02


仲良くなって月日が経ったある日。なまえは日に日に積もる感情に堪え切れず聞いてしまった。それは全ての始まりだった。

「なぁ、覚えてないか?あの地獄を」
「なんですか?地獄って」
「……やっぱり、違うのか?お前はあの戦いに出てはいないのか」
「……なんのことだかわかりませんが、あの戦いとはどういうことですか?」

その言葉を聞いて、なまえは酷く落胆した。きっと、きっと彼が自分と同じ戦争に参加していると信じていたのだ。なまえはなにも考えられなくなって、目を伏せた。

「ごめんな……多分、あれは夢だったのかも知れない」
「いや、教えて下さいよ。言ってくれないとわからな」
「黙れ!」

急な怒声に降谷は驚く。なまえはすぐに自分を取り戻し謝罪の言葉を残してその場から離れた。

降谷はそれから、公安の仕事場にいることが少なくなり、なまえとも顔をほとんど合わせなくなった。黒の組織に潜入する仕事を任されたからなのである。残忍な任務に就くたび、降谷はなまえの言う『地獄』の意味を考えた。
名を安室透に変え、スコッチを失い絶望した時にはもう数年の時が経ち、なまえとお互いに連絡を取ることは全く無くなっていた。安室は心身を消耗し、それでも尚国の為働いていた時、ある瞬間は訪れた。

「スピリタス?」
「そう。最近入った子だけどもう大変。あんなに激しい子、私は見たことないわ」

ベルモットとの任務中に出た『スピリタス』というコードネーム。安室にはどのような人物かあまり見当がつかなかったが、後に嫌でも知ることとなった。


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