事細かに、旅の日程を送ってくる。あの人とは大違い。
きっと、そう成りたいのでしょうと、一人で笑った。
家を出て、何ヶ月経ったかしら。
メールはくれるのに、テレビ電話の一つもしてくれないあの子。
一体、何を怖がっているのかしら?
鋭侍が正式に僕の仲間になった夜、オーキド博士とテレビ電話をした。殿堂入りを果たしたとしても、あのメンバーがここにいる保証は無かった。僕の中では氷河も、鋭侍も、時間制限付きの仲間だったから。
「《だから言ったじゃろう、津波くん。皆、君を好いておると》」
「色々あって紹介はしてないですけど、顔を見なくても分かるものなんですか?」
ポケモン研究者としての感覚か。それとも、研究者になる前のトレーナーとしての直感か。なんにせよ、僕の予想は外れ、オーキド博士の予想は見事的中した。
僕の疑問にオーキド博士は小さく笑い、否定する。
「君たちを見ていればわかる」
黙って僕らの会話を聞く風音。出会った頃は警戒していたオーキド博士も、今では自然体で接することができるぐらい距離感が近くなった。あまり無いが、オーキド博士が風音に何かしらのリアクションを求めれば反応はするだろう。
「次の目標は決めたかね」
「いえ」
「やりたいことは?」
「……。ちょっと疲れたので、」
色々なことがあった。良いことも、悪いことも、沢山。
「ゆっくりしたいです。みんなで」
そう言うと、オーキド博士はにっこりと笑う。
「では、ジョウト地方へ行ってみないかね? 津波くん」
「ジョウト、地方……」
確か、鉄道関連でその単語を聞いたことがあるような……?
「11月中旬が紅葉の見頃を迎えるんじゃ」
11月……。あと、二カ月くらいはある。特にやりたいこともないし、それもいいかもしれない。
「はい、見てみようと思います」
「ならば一度、マサラタウンへ帰省してはくれんか?」
「え、」
それは、それは、ちょっと、なんというか、その、……ウン。
「実はワカバタウンのウツキド博士に送りたいものがあってじゃな。ワシは手が離せんから、ジョウト地方に用事がある君に是非やってほしいんじゃよ」
「…………。ハメました?」
「何を言う。ワシはただ、いい観光名所を君に教えただけじゃよ」
輸送したいのならプロに頼んだほうが早いというのに、この人は……!
深く息をつき、怒りを吐き出す。博士に委ねたのは僕だし、帰省すること以外は結構乗り気だった。
「君宛に手紙を送った。明日、明後日以内に届くじゃろう」
「何の手紙ですか?」
「クチバシティ行きの船旅。行き先が少ないから速いぞ〜」
「…………」
やっぱりこの人、テレビやラジオで感じる印象とだいぶ違う。全国のちびっこが見たら落胆するだろうな、これはきっと。選択を博士に委ね続ける限り、この何とも言えない感覚は消えないだろう。
「わかりました、帰ります」
「うむ、待っとるぞ〜」
ぷつんと切れた通話。机の上でお利口に待っていた風音へとダイブする。
『わ、マスター!?』
潰さないように気を付けながら、風音を吸う。……嫌なことがあったら相棒を吸ってみるといいと言っていたけれど、個人差があるな。風音が嫌がっているのなら放すのが正しいのだが……。
『????』
混乱しているだけで、嫌がってはいないな。
よし、吸おう。
『マ、マスター!!?』
オーキド博士からの手紙が届いた瞬間に海路を調べ、最適なルートを選ぶ。
届いた日の割にチケットの有効期日がかなり近く、かなり急かされたというものがあった。就航する島へ、三日かけてたどり着き、そこからは優雅な船旅……とはいかなかった!
「中継見てました、津波さん……ですよね?」
「あー……」
船内のレストランでの出来事だ。そして僕は食事中。
せめてレストランから出た状態で話しかけられたのなら対応した。今はだめだ。前例を許せば絶対、今後、ないとは思うけれど、どんな時でも絡まれる……!
「申し訳ないけれど、食事中だから」
「じゃあ待ちます! 席、空いてますね」
「????」
我が物顔で僕の目の前に座る子。一気に食べにくくなった。一旦離籍して、船員に助けを求めてその場はどうにかしたが……なんで船に乗るたびに、人に絡まれるんだ? 解せない。
そこから先は缶詰よろしく船内の個室にこもり、料金が高くつこうが全てルームサービス。これが一番、被害が少ないと理解した。公共の乗り物に乗った時は絶対に出歩かない……!
5日間の船旅は僕に、人が多いところは気をつけろという教訓を思い出させてくれた。
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