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「なんで国見ちゃん達もここに居るの!?」


ある日のお昼休み。普段及川、岩泉と一緒に弁当を食べている屋上の入り口前の階段が今日は一段と騒がしくなっていた。その理由とはこの人達、男子バレー部の面々である。
生き霊事件の時は私、及川、岩泉だったのが今は私、及川、岩泉、マッキー、まっつん、国見君、金田一君と、七人に増えていた。そしてなに食わぬ顔で交じってきた四人に及川が問い詰めた。そんなこんなで冒頭に戻る。


「いいじゃねーか。及川と岩泉だけ吉川ちゃんを占領するのは可笑しな話だぜ?」
「マッキー! ちょっとは俺に協力してよ!」
「えーー及川にぃ??」
「なんでそんな嫌そうなのさッ!」
「ねぇ二人ともさっきから何の話してるの?」

協力とかよく分かんないんだけど。


今日の弁当に入っていた玉子焼きを口に含み、咀嚼しながら二人を怪訝な目で見ると二人はとぼけた顔で明後日の方向を見始めた。だが、その額には若干冷や汗が伝っている。
占領するとかなんとか言ってたけど私は物じゃありませんよーだ!


「ふ〜ん教えてくんないんだぁ?」
「吉川ちゃんにはまだハヤイデス」
「マッキーも教えてくんないの?」
「及川にドウカンデス」
「カタコトやめい」


あははっ、と可笑しな会話に自然に笑ってしまい思わず笑顔になる。
その時、今までご飯を食べて静かにしていた国見君がふいに顔を上げ、口を開いた。


「……なんていうか、前々から思ってたんですけど吉川先輩ってモテそうですよね」


「え」
「え」
「えっ!?」


上から私、マッキー、及川。国見君のいきなりの爆弾発言に私たちは呆然としてしまった。
……いやね? そう言ってもらえるのはありがたいんだけどタイミングってものがあるじゃないですか。TPOてきな?
ていうかマッキーと及川においては何故驚く。私はモテなさそうってことですか、あーはいはい。これだからモテる男は嫌になるね。


「まあ実際前々から吉川ちゃんって3年の中だと美人って話では聞いてたけどな」
「あ、それなら1年とかにも伝わってるっす! 物静かでクールな美人な3年の先輩が居るって……。まさか実際に関わるとは思ってなかったんで聞き流してましたけど……」
「おぉ、金田一でも知ってるなら相当だな」
「ごめんなんかちょっと照れてきた」
「いや真顔で言うなし」



とても平和な時間だった。
だけど厄介な事ばかりを呼び寄せる私の前ではそんな時間も所詮わずかでしかなかったのだ。





電気すらも点いていない、薄暗いとある部屋で一人の少年が膝を抱えて尋常じゃないほど震えていた。その様子は誰がどう見てても正常では無いと判断するだろう。


「ぃ、いやだ……っ、いやだ、いやだ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ……!」


「なんで、なんで俺なの……?」


「助けてよ……『クロ』……」



彼は深い深い夢をみる。
長い長い夢をみる。

────終わり無き夢路へ誘われる。

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