何時付くかわからないけれど、ぼくの元に荷物が届くらしい。
恩師から届く荷物。なんだろうかと胸を膨らませて到着を待つ。
「見ました? ウツギ博士」
助手のエゴノキくんが、やや興奮した様子でぼくを呼ぶ。
エゴノキくんが偶然見つけたネットの記事。
写真こそなかったが、若き殿堂入りを祝いその戦い方への感想。
「そうか、津波ちゃんが……」
マサラタウンの津波。
そうか、あの小さかった女の子が……。
ウツギ博士のいるワカバタウンへは水路を使うことにした。カントー地方からジョウト地方へ行くための手段はいくつかあるのだが、僕がマサラタウンまで帰ってきていたことを加味すると、27番道路を突っ切る方法が一番楽だったりする。
マサラタウンから東へと出発して二日。もう少しかかるかと思っていたが、炎李・疾風・氷河の力を借りれば予想よりも早くワカバタウンの案内看板が見えた。
「止まって」
疾風から降り、看板の内容を確認する。もう少ししたら水路になるようで、そこで氷河に交代か。
「あー……濡れたね疾風。気持ち悪くない?」
『? ……あ! だいじょーぶだよ、ますたぁ』
僕の乗っていた部分の毛が蒸れて湿っている。僕のズボンも結構ビシャビシャだ。
あまり気にしていないようで、頭を寄せてくる疾風。頭を撫でると寄ってくる圧力は無くなった。
『乗―る? ぼく、まだまだ走れるよ』
乗りやすいようにと伏せた疾風。乗るのもいいけれど、移動はずっと炎李や氷河にお願いしていたから疾風に乗るのは久しぶりか。乗ろうとしない僕を見、疾風は不思議そうに首を傾げる。
三人の力を借りたとはいえ、急いでいる訳では無い。ぽんぽんと頭を撫でて、疾風に聞いてみることにした。
「一緒に歩かない?」
『速く付かなくていいの?』
「急ぎなんて言われてないからさ、大丈夫だよ」
水路まであと少しなのだから、大丈夫だろう。先導するように少し後退すれば疾風は起き上がり、僕の方へと足を進めた。
氷河に乗り、水路を進むと森が濃霧に覆われていた。雲がかかったかのような森の中。視界は潰れ、進むことを躊躇させられる。森の手前にある看板には「この先、ワカバタウン」の文字。地面に薄っすらと見える歩道。おそらく、この道から反れなければ行ける……ハズ。
「お疲れ様、氷河」
『突っ込む気か』
「流石に歩いてはいかないよ」
濃霧を見た時の顔を見られていたのだろう。正気を疑うような声を出されたが、大丈夫だと釘を刺す。
『ならいい』と、いうような顔をして氷河はボールの中に戻っていった。戻した氷河の代わりに炎李を出し、すぐに伏す炎李の背に乗る。
「よし、お願い」
僕のほうの準備が出来たと伝えると、炎李が勢いよく翼を羽ばたかせた。
炎李も方向は分かっているようで、上昇すれば森を抜けた先にあるワカバタウンが見えた。
「(意外と近い)
急に炎李の体勢がブレ、浮遊感に襲われる。
「(落ちる……!)」
投げ出され、炎李へと伸ばした手が虚空を掴む。最悪を考えて、氷河のボールを地面へと投げた。
「サイコキネシス」
ボールから出た直後だというのに、氷河は直ぐ僕らを受け止めてくれた。
やや焦った様子で僕らをゆっくりと地面に下した氷河は、すぐに炎李へと詰め寄った。
『お前らしくない。何してんだ』
『悪い、助かった』
『……』
空中で体勢を立て直した炎李がゆっくりと降りてくる。
頭に手を当てつつも、氷河と会話をする。……あたま?
「炎李、頭ぶつけたの?」
やや強引に顔を寄せさせ、確認する。少し、腫れてる……。
「壁なんてあった?」
手を前に伸ばしながらゆっくりと、森へと近づく。
『壁なんてありませんよ?』
肩の上で風音が不思議そうな顔をする。そんなはずがないと、炎李が近寄るとまたゴツンと壁に頭をぶつけた。壁を挟んでお互い顔を見合わせる。よくわからないと、炎李たちのもとへ向かう。壁には阻まれない。
何がいけないのだろうかと頭を悩ませていると、風音がテシテシと前足で空中を蹴る。何をしているのだろう? 壁ならさっき、通り抜けたハズだ。
『マスター。ここに壁、あります』
「…………」
睨みつけるように風音を見、合点がいったと手を叩く。
「壁、あるんだ」
『はい』
一度は通り抜けた壁を、二度目は通り抜けられなかった風音。回数制限がある? いいや、それなら炎李は抜けられなかった。
鞄から〈傷薬〉を取り出し、炎李に頭を寄せるように指示する。目を瞑ってもらって、薬を吹きかけた。考えがあると、炎李と氷河の二人をボールへと戻し、風音に再度肩の上に乗ってもらう。
風音が引いた境界線を踏み越え、森の中へと入る。
『何者だ=x
「!」
『どうやって
頭に響く声。濃霧の影響で見える範囲が狭まっている。
「(水晶壁……? あの壁のこと? 越えたも何も、無かったけど……!?)」
『
声の主が濃霧の向こうからやってくる。
不思議そうな声を出し、僕の前で止まった。
『あのお方に会ったな?=x
「あのお方……?」
『(目をかけられているのは事実。……何故、何も知らない?)』
何を言っているのだろう、目の前の子は。
縄張りに入った状態にも関わらず対話ができるということは、まだ平和的な解決が残されているということ。あまり相手を刺激したくはないが、言っている意味がさっぱり分からない。
僕の疑問符に気付いてか、『まぁいい=xと、目の前の子は話を切り上げた。
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