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伊之助はどんなに聞いても詳しくは教えてくれず、ただ教えてくれた事といえば炭治郎は無事だと思う…とのこと。私と善逸は顔を見合せ、伊之助の凹み具合から見るにこれ以上は追求しない方が良いかと話し合い、しょんぼりとしている伊之助に私達は「伊之助は頑張ったよ!」「そうだぜ!お前山の王なんだろ?」と励まし始まる。だけど伊之助はさっきと同じように「ゴメンネ弱クッテ」と言って落ち込むだけだった。本当に炭治郎達の方では何があったんだろう……。
それにしても肝心の炭治郎と禰豆子ちゃんが居れば話を聞けるのに。二人は何処に居るのかな。禰豆子ちゃんは太陽の光に当たったら駄目だし、あんなに辛い任務の後だから炭治郎が禰豆子ちゃんをあちらこちらに連れていくとも考えられない。今此処に居ない二人のことを考えると何だか胸騒ぎがする。二人に何も起こってない事を願いたいけど、こういう時の私の予感は確実に当たる。だから二人に何か起こってるんだろうけど…多分、平気な気が……する……。


「炭治郎達本当にどこ行ったんだろーな?」
「さあ……何とも無いと良いけど…」
「伊之助もこんなに落ち込んでるし、俺達も大怪我だし、炭治郎達いないし……。なんていうか…やっぱり鬼って怖ぇよ……」
「……そうだね」


確かに鬼は…怖いよね。
今回の任務で更に植え付けられた鬼への恐怖心が心の奥底で渦巻いていた。










「納豆さん隊士の方がお呼びです。部屋に通しても構わないでしょうか」
「え、私にですか?」
「はい。そう仰っています」
「分かりました…。通して下さい」


炭治郎達が戻ってくるのを待ち始めてからしばらく経った時、部屋の障子に二人の人影が映り、その人影の一人であるアオイさんが障子越しに呼び掛けてきた。恐らくもう一人がアオイさんの言う隊士の人だろう。だけど、私に用のある隊士の人って誰…?
隣にいる善逸も伊之助も頭上に?を浮かべて障子の方を見つめている。スッ、と障子が開かれ真っ先に現れたのはアオイさん。そしてアオイさんが横に避けると、そこに現れたのは髪の毛に艶のある男の人が立っていた。その人はアオイさんに軽く頭を下げると部屋の中に入ってくる。アオイさんは何も言わずに障子を閉め、足早に部屋の前から去っていった。まだやることがあるんだろうな。大変そうだなあ……。


「よ!調子はどうだ?」
「怪我は酷いらしいですけど気分はわりと良いです。……伊之助以外」
「伊之助って……あ゙っ!お前、あの時の猪頭じゃねえか!!」
「伊之助のこと知ってるんですか?」
「ちょっと那田蜘蛛山でな……」
「へー……。ところで貴方の名前は…?」
「あぁ、悪かった!俺は村田だ。よろしくな。お前達は神崎と我妻と嘴平だろ?」


男の人の名前は村田さんというらしい。私達よりも早くから鬼殺隊に所属しているらしく、所謂先輩だ。慌てて すみません!と、頭を下げると村田さんは「別にいいよ」と言って小さく笑った。


「ところで村田さんは私になんの用でしょうか?」
「うぐっ……!」
「え…本当にどうしたんですか」


用件を聞くと村田さんは顔を真っ青にして胃の辺りを手で押えて唸りだす。まるでストレスを抱えて胃が痛くなる人のようだ。善逸も「だ、大丈夫ですか?」と言って村田さんを心配している。村田さんはゴホンッと咳払いをすると、「悪いな…」と改めて口を開く。




「神崎、お前はこれから俺と一緒にお館様の屋敷に行くんだ」




このときから

少しずつ

少しずつ

私達・・は変わっていく。

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