耳郎ちゃんと上鳴ちゃんの個性でもって探りながら慎重に進んでいく。



「っ見つけた!4階!けどどっちかが動き出してる!」
「この感じ、たぶん切島だ!近いぜ!」


「2人は下がって!あたしが当たるわ!」


曲がり角の先に誰かの気配がする。
硬化の個性であれば、確実にあたしと同じ近距離戦闘のはず。


予想通り飛び出してきた切島ちゃんの拳を腕で受け止める。
物理的に鋭いそのパンチに思いっきり皮膚が裂ける。


「悪りぃけど、ここでぶっ潰させてもらうぜ!」


切島ちゃんの攻撃はその見た目通りに鋭くて重い。

耳郎ちゃんのイヤホンによる爆音で相手が怯んでいる隙に切り裂けた皮膚を修復しながら考える。

ここで3人がかりで迎撃していても時間を食うばかり。
制限時間はもう半分を切っているはず。
どう動けば最も安定して勝利を収められるのか。



「耳郎ちゃん、上鳴ちゃん。ここはあたしに任せて。1人相手に時間取られるわけにはいかないわ」
「でも切島けっこうヤバイぜ!?りょーちん怪我してっし!」
「怪我ならもう治したわよ。あたし索敵できないし、適材適所でしょ」


「それに、負けたくないのよ」


見た目的にあまりよろしくないのだけれど、こうするためのコスチュームだ。
本気を出すために腕の筋肉を増強していく。

元の3倍ほどの太さになったあたしの腕を見てから、2人は頷いて先に進んでいった。


「さて切島ちゃん、こっからラウンド2よ!」



なんとかダメージを与えようと、卑怯かもしれないけど側頭部を重点的に狙って拳を振るう。

殴っても殴られても硬い切島ちゃんの身体にあたしの血ばかりが流れていく。

腕だけじゃ足りなくて、足の筋肉も強く太くしてその脇腹を蹴りつける。


「っぐ…!重っ」
「いい加減沈んでちょうだいっ!」


2人を送り出してからどれくらい経ったんだろう。

最初に比べて切島ちゃんの動きからキレが無くなっていて、少しふらついている。
硬くて分かりにくいけど、あたしの攻撃はちゃんと入っているみたい。
でもあたしの方も出血が多すぎてかなりくらくらしてきている。

そろそろ限界が近い。

もう少し、あと少しダメージを与えられれば。


なんとか気合いで右腕の筋肉量を増やす。

きっとこれが互いに最後の一撃。

切島ちゃんと目が合って、同時に右腕を振りかぶる。



「ヒーローチームWIN!!!!」


お互いの頬に拳が触れるその寸前、オールマイトの声が響き渡った。


良かった、やってくれたんだわ。


動きを止めたあたしと切島ちゃんはそのまま床に崩れた。


「はあーやられちまったか」
「ふふっあたし達の勝ちね」



「うっわ、りょーちん血ヤバくね!?」
「うわあ2人ともボロボロじゃん」


上の階から降りてきた上鳴ちゃんと耳郎ちゃん、瀬呂ちゃんに回収されてモニタールームに戻ったはいいものの、意識がぎりぎり限界だったあたしは辛うじて講評を聞き終えるとそのままそっと瞳を閉じた。

傷は治せても失った血はすぐには戻せない。

課題がひとつ見つかった気がした。


***


「りょーちんだいじょーぶ?起きれる?」
「ん…」


どうやら隣にいた上鳴ちゃんに寄りかかって寝ていたみたい。
貧血状態は変わらないけれどさっきよりだいぶマシになった体調に我ながら頑丈だと感心する。


「ありがと、ごめんね血付いちゃってないかしら」
「気にしなくていいって〜」


軽く支えてもらいながら地上に出る。


「お疲れさん!!!
 緑谷少年以外は大きな怪我もなし!しかし真摯に取り組んだ!!
 初めての訓練にしちゃ皆、上出来だったぜ!」


そうオールマイトが締めて、初めてのヒーロー基礎学の授業が終わった。




「緑谷と爆豪も凄かったけど、切島と良ちゃんのバトルもアツかったよね〜!」


濡らしたタオルで血の跡を拭って、コスチュームから制服に着替えて教室に戻れば自然と先ほどの戦闘訓練の話題が始まる。

まだちゃんと話してなかった子ともしっかり自己紹介を済ませて各々の反省点などを話していると、芦戸ちゃんがあたしと切島ちゃんを見ながらそう言った。


「そうそう!なんかタイマンって感じで見応えあった!」
「私は良ちゃんが意外と好戦的でびっくりしちゃったわ」
「結局組替の個性ってなんなんだ?」
「それは俺も気になるな。戦闘訓練中は手足の太さがかなり変化しているように見えたが…?」


みんなの興味津々です!って感じのきらきらした目があたしを見る。


「もう、みんなしてその子供のような目で見るのやめてよね。
 あたしの個性は「細胞操作」、自分自身の細胞を好き勝手に弄ることができるの。
 だから戦うときは基本的に筋細胞を増やして大きくしてパワーアップさせて攻撃って感じかしら。
 あとは怪我を修復したり見た目を変えるなんてこともできちゃうわね」

「でも体力テストの時は見た目変わってなかったよね?」
「目に見えて増強するまでもなかったからよ。この顔にあの筋肉ってイマイチじゃない」
「タシカニ」


そのまま話題はそれぞれの個性の話になっていく。
そうね、あたしも轟ちゃんの個性は凄すぎて吃驚したわ。
八百万ちゃんの個性も万能って感じがして凄いし、峰田ちゃんの個性も面白かった。


途中、保健室から戻ってきた緑谷ちゃんを囲んで盛り上がったり、互いの課題を指摘しあったりして、自主的に始まった反省会は下校時間近くまで続いた。


入学2日目もとても濃い1日になったわ。
これから毎日こんな日々が続くのかと思うと楽しみで仕方がない。

疲れ切った身体を湯船でゆっくり労って、この先の学校生活を思いながら眠りについた。