03


なまえが狙撃され重症を負ったのは、再会してから大体1年経った頃の話。やけに誘導され彼も感づいていたのか、窓際でディナーを取る間も注意深く周りを観察していたなまえ。レーザーサイトが見えた瞬間赤井は叫び動いたが彼は一瞬のうちに撃たれてしまった。身体を起こし捩らせたため頭には当たらなかったものの上腕部付近に命中、おびただしい血が流れ、その場から逃走しようとした者は全て捕まった。赤井が様子を見るとなまえには脈拍増加等の失血性ショック症状が見られ、救急車を呼び止血を行って対処。ネクタイを緩め頭を心臓より低くしたりと適切な処置を行ったものの、だんだん冷たくなっていく体温に赤井は何も考えることができなかった。「おい、なまえ」返事がない。頭が白くなる。無意識のうちに小さな囁き声が出てしまった。

「すきだ」

遂に救急車がきて彼は搬送されていった。仇。頭にはそれ一文字で埋め尽くされた。


数日後、なまえのいる病院へ行こうとしたら彼の父親直属のSPと思われる人物に止められてしまった。一命は取り留めたがまだ意識は戻っていないらしい。それでもなまえの近しい関係者だと無理を言えば、通してもらうことができた。扉の前で父親と出くわす。記憶に遠かった彼の父親はだいぶ歳をとり、動きは緩慢だが威厳を感じられる。

「君、秀一とやらかね」
「……はい」
「息子から話に聞いていたよ。小さい頃はよく遊んでいたようだが、最近は護衛をしてくれているのか。」
「……」
「何故守れなかった?」
「……」
「何も言えんか。本当なら今すぐ消してやりたいところだが、なまえに何を言われるかわかったものではない」
「俺は、もっとうまくやれました。守りきれず申し訳ありません」
「……ハハ、馬鹿正直に謝るなんていい度胸だな。いやいやァ、意地悪をしすぎた。息子が好いている者をどうこうできる儂ではない。入れ」

言われた通り中へ入れば様々な管に繋がれたなまえの姿が目に入った。痛々しい。





「赤井」

運良く任務の無かった事もあり、赤井は何日も病室で護衛という名の看病を続ける事ができた。椅子に座り、居眠りでぼんやりしている意識を覚醒させ見えたのは目を開いたなまえの顔。酸素マスクに繋がれているので声は微かだった。

「お前、殺してきたな?」
「……」
「図星か。俺がそれを望んでたと思うか、赤井」
「これはエゴだ」
「ああ……俺は殺生が嫌いなの、知ってるな」
「……」
「……馬鹿な奴。でも、そんなとこが好きなんだよ。親父も、赤井が敵を散滅してきたことをわかっていたから通したんだろう」

一瞬目を伏せ、また赤井を見つめる瞳。ちょいちょいと手招きされ赤井が近づく。すると拙い仕草で赤井の頬へ手が添えられた。

「赤井、俺が撃たれた時すきだって言ったろ」
「……聞いてたのか」
「幻聴かと思ったよ」

カマをかけられた。それがわかってももう遅くなまえは小悪魔的な笑みを浮かべた。昔からこういう奴だ、彼は。
好きだともう1度改めて言えば、なまえは笑った。赤井も釣られて優しい笑みを零した。





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