黄色い少年の独白

ふわふわとした意識の中、ずっと気掛かりで仕方がなかった彼女の声と、辛くて悲しい音が聞こえていた。


「でも結局、私は鬼に敵わなくて善逸に助けてもらうことになっちゃった。……あのときの私は駄目だったんだよ」


嗚呼、そんな悲しいことを言わないで。君は…納豆ちゃんは、とても優しくて強い子なんだよ。俺が怖くて動けなかったときに真っ先に動いてくれたじゃないか。
俺には到底出来ないことを君は出来るのに、『駄目だ』なんて言葉を君が言わないでくれ。
納豆ちゃんは凄いよ。とっても。俺からしたら、納豆ちゃんは炭治郎と同じくらい優しくて無茶をする人間に見えているから。
でも自信が無くなる時ってあるよね。俺はしょっちゅうだけど。だけどそんなときにいつも傍に居てくれたのは、君や炭治郎や伊之助だったじゃん。
俺が怖がって、怯んで、情けない時も皆が引っ張ってくれたから俺は進めた。皆がいなかったら俺は今頃死んでいたかな。なんかさ、もう俺達って仲間じゃないの。納豆ちゃんが大変な時に俺達が手を差し伸べることはできない?
知ってる?納豆ちゃん。それってすごく寂しいことなんだよ。



「……そう…かな?」


うん。そうだよ。だから納豆ちゃんは凄いんだってば。俺、ずっと前からそう言ってきたじゃん。納豆ちゃんってば俺の言うこといつも話半分で聞いてるでしょ。
話したいこといっぱいあるんだ。じっくり話したいのに、納豆ちゃんは自分の核心を突くようなことを言われるのを凄く嫌っているから、今まで口に出すことが出来なかった。でもそっか、ようやく俺の話を聞いてくれているんだね。ありがとう、嬉しいや。
ねぇねぇ、俺が納豆ちゃんの悩みを共有することができる日は来るのかい?俺はいつでも待ってるよ。あ、ちなみに待ってるのは俺だけじゃないから。炭治郎や伊之助だって待ってるよ。納豆ちゃんがいない間、三人で話したんだ。凄く心配してた。伊之助は一見分かりにくいだろうけど、納豆ちゃんのこと子分だと思ってるみたいだから親分として心配してたよ。天ぷらを取ろうとした時のこと反省してるみたいだし。
……皆、君を待ってるんだ。
ごめんね。俺、弱虫だからこれからもきっと鬼と出くわしたらへっぴり腰になっちゃうと思う。それに女の子も好きだから、いざという時に納豆ちゃんを連れて逃げようともしちゃうかもしれない。でもそれは君の強さを甘く見ているんじゃなくて、納豆ちゃんが大切だから。

──……いくら相手が強い人でも、大切に思う気持ちや心配する気持ちが無くなるわけじゃない。

納豆ちゃんはそんな俺達の気持ちに気付いてる?





「だからどうか、そんな悲しいことは言わないでよ…納豆ちゃん」




──ピキッ、とどこからか音がして、まるでその音は今まで築かれた物にヒビが入ったかのような音だった。




それが、君の中の築き上げられていたプライドが壊れた音だったら良いな。

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