Moon Fragrance

3月3日 春らんまん
春らんまん



散歩に出れば、店の入れ替わりも激しいと感じる。そのほかにも復興が進んで店が増え始めた。新しく開店準備をしている店を見つけては、リクがオレの手を引っ張ってわざわざその前へと歩いて行った。

「どんなお店が開くんだろうね」

 いつもそう言って店を覗き、笑いながらワクワクしている横顔を、返事をしながらも見つめてしまう。冬が過ぎた暖かい煌めきに、今日は一層眩しく感じた。

「ねぇ、つまんない……?」

 黙り込んでいたのか、そう聞きながらオレを見上げたリクに、衝動的に唇を重ねた。驚き真っ赤になって固まっている彼女に、楽しそうに笑うリクに見惚れていたと白状すれば、リクはもう店探しはやめてしまうだろうか。
 オレの前で、オレの隣で、今日も笑ってくれて、ありがとう。
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