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一瞬視界がぐるっと回って、次に景色が見えればそこはもうたくさんのお店が並ぶ通りだった。


ダイアゴン横丁だ!



嬉しくなって思わずランの手をぐいと引いてしまったらしく、隣でランがよろけるのがわかった。



「さ、シャラ、行きますよ。
まずローブや制服の採寸を終えてしまいましょう」
「はーい」



そう言って向かったのはマダムマルキンがやっている洋裁店。

こんにちは、と店内へ声を掛ければ、先客の採寸中だったらしいマダムが顔をひょこっとこちらへ向けた。



「あらっ、ラン?ラン・ガルアッシュ?」



マダムが驚いたように声を掛ければ
ランはまた困ったように笑った。



「Yes, Madam。お久し振りです」
「あらまあ、突然どうしたの?
……あらっ、そちらのお嬢さんは?
もしかして、ランの娘なの?そうなの?」
「ああ、マダム、この子は……」


ぐいぐいと話続けるマダムにランが今度は本当に困ったように苦笑いをして、私の背を押して前に立たせた。


「この子は泣き谷で私たちが育てている、拾い子です。名をシャラと言います。今年ホグワーツに入学ですので、どうぞ宜しくお願い致します。……ほら、シャラ」
「……あっ、うん。はじめまして、シャラです。よろしくおねがいします」


ランに促されて挨拶をすれば
マダムは笑って私の頭をわしゃっと撫でた。

そして、空いている方の台へ促される。

その台へ立つとマダムは、ちょっと待ってて、
と言って先客の方へ向かった。



「……君、シャラって言うんだ。……よろしく」
「……へ?あ、私?」



突然隣の先客から声をかけられた私はちょっと驚いて、つい戸惑ってしまった。
それを見て、君以外に誰がいるの?と笑う男の子は、セオドール・ノットと名乗った。

背が高い彼は、マダムに終りよと言われると
ふう、と薄茶のサラリとした髪を掻き上げた。


「よ、よろしく……じゃあ、セオって呼ぶわ。
あなたも今年入学なのね、また学校で会いましょう!」


そう言って声を掛ければ、セオはああ、と
一言言ってフイとそっぽを向いてしまった。

でも、よく見れば耳がほんのり赤い。


なんだ照れ隠しか。

私はふふっと笑ってセオを見送り、自分の採寸に戻った。